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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

50年代SF映画傑作選④『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース』(1953)

CGとデジタル全盛の今だからこそ押さえておきたいクラシックSF映画を勝手に紹介する50年代SF映画傑作選。今回はレイ・ブラッドベリ原作を完全映画化、そして時代を半世紀先取りした3D作品でもある53年の『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース/It Came From Outer Space』のご紹介。50年代のアメリカ社会への病巣を異星人侵略に擬えた、レイ・ブラッドベリ印の名作。日本では劇場公開もソフト化もされていない。

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『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース/It Came From Outer Space

1953年公開/アメリカ映画/日本未公開

監督:ジャック・アーノルド

脚本:ハリー・エセックス

原作:レイ・ブラッドベリ

音楽:ハーマン・ステイン

出演:リチャード・カールソン、バーバラ・ラッシュ、チャールズ・ドレイクなど

ストーリー

広大な砂漠が広がるアリゾナで、作家のジョン(リチャード・カールソン)と恋人のエレン(バーバラ・ラッシュ)は星空を眺めていた。その時、空から巨大な隕石が落下していった。現場に駆けつけると、大きな穴が開いており、ジョンはひとりで降りていくと、そこに不思議な物体が埋もれているのを目にする。それは隕石ではなく形のある物体だった。それが何なのか確認しようとするも、急に地響きなり落石がはじまったためジョンは退避。その物体もどこかに埋もれてしまった。

それが異星人の飛行船としか思えなかったジョンは周りに伝えるも、恋人のエレンや旧知の保安官はもちろん信じなかった。それどころか地元の新聞はジョンが火星人を見たということを笑いのネタにさえ使用した。しかし当初はジョンの言うことに半信半疑だったエレンだが、それ以後不思議な物体の存在を感じるようになる。それ以後、機材を積んだトラックが行方不明になったり、町の住民がまるで人が変わったように無表情になるという事件が多発する。

そしてとうとうエレンまで誘拐されてしまう。それが異星人の仕業と睨んだジョンは、人の姿をした彼らに呼び出され、彼らの存在を知ることとなる。その不思議な異星人は惑星間を移動中に飛行船が故障してしまい地球に不時着してしまったといい、そして人類を傷つける意図はなく、材料が揃い次第にすぐに地球から離れるつもりであることを告げる。そこで人類の技術をはるかに超える科学力を見せつけられたジョンは彼らの言うことに従うことにした。

その頃、これまでジョンの言うことを笑っていた保安官も異星人の存在を認めはじめていた。そして町の男たちに呼びかけ武装し、彼らへ攻撃を仕掛けようとしていたのだった。

 

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レビュー

本作はSF小説の巨星レイ・ブラッドベリ原作作品ということで単純な異星人襲来映画とは異なり、「赤狩り」が猛威を奮っていた当時のアメリカ社会の病巣を皮肉するものになっているのだが、そういうことは後回しにして、何よりもオープニングとエンディングが素晴らしい。隕石落下からのオープニングタイトルへの流れは物語への期待感をそこはかとなく盛りたててくれるし、エンディングも1954年の『ゴジラ』のラストを彷彿とさせる。もうこれだけで痺れるほどだ。

本作は50年代SFブームのなかで作られた特撮を駆使した作品とは異なり作品自体はこじんまりとした印象だが、レイ・ブラッドリ特有の社会批判と皮肉がしっかりと盛り込まれており、またなかなか姿を現さない異星人をめぐる演出も冴え渡っている。また53年の作品でありながらも3D効果を念頭に作られており、宇宙人の登場など奥行き感を今でも想像することができる。

50年代前半は共産党狩りの「赤狩り/レッド・パージ」がハリウッドを襲い、「ハリウッド10」に代表される映画関係者にとっては受難の時代となっていた。そういった事情はジョージ・クルーニー監督作『グッドナイト&グッドラック』やフランク・ダラポン監督作『マジェスティック』に詳しい。原作者レイ・ブラッドベリは共産党員ではなく、共産思想にはかなり否定的な意見の持ち主であったが同時に思想弾圧を理由とした映画など芸術作品への迫害には真っ向から反対していた人物だ。

本作で描かれる、得体の知れないものを集団で有無を言わせず迫害しようとする心理はまさにマッカーシーの強硬論に全体として組みしていったアメリカ社会そのものである。対象の中身を考慮しようともせずに、「異なるから」という理由だけで排除する全体の致命的な想像力の欠如を、本作は切れ味鋭く皮肉っている。そしてその全体としての閉塞感はアメリカだけでなく、様々な国や地域で今でも存在するのだ。

このような物語構造はそのまま『未知との遭遇』に転用されているし、異星人よりも想像力を失った人間の集団心理のほうが恐ろしく醜いという点ではフランク・ダラポンの『ミスト』にも影響している。ちなみにそのフランク・ダラポンは長らくレイ・ブラッドベリの傑作『華氏451』の映画化に取り組むも難航しているのだが、スティーブン・キングを介してすでにブラッドベリのSF的皮肉を映像化しているとも言える。

50年代SF作品的見所としては一つ目のグロテスクな異星人の造形も素晴らしい。本作は98年にWOWOWで放送されただけで、その後もソフト化もされていないが、「アウター・リミッツ」や「X-ファイル」のような作品の雛形として鑑賞をおすすめしたい。

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ということで53年の『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース/It Came From Outer Space』のレビューでした。映画というよりはドラマのようで、大げさな部分がそぎ落とされており今でも十分に楽しめます。本作の基となっているのはレイ・ブラッドベリの『趣味の問題』という短編でこちらは日本語で読むことができます。設定はかなり異なっていますが、異星人の見た目の醜悪さや、嫌悪感から排除に向かう心理など作品の核となる部分ではしっかりと繋がっています。日本では冷遇されている作品ですが古典SF映画の代表作の一つに数えられるものですので、機会があれば是非鑑賞してみてください。おすすめです。そしてブラッドベリ関連の締めはこの曲で!『ファック・ ミー、レイ・ブラッドベリ!』

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