50年代SF映画傑作選①『月世界征服』(1950)レビュー

CGとデジタル全盛の今だからこそ押さえておきたいクラシックSF映画を勝手に紹介する50年代SF映画傑作選。今回はロバート・A・ハインライン原作を映画化した50年製作のジョージ・パル製作の『月世界制服 Moon』のご紹介。これまで想像力の対象だった宇宙旅行に科学考証を持ち込んだ最初の本格宇宙開発映画。ここから50年代SF映画ブームは盛り上がっていく。

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『月世界制服/Destination Moon』

1950年公開/アメリカ映画

監督:アーヴング・ピシェル

製作:ジョージ・パル

脚本:ロバート・A・ハインライン、リップ・ヴァン・ロンケル、ジェームズ・オハンロン

出演:トム・パワーズ、ワーナー・アンダーソン、ジョン・アーチャー、ディック・ウェッソンなど

ストーリー

カーグレイブズ博士とセイヤー将軍はロケット開発に取り組むも、実験は失敗、ロケットは墜落してしまった。しかしこの失敗を教訓にセイヤー将軍は航空関係の実業家であるジム・バーンズの協力を得て、原子力エンジンを使用したロケットでの月開発を目指すことを決意する。最初は月に行くことは不可能だと疑っていたカーグレイブズ博士もその熱意に押され、計画に参加。

一行は政府からの出資が見込めないことから愛国的な事業者たちを集めて出資を募る。ウッドペッカーを使用したプレゼンテーションは好評で、民間企業の力で月面開発を行い必要性を説く。この冷戦時代に月を基地としたロケット攻撃に世界は無力であることから、未来のためにはアメリカ企業の手で月を開発しなければならないのだ、と。

出資が集まり、ロケットも完成に近づいた頃、アメリカ政府は失敗時の放射能汚染を考慮して計画の中止を求めてくる。またロケットに搭乗予定だった技術者が体調不良のため計画に参加できなくなる。それでも使命感に燃える3人は裁判所の中止命令を無視し、新人技術者のスウィーニーを搭乗させる。

そして計画中止の命令のなか、強引にも4人を乗せたロケットは月に向けて発射されるのだった。

 

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レビュー

50年代のSF映画ブームの火付け役ともなった『月世界制服』には宇宙人も出てこなければ、派手な戦闘シーンもない。本作がクラシックSF映画の傑作に数えられる理由は、これまで想像力に委ねられていたSF的宇宙描写に科学考証が持ち込まれた最初期の作品だからである。言うなれば65年前の『ゼロ・グラヴィティ』なのだ。

もちろんそれは今のCGレベルと比べればお遊びのように見える。しかし1950年という時代にあってまだ夢想の延長線上にあった宇宙開発という夢を、目の前に映像として提示したことの意義は大きい。NASAの成立が1958年ということから見ても、本作が世界に与えた宇宙観の影響は計り知れない。それ以外でも遠近法を利用した遠くに流されていくようなオープニングタイトルは、明らかに『スターウォーズ』に影響を与えている。

また出資者向けのプレゼンで流されるウッドペッカーを使用したロケットの原理を説明するビデオは、今見れば当たり前の原理を説明しているに過ぎないが、1950年というまだ人工物が宇宙を遊泳した経験のない時代(スプートニク打ち上げは57年)にあっては貴重な教養映像にもなっている。またその後の米ソによる宇宙開発競争を予見するように、月面到達の意義が軍事転用への可能性に関しているのも興味深い。

宇宙空間に投げ出される飛行士の救出劇や、犠牲精神の描き方など、『アポロ13』や『アルマゲドン』、『ゼロ・グラヴィティ』などその後の宇宙空間を描いた作品の基本となっている本作。脚本のドタバタ感は今見ると笑えてくるのも事実だが、本作が大ヒットしその後のSFブームの火付け役となったことから、50年代当時の人々が持っていた宇宙に関する常識が今とは比べものにならないほど少なかったことが垣間見れる。本作は製作したジョージ・パルはその後SF映画の仕掛け人として数々のヒット作を作り出し、ハリウッドのSF志向は一気に加速する。それはエンドクレジットで登場する「This is THE END of the BEGINING/始まりの終わり」という言葉そのままだ。

『月世界征服』は60年以上前に起こった宇宙描写の革命的作品であり、まさにSF映画の記念碑的作品とも言える。これがなければ『スターウオーズ』も『スタートレック』もなかった、という訳ではないだろうが、それでもここが始まりのひとつであることは間違いない。宇宙人も登場しなければロマンスもないただの宇宙旅行映画と侮ることなかれ、これは65年前の『ゼロ・グラヴィティ』なのだ。

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ということで1950年公開の『月世界制服/Destination Moon』のレビューでした。エンドタイトルに表現されるように、本作は宇宙SF映画の始まりの物語であり、その始まりとは今も続くSF映画のことでもある記念碑的作品。もちろんこれよりも古いSF映画や宇宙映画はありますが、科学考証を持ち込んでその後のSF映画の流れを作ったという意味では今の宇宙映画も本作の影響下にあると言えます。後半のドタバタ感は今見るとコントのようですが、当時の人はこれを見て笑っていたのか気になります。案外、真剣に見入っていたのではないでしょうか。原作と脚本はSF界の巨匠ロバート・A・ハインライン。50年代SFブームの火つけ役ということでも見逃せません。

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