【映画】『ドラキュラ ZERO』レビュー ※ネタバレページあり

レジェンダリー・ピクチャーズ製作『ドラキュラ ZERO』のレビューです。主演のドラキュラは『ホビット』でバルドを演じるルーク・エヴァンズ。『バットマン』、『ゴジラ』と往年の名コンテンツのリブートに定評のあるレジェンダリーが次に挑んだのは、ハマー・フィルムなどでおなじみの『吸血鬼ドラキュラ』の前日譚。キャッチコピーは「その男、悪にして英雄。愛する者のために、悪にこの身を捧げようー」。日本公開は2014年10月31日。

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■ストーリー、前半■ ※ネタバレなし

時代は中世。東ヨーロッパに位置するトランシルヴァニアの小国の王子ブラドは、10年に渡って国の平和を守り続け、家族とともに幸せに暮らしていた。しかしある日、領地内でオスマン帝国の偵察隊のものと思われる遺品が発見される。強大な力を保持するオスマン帝国の影を感じたブラドは仲間を引き連れ調査を開始。そして訪れたブロークン・トゥース(壊歯)山の洞窟にて、ブラドは人外の力を持った怪物と遭遇。その怪物は光と銀製の剣を嫌うようで、何とか一命を取り留め急いで王国に戻り、その正体を調べると、それは太古から伝わる闇に属する怪物であることが分かる。

迫り来るオスマン帝国の影に怯えながらも、王国は平和を維持してきた日々を祝う式典を催していた。そこに突如現れる、オスマン帝国の兵士。ヨーロッパへの領土拡大を目指す帝国は、属国であるブラドの王国に対して、少年兵1000名を忠誠の証として帝国に引き渡すよう命令する。過去に少年兵としてオスマン帝国に仕えた経験を持ち、そこで何人もの人を殺し、やがて「竜の子」の異名を受けたブラドにとって、それは王国の平和を踏みにじるものだった。そしてその対象には自分の1人息子も含まれていた。

過去にともに少年兵として戦ったオスマン帝国のスルタンであるメフメト2世に命令の撤回を求めるも拒否され、息子を引き渡す事になったブラドだが、愛する1人息子を守るために土壇場で拒否。その場で帝国の兵士を抹殺する。

これにより強大なオスマン帝国による侵略を避けられなり、最早王国を救う事は不可能という状況となるも、ブラドは愛する家族を守るため、再びブロークン・トゥース(壊歯)山に登る。そこで再会した怪物は、実は古代ローマ時代から悪に落ちた吸血鬼であった。彼からその人外の力を譲り受け、王国を守ろうと決意するブラド。

愛する家族のため悪魔と契約することとなったブラドは、人外の力を得る見返りに、人間として最も大切なものを手放さなければならなかった。

■レビュー■

まずはアメリカのヒーローであるバットマンをリブートし大ヒットを飛ばしたレジェンダリー・ピクチャーズはその後日本のゴジラを現代に蘇らせた。そして次に仕掛けたのが、ヨーロッパの怪奇スター『ドラキュラ』だった。その一連のリブート、リメイクの作法を見るに、レジェンダリー・ピクチャーズは実は現代の「ハマー・フィルム」なのかもしれないと思った。「ハマー・フィルム」とはイギリスの制作会社で、1930年代の映画黎明期にアメリカのユニバーサルが火付け役となった怪奇ホラー映画を、1950年代にリメイクし大ヒットを飛ばした事で有名で、そこで作られた『フランケンシュタイン』シリーズや『吸血鬼ドラキュラ』は傑作古典ホラーとして今なお強い影響を放っている。

今回の『ドラキュラ ZERO』は過去にハマー・フィルムやユニバーサルが作った『ドラキュラ』とは直接関係がなく、そこに登場していたトランシルヴァニアのドラキュラが生まれる過程を描いたもので、それらの前日譚とも言うべきものになっている。過去のドラキュアにも共通する「昔は人間だった怪物」ということから生まれる悲しみや絶望が本作でも重要なテーマになっており、主演のルーク・エヴァンズは、華奢で蒼白の貴族というドラキュラの典型的イメージとは随分違うが、それでも「人間であることを手放した」悲しみを上手く演じていた。コウモリを操るドラキュラのイメージから一歩踏み出して、コウモリと同化することもできるなど、新たな試みにも挑戦している。

それでもやはり全体として淡白という印象が強い。物語は序盤、中盤、終盤とそれぞれにスペクタクルな見せ場はあるのだが、全てが盛り上がりに欠ける。中世都市伝説としてのドラキュアに欠かせないブラド=串刺し公というイメージを再現するシーンもあるのだが、それも一瞬で、ドラキュラの怪物性や残虐性をしっかりと引き出せていない。レーティングの問題かもしれないが、怪奇ホラーという側面があまりにも少な過ぎる。家族愛もいいが、ドラキュラの悲しみを表現するのなら、それをより際立たせるためにもその残虐性を逃げずに描くべきだったと思う。正直、それがただの「デーモン」や「怪物」でもあまり変わりなく、ドラキュラである必然性があまり感じられなかった。

本作はすでに続編も計画されており、それを匂わすような終わり方をしている。

そうなればレジェンダリー・ピクチャーズの野望というものがこれまで以上にはっきりと見えてくる。これはあくまで個人的な観測及び希望だが、『ゴジラ』や『キングコング』の怪獣ユニバースと、『ドラキュラ』などの怪奇ホラーシリーズを軸とする事をレジェンダリー代表のトーマス・タルは考えているのではないだろうか。「ハマー・フィルム」が『ドラキュラ』と『フランケンシュタイン』をシリーズ化し、その傍らで『狼男』や『恐竜』シリーズを立ち上げたように、レンジェンダリーも『怪獣』と『怪奇ホラー』の二本立てで映画制作してくれるなんてことになれば、それこそ「ソフトバンク」で良かったと思えるもの。そしてレジェンダリーと関係の深いギレルモ・デル・トロ監督は以前から『フランケンシュタインの花嫁』の映画化を熱望している。いつか『ゴジラ』と『キングコング』が闘い、そして『ドラキュラ』と『フランケンシュタイン』と『ヴァン・ヘルシング』が絡む、なんてことになったら、きっと泣くんだろうな。

作品としては一作目という事もあり難しい面もあったと思うが、その世界観に期待を抱かせる内容だった事は間違いない。

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※次のページにストーリー後半のネタバレあり※

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