映画レビュー|『ドラゴン・ブレイド』-とにかくジャッキーは頑張っている

Dragon blade

『ドラゴン・ブレイド/Dragon Blade』

全米公開2015年9月4日/日本公開2016年2月12日/中国・香港映画

監督:ダニエル・リー

脚本:ダニエル・リー

出演:ジャッキー・チェン、ジョン・キューザック、エイドリアン・ブロディ、リン・ポン他

あらすじ(ネタバレなし)

中国の辺境を調査していた研究者たちは雪の閉ざされた山間に伝説の都市を発見する。それはシルクロードの幻の町だった。最新技術で浮かび上がったのは、中国と西洋が混じり合った古代都市だった。

紀元前1世紀の漢の時代。国が分裂する中、国境警備を担当するホ・アン/霍安(ジャッキー・チェン)は見覚えのない罪で仲間たちと捕まってしまう。そのまま辺境の町に連れてこられた一行は、そこで強制労働を命じられる。

一方、さらに西の領土を広げるローマ帝国では内紛が勃発、毒を盛られた王子を助けながらローマの英雄ルシウス(ジョン・キューザック)率いる一団は、東に逃げていた。

漢の辺境の町でホ・アンとルシウスは出会い、最初は反目するも、ルシウスの窮状を知るとホ・アンは友人として彼を全力で助けた。国や文化は違いながらも信念で深く結ばれたふたりの英雄。

そしてローマ帝国の策略に飲まれたルシウスの無念を晴らすために、ホ・アンは決死の剣を手にするのだった。

レビュー

ジャッキーと中国の蜜月、そしてジョン・キューザックはどこに行く、、、:

本作『ドラゴン・ブレイド/Dragon Blade』はジャッキー・チェン主演で共演にはジョン・キューザックとエイドリアン・ブロディという「最近はパッとしないけど名前は十分知られている」俳優がハリウッドから招聘されて作られた中国映画である。ここ最近の中国の映画マーケットの拡大は凄まじく、その時流に乗り作られた制作費70億円ほどの歴史大作映画ということで、当然のことながら政府の意向は少なからず反映されていると考えられる。

そして観終わって、これはまずい映画を観た、と思った。

どこかまずいかというと、ストーリーの重要なプロットのほとんどが中国のプロパガンダとして機能してしまっていることだ。これほどまでに「正しい中国」が描かれてしまうと、ジャッキーのアクションも一気に説教臭くなってしまう。そしてハリウッドから迎え入れられたジョン・キューザックとエイドリアン・ブロディのミスキャストぶりにも驚かされた。物語上ジョン・キューザックはローマ帝国最強の戦士という役柄なのだが、そんな訳ないだろう。ジョン・キューザックだぞ。ジャッキーと互角の戦いができるなんて夢でも見ているんじゃないかと思った。彼のフィルモグラフィー上、アクション映画で思い浮かぶのはニコラス・ケイジと共演した『コン・エアー』だろうが、そこでの彼はヘタレなFBI捜査官役だった訳で、オファーをニコラス・ケイジと間違ったのではないのか。それにしてもニコラス・ケイジも別の中国映画に出演していたから、ハリウッドの落ち目な俳優にとって今の中国映画は参院議員になるみたいに気楽なものなのかしれない(参院議員が気楽というのは想像です)。

このプロパガンダ、そしてミスキャストの問題は結局劇中で解消されることはなかった。その乱暴なまでの押し付けと、隠そうとしてもダボダボと漏れ落ちてくる「中華思想」的プロットも正直きつい。それに加えて、本人が一番「俺じゃない」感を感じていただろうジョン・キューザックがスタント丸出しのアクションとかするもんだから気持ちも萎えてしまう。

もちろんアクション大作という醍醐味は用意されているのだが、特に前半パートでは現実の歴史観からすれば「偽史」とも言える漢の国境警備隊役のジャッキー・チェンとローマの英雄役ジョン・キューザックとの異文化交流に絡めて、ひたすら中国政府の自己肯定会見を聞いているようなプロットがずらーりと並ぶことになる。本作でのジョン・キューザックとは中国の説明を真に受けた西欧人という立ち位置。

舞台は漢の西方。辺境の民族たちによって小競り合いが続くシルク・ロードを管理し守るのが国境警備隊のジャッキーの仕事。ここは明らかにチベットやウイグルの民族問題を象徴しているし、国境にはびこる汚職や冤罪といったトラブルも現実社会を意識している。そしてジャッキーという善なる中国の象徴を登場させることで実際に白熱する中国での汚職撲滅キャンペーンの有効性を喧伝している。他にも領土問題、モラル、権力の集中化、軍備拡張などなど国際的に中国が非難されている行為に対しての中国による自己弁護のような内容が、ジャッキーの口からとめどなく語られるのだ。

当たり前だけどこんな映画は高く評価できない。ハリウッドの俳優が使われていることから海外マーケットを視野に入れていたことは間違いないが、その目的にはプロパガンダとしての役割が含まれているのは明白だ。海外でのヒットを望むのは金銭的な理由のほかに、中国の宣伝も含まれている。まるで「みなさんが思う中国が誤りで、この映画が真実です」とでも言ってるようだ。

その一例として、ローマ帝国の内紛に巻き込まれ罠にかかったために復讐で頭がいっぱいになるローマの英雄ルシウスに対してジャッキーがかけた言葉が印象的だった

ジャッキー:「君達は人殺しのために軍事訓練をしているが、我々中国人は人を助けるために訓練をしている。中国人は平和のために戦う。復讐なんて愚かなことは止めて友達になろう、君を助けたいんだ

これがジャッキーじゃなくて気の強そうな報道官が、海洋支配を強める中国への国際社会の批判に対して行う反論だとしても意味はきれいに通じる。

そして前半パートはジャッキー節が冴え渡るコメディタッチに懐かしさを感じながらも、説教くさいプロットが連続するのだが、実はこれが一周回って結構笑える。

ルシウス同様に何者かに罪をでっち上げられたジャッキー演じる警備隊長は、そのまま逮捕されて強制労働を課せられるのだが、工事の途中に足組が壊れて大惨事になるあたりは、エレベーターが落ちたりする中国らしいし、その流れで至る所で乱闘が勃発するのもなかなかリアルに笑える。香港映画的なドタバタ感が中国の安全への不安としっかり繋がっている。どこまで意識的にギャグとして描いたか不明だが、真剣に中国のプロパガンダ映画を作ろうとすると、コメディに見えてしまうようだ。とても滑稽なのだ。

中盤以降の展開も大した驚きはなく、想像の範囲内にしかっりと着地してしまっている。驚きといえば冒頭に美女からの据え膳をご遠慮するジャッキーくらいなもの。中国はジャッキーのエロさまで否定するのか。ジャッキーがエロいという歴史的事実がなかったことにされている。

それでもプロパガンダとしての部分を排除して見れば、今の日本では作ることのできないレベルのスケール感のなかで物語は進み、イースト・ミーツ・ウェストを描いた娯楽大作映画としては見所もしっかりとある。私的には1989年の東映作品『将軍家光の乱心 激突』を思い出し懐かしくなるようなパートもあった。

きっとジャッキーのファンは黙っていても楽しめるのだろう。一方で『ラブ&マーシー』でブライアン・ウィルソンを熱演したジョン・キューザックの場違い感は半端ではない。エイドリアン・ブロディはそうでもなかったが、ブライアン・ウィルソンやニクソン、冴えないレコード屋の店主といった役柄で支持されてきたジョン・キューザックだけに本作への出演は完全に失敗だった。カメレオン俳優とはそういうことではなく、全く役柄に合っていなかった。しかも自分でアクションができないから、彼とジャッキーの対決パートではジャッキーの正面からしか撮影ができない。ジョン・キューザックはいつも背中しか写っていない。そんなアクションに興奮なんて出来ない。中身より見栄を重要視した結果の惨劇だ。

相変わらずベタベタな展開や見え透いたハッピーエンドなど、中国の娯楽大作映画としては仕方のない作品なのかもしれない。それでも最終的なメッセージが「大丈夫、中国は怖くないですよ、だから友達になりましょう」ということで、ある意味めちゃくちゃ怖かった。友達になるのはいいけど、その高い防護壁を退けてからにしてもらいたい。

とにかく本作『ドラゴン・ブレイド/Dragon Blade』は潔いまでにわかりやすいプロパガンダ映画だった。そしてジョン・キューザックはこのままどこかへ消えてしまうだろうか。

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ということでジャッキー・チェンとジョン・キューザック共演の中国歴史大作アクション映画『ドラゴン・ブレイド/Dragon Blade』のレビューでした。前半はかなり笑えます。でもどちらかといえば「あーあー、無邪気にやっちゃてるよ」という呆れ半分の笑いでした。ジャッキーのアクションは随分と控えめになってもまだまだ健在、やっぱり魅せてくれます。でもやっぱり設定に不必要な負荷がかけられた結果、全体としてのまとまりがなくなってしまっています。まあ、ある意味中国の「全てがこんな風に行って欲しいものだ」という願望の現れだとも感じますが、なんにせよ映画としては不十分な作品という印象です。以上。

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