映画レビュー|『ジュラシック・ワールド』-映画じゃなくてアトラクション

NewImageシリーズ4作目となる『ジュラシック・ワールド』のレビューです。『アベンジャーズ』も『 ハリー・ポッター』も抜いて史上最高の初週末売り上げを達成。膨れ上がる人間の欲望と、神の領域に手をかけた科学技術の暴走という従来のテーマを忠実に踏襲しつつも、怪獣映画としての醍醐味も忘れていない文字通りモンスター級の大作映画。この大ヒットを受けて8月7日という世界最遅に設定されていた日本公開日も繰り上げ公開が決定し、結果8月5日に公開されることに。それでも日本公開は安定の世界最遅です!ネタバレページあり。

『ジュラシック・ワールド/Jurassic World』

全米公開2015年6月12日/日本公開8月5日/アメリカ映画/124分

監督:コリン・トレボロウ

脚本:コリン・トレボロウ、デレク・コノリー

原案:マイケル・クライトン

製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、トーマス・タル

出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ジュディ・グリア、ローレン・ラプクス、ジェイク・ジョンソン他

あらすじ(ネタバレなし)

「ジュラシック・パーク」の事故を教訓にして生まれ変わった「ジュラシック・ワールド」は毎日2万人ほどが訪れる人気の観光スポットとなっていた。そして「ジュラシック・ワールド」の現場責任者であるクレア(ブライス・ダラス・ハワード)を叔母に持つグレイは兄のザックと一緒に憧れだったパークへ招待されることに。そこでは巨大な水中恐竜モササウルスの餌付けなど大迫力のショーが繰り広げられていた。

一方、クレアは遺伝子操作でTレックスを基礎として生み出した全く新しい恐竜インドミナス・レックスの飼育法についてオーナーと話し合いを持ち、ラプター(ヴェロキラプトル)の調教師であるオーウェン(クリス・プラット)に助言を求める。しかしなかなか姿を現さないインドミナス・レックスを不審に思ったオーウェンは、防護壁に残されたおびただしい数の爪痕を発見する。非常に高い知能を持つインドミナス・レックスはどうやら防護壁を乗り越えて、外の区域に逃げ出したようだった。

人間の手によって生み出された最凶恐竜インドミナス・レックスによって「ジュラシック・ワールド」は22年前の悲劇を繰り返すことになってしまう。

※ネタバレのストーリー解説は次のページで

レビュー

迫力の大恐竜戦争と反対に、陳腐な人物設定:

『ジュラシック・ワールド』は6月12日に全米をはじめとする世界各国で公開されるや、公開初週末の全世界合計で約630億円という史上最高額を稼ぎ出し『ハリポタ』や『アベンジャーズ』を軽々と抜き去った。2015年の映画界は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と『スターウォーズ/フォースの覚醒』の2大巨頭の戦いとなると思われていながらも、そこへ恐竜たちが割って入った格好となっている。

さて肝心のレビューの要約としては、現象とも言えるほどの大ヒットとなっている本作だが、決して傑作などと呼ばれるような水準の作品ではないということ。もちろん大ヒットするだけあって見所は十分で、クリス・プラットのパブリック・イメージをうまく利用した主人公の人物設定や、圧巻の恐竜大戦争シーンなどお金を払ってみる価値があることは間違いないのだが、ただそれだけの作品とも言える。ゴジラとメカゴジラの関係を彷彿とさせるような恐竜バトルは大迫力なのだが、人間側の人物設定があまりに陳腐で、この恐竜たちの本能をめぐる戦いに水を差す格好となってしまっている。

1993年の『ジュラシック・パーク』から続く、人間の欲望と科学の暴走というテーマを継承しつつも、生命を復活させたり混ぜ合わせるというこれまでの行為から、生命を作り出すという神の作法が本作では取り入れられており、その象徴がインドミナス・レックスである。インドミナス・レックスは親を持たない実験室から生み出された凶暴新生物であり、故に自分が一体何者であるのかを理解する術を持たず、動くものすべてを殺す、生まれながらに混乱した殺戮生物。本作で巻き起こる騒動のすべての発端はこのインドミナス・レックスであり、影の主役ともいうべき存在である。

一方で人間側の主役はクリス・プラット演じる、ジュラシック・ワールドでラプター(ヴェロキラプトル)と呼ばれる小型の肉食恐竜を調教するオーウェン。彼は恐竜と意思の疎通を図るテストをしており、本来は凶暴なラプターもオーウェンの命令にはある程度従うようになっている。過去シリーズとの最も大きな違いとは、オーウェンが体現する人間と恐竜の信頼を基礎とした協力関係が描かれていることだろう。恐竜と意思疎通を図るという一歩間違えば荒唐無稽な設定も、クリス・プラットの「全体としては間抜けだが、抜群に信頼できる男」というイメージのおかげでしっかりと踏みとどまることができていた。しかしそれ以外の人間側の設定は全く情けないことになっている。

「ジュラシック・ワールド」の現場責任者であるブライス・ダラス・ハワード演じるクレアは、序盤に自分の判断ミスで同僚を見殺しにし、来場者に多くの死傷者を出す惨事の発端に関わっていながらも、物語はヒロイン扱い。ふざけてるのだろうか。冷静に考えれば、彼女は罪と罰を背負うべき存在のはずなのにチュッチュしている場合ではないだろう。

一方でパークの所有者であるインド人社長や、インドミナス・レックスを生み出した遺伝子操作のアジア系(中国)専門家などは物語上の悪や傲慢の象徴として描かれ、それ相応の結末が用意されているのだが、前述した白人女性責任者は劇中では何の責任も問われない。それどころかどうやら根はいい女性であることが強調される始末である。そして彼女との関係から、オーウェンの役柄にまで現実味が消え失せてしまうことにもなる。近年はハリウッドの人種構成への配慮は様々な面で見られるようになるも、本作では結局は白系アメリカ人に都合のいい人種配置で物語が進行し、そして彼らに都合よく幕が閉じられる。これが何とも陳腐なのだ。

本来は物語の現実感を補強するために語られる人間側のストーリーもこのような陳腐な人物設定のせいでその役割を全く果たせておらず、恐竜が入り乱れるラストのバトルに水を差すことになってしまう。もちろん恐竜がメインの映画に人間描写の正確さは不必要という意見もあるだろうが、ここまで破綻していては気になって仕方ない。これは脚本上の問題というよりも監督の力量の問題で、映像の迫力と反するように物語としてはとても小さくまとまってしまっている。この映像と物語のスケール感の落差が本作の致命的な欠陥であり、結果、見終わった後も、ラストの恐竜バトル以外にはほとんど印象に残らない。劇中のギャグもつまらない。1993年の『ジュラシック・パーク』の感動と衝撃の再現を期待して鑑賞すればきっとがっかりするだろう。

それでも本作とポップコーンとの相性が抜群であることはオープニング記録を見れば明らかで、登場する恐竜の数は少ないながらも、それぞれの特色がラストの恐竜バトルで活かされる流れはブロックバスターと呼ぶにふさわしい迫力だった。またオリジナル同様にアトラクション感覚が強調されており、ディズニーの『トゥモローランド』同様に映画におけるアトラクション感覚は大作映画においてはひとつの流行となっているのかもしれない。

本作は最初に通常3Dで観て、その後にIMAX3Dで観たのだが、IMAXの方がアトラクション感が圧倒的で、通常スクリーンでは迫力も薄ければドラマ部分も陳腐と感じてしまうことになりかねないので、IMAXでの鑑賞をおすすめする。個人的にはTレックスとインドミナス・レックスの関係がゴジラとメカゴジラそのままだったことが印象深い。それ以外にはほとんど何も残っていない作品となった。

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 ※次のページにネタバレのストーリー解説あり※

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3 件のコメント

  • Love and mercyとハシゴして、ポールダノの演技力の高さに感動した
    あとだったので落差がヒドかったですが。

    IMAX 3D鑑賞だったので、一部キャラクター造詣上の納得できない点を
    除けば、とても楽しめました。

    自分も一番気になったのはクレアの造詣。甥っ子たちを置いてまで仕事に
    のめり込んでいた筈なのに、職場放棄して甥っ子たちを助けにいくって、
    お前、社会人としてどーなのよ、と思いました。

    こないだ別作品の主演やってたザ・ロックも、ほぼ同じような無責任さ
    でしたが。あの「家族が助かれば全部オーライ♪」という能天気な感覚には
    ついていけません。そんなんだからアメリカはGOOD KILLのような世界に
    なってしまうのです(笑)。

    クリス・プラットはヒーロー感ありますよね。分かり易くて好きです。

    「無双するインドミニアス」っていい表現。

    • tommyさん、コメントありがとうございます。
      「Love and mercy」は素晴らしかったですね。僕はポール・ダノ側よりもジョン・キューザック側の方にグッときました。
      アメリカは「Love and mercy」のように繊細な映画も作る一方で、「サン・アドレアス」まで作ってしまいますから困ったもんです。
      でも『ジュラシック・ワールド』のクレアの設定はやはり無理がありますよね。親心(親戚心)が発揮されるのが唐突すぎて、ポカーンでした。
      それでもしっかりラストは熱くなりましたが。

      • ジョン・キューザックも良かったですよ。ただ、顔がブライアンというよりはポール・マッカートニー役が
        似合いそうなので違和感があったのと、Dr.ユージンランディの印象が強烈すぎて。どっちが病んでるんだ、と。
        60年代パートは有名な写真などのアングルをかなり研究して撮られているように感じ、マニア心をくすぐられました。
        役者もみんな似てて、「Pet Sounds~Smile」を追体験した気持ちになりました。

        「サン・アンドレアス」のレビューも拝見しました。まさに自分が言いたいことを的確に書いていただきまして、
        まったくもって同意です。アメリカ人の家族愛偏重には付いていけません。

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