『わたしを離さないで』第9話レビュー

カズオ・イシグロ原作のベストセラーを綾瀬はるか主演でドラマ化する『わたしを離さないで』の第9話のレビューです。これまで描かれてきた謎や事件の本当の意味が明かされることになる。そしてとうとう結ばれたふたりの結末とは?

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『わたしを離さないで』

出演:綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ、ほか

原作:「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

脚本:森下佳子

音楽:やまだ豊

プロデュース: 渡瀬暁彦 飯田和孝

演出:吉田健 山本剛義 平川雄一朗

製作著作:TBS「わたしを離さないで」公式サイト

第9話 あらすじ

ようやく一緒になることができた恭子(綾瀬はるか)と友彦(三浦春馬)。

介護人として働く傍ら、唯一の希望である“猶予”を目指して、恭子は恵美子(麻生祐未)の居場所を探し始める。友彦の次の提供が決まる前にどうしても恵美子を探し出さなければ…と、焦る恭子。

やがてそんな苦労の甲斐もあって、恵美子が住んでいる所を突き止めた2人。

お互いの愛を証明して猶予を勝ち取るために、友彦が描いた絵を持って恵美子のもとを訪れるが…


第8話レビュー(ネタバレあり)

友彦の最後の提供がいつ来てもおかしくない状況の中、とうとう結ばれたふたりは、美和が最後に残した希望でもある陽光出身者のみに与えられるという「猶予」を求め、忙しく動き回る。

美和から手渡された住所から陽光の元校長はすでに引っ越していたが、偶然に友彦が手にした本の表紙の絵が恭子が陽光時代に描いた絵だったことから、その出版社を経由し、とうとう居場所を突き止める。

そして「ふたりの愛」を証明するものと考えていた絵を持参したふたりは、そこで「猶予」を求める。

しかしすでに引退していた陽光の校長の口から告げられたのは「猶予などは存在しない」という非情な真実だった。それならばなぜ陽光では絵を描くことをあれほど推奨していたのか、と食い下がる友彦に校長は、全く別の真実を告げる。

なぜ陽光は特別なのか?

元校長自身が恭子らと同じクローンだった。クローン技術の黎明期に科学者の娘として生まれた彼女は、いつになっても月経がこなかったことから、自分が忌むべき「提供者」たちと同じクローンだと知ったという。自分が実はあの「提供者」たちと同じクローンだと知った彼女は深く絶望するも、クローンの本当の姿を伝えるため提供者たちの教育に希望を見出したのだという。

 わたしを離さないで

第9話はこれまで積み重ねてきた事件や謎を一気に回収し、ちょっとした会話の「ずれ」などにも物語上の意図や意味があっとことを証明したエピソードだった。

特にこれまで恭子たちが出会った「外の人々」が彼女たちに見せて憚らなかった嫌悪感の正体こそが、このドラマシリーズ、延いては原作のテーマでもあったことがはっきりと描かれる。提供者たちである恭子たちへの罪悪感から逃げるために社会は彼女たちを「人間」とは思わず、魂のない空っぽの存在として認識するように努めた。陽光学園とは、恭子ら提供者にも魂があるという当たり前のことを社会に認識させるための試みであり、絵を描くこともその一環だった。

どれだけ苦しみ、悲しみ、誰かを愛そうとも、その魂の存在を信じてもらえないという絶望こそが、恭子たち提供者にとっても本当の運命だった。だからその真実を知った友彦は自分をコントロールできなくなってしまう。誰かのために死ぬという運命はすでに受け入れていたはずの彼だが、そのために苦しみ悲しむ自分の存在を認められないという絶望には耐え切れなかった。自分たちは天使だと言われてきたが、実は社会からは死んでも誰も悲しまない魂のない存在だと思われていたのだ。

第6話で描かれた提供者たちによる人権運動が全く社会から受け入れられないというプロットもここで初めて意味を持つ。それは社会から「禁止」されていたためではなく、彼らに魂がないと思われていたからだった。だから社会からの同情も連帯も得ることはできない。

これまで物語では意味をなさなかった謎や事件が、これを見ることで物語のテーマと直結することになる、シリーズのなかでもおそらくは最も重要なエピソードとなるだろう。最終回の前の話とはして理想的な形だったと思う。

そして仮にこのドラマシリーズが10話という設定ではなく、全5話くらいに止められたのなら、シリーズ全体の印象はがらっと変わっていたのではないかと残念にも思う。物語上、視聴者を引きつける謎の説明が、第1話と第9話で行われることになったため、どうしても間延びしてしてしまう結果となった。

最終回を次回に控え、物語上の謎を一気に回収したエピソードとなっており、その劇的さは見事だった。もちろん細部では相変わらず粗もあり、特に過去の記録映像が流れるシーンでカットが割れるのは不自然すぎる。

とは言っても最後にしっかりと物語上のピークを作り上げたことは間違いなく、最終回への期待が高まるエピソードだった。印象としては最後にしっかりと持ち直してきたという感じ。最後はどう決着をつけるのでしょう。

・ドラマレビュー|『わたしを離さないで』

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