『キングスマン』レビュー ★★★★★

『キックアス』のマシュー・ボーン監督による最高に過激なスパイ映画『キングスマン:シークレット・サービス』のレビューです。原作はマーベルやDCシリーズの他にも『キックアス』や『ウォンテッド』で活躍するマーク・ミラー。イギリス特有の毒っ気のあるユーモアが炸裂、いや、爆発しまくりのハイテンション・アクション映画。爆笑必至の新感覚スパイ映画の完成!日本公開は2015年9月11日。

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『キングスマン/Kingsman: The Secret Service』

全英公開2015年1月29日/日本公開2015年9月11日/イギリス・アメリカ映画

監督:マシュー・ボーン

脚本:ジェーン・ゴールドマン、マシュー・ボーン

原作:マーク・ミラー、デイブ・ギブソンズ著『The Secret Service 』

出演:タロン・エガートン、コリン・ファース、サミュエル・L・ジャクソン、マーク・ストロング、マイケル・ケイン他

あらすじ(ネタバレなし)

世界の危機を未然に防ぐために世界の裏側で活躍する秘密組織「キングスマン」。常に死と隣り合わせの危険な任務に携わるスパイたちは作戦中に死亡した隊員を補充するために世界一危険な面接試験を行おうとしていた。

そのひとりに選ばれたのはエグジー(タロン・エガートン)。実は彼の父もキングスマンの一員であり、任務中に同僚のギャラハッド(コリン・ファース)を救うために殉職していた。優れた身体能力に恵まれながらも、暴力的な母親の恋人を敬遠しながら居場所を失ってたエグジーは、たった一人のキングスマンの枠に入るために同じく候補として選ばれた若者たちと試験を受けることになる。

一方、世界ではアメリカの大富豪で博愛主義者のヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)は地球温暖化や大気汚染を防ぐ目的で、おそろしい計画を実行に移そうとしていた。

かくしてアメリカの大富豪の暴走を防ぐために、イギリスの秘密結社「キングスマン」が立ち上がったのだった。入り乱れる策略の中、エグジーはキングスマンの一員となるために、世界を救うことができるか!?

※ネタバレのストーリー紹介は次のページで※

レビュー

映画とはまさに爆発である!:

まずオープニンからいきなり素晴らしい。優れた小説の多くには導入部からすぐに読者を惹きつける力があるが、それは映画も同じ、本作では軽快なブリティッシュ・ポップロックのリズムに合わせてヘリコプターで登場した男たちが、ターバン姿のいかにもテロリスト風の男らを問答無用で射殺、一連のカットなかでプロダクションクレジットをこなしてもまだ途切れない流れの中で、テロリストを捕獲、尋問、そして仲間の殉職と目眩く展開を前にただ呆然とするばかりである一方でこれから一体何が起きるのかと期待まじりの半笑いも禁じ得ない。

しかし映画は小説と違ってスクリーン上で勝手に物語が進行する。ちょっと疲れたから後に取っておこうというわけにはいかない。そのためオープニングの強烈なイメージは、小説以上にその後の物語にも強く連続的に影響し、結局はオープニングの派手さだけが作品最大の見所になってしまうことがままあれど、この『キングスマン:シークレット・サービス』に限れば、そこから最後まで減速することなくアクセルを踏み込み、オープニングのイメージを塗り替え続け、最後にはあらゆる不謹慎さえも爆破してしまう、とんでもない推進力があった。そこには129分という上映時間が長いとか短いとかいう感覚上の問題はそもそもなく、とにかくこの次のさらにその次の次のそのまた次の次のシーンまでずっと観ていたいという想いしかない。

本作は『キックアス』同様にマシュー・ボーン監督と原作者マーク・ミラーのタッグ作品であり、物語の中身も「惨めな今を生きる若者にも実はスゴイ才能が秘められていた」という、マーク・ミラー原作の『ウォンテッド』と全く同じ設定で、日本の漫画やドラマでこれでもかというほどに多用されている類型的な「血統万歳」物語である。しかしその類型的な設定は本作においては全くマイナス要素ではなく、類型的で次の展開が予想されやすい設定だからこそに、その観客の勝手なイメージを破壊し、塗り替え、やがては想像の遥か向こう側へと物語を放り込むことに成功している。類型的な設定であるゆえに、その先行作品との決定的な違いを演出することで、観客の想像を「絶する」ことに成功しているのだ。

最近日本では倫理コードの問題であえて過激描写をカットし、広いレーティングで公開しようとする動きに一部からは非難が集まっている。本来そういった問題は作品ごとに個別的に論じられるべきだと思うが、本作では絶対に過激描写をカットするべきではない。本作に多種多用な方法で人体破壊が為され、物語の中盤には超過激なバトルロワイヤル描写もある。それらのシーンは過激であるが同時の滑稽でもあり、ユーモアでもあり、当てつけでもある。それらは全て本作全体のトーンを維持するために必要なコードであって、これが損なわれたら、前述したような前のシーンのイメージの塗り替えに致命的な行き違いを起こしかねない。次シーンは前のシーンを確実に乗り越え、その次は今を確実に乗り越える。その信頼と期待感が本作の最大の魅力なのだ。そのためには過激描写も絶対に必要で、それが最後には爆笑に変わるのだから、余計な配慮は勘弁願いたい。

マシュー・ボーン監督作の『キックアス』と同じように過激でキッチュな作品であるが、登場人物の描き方がいい意味で浅くなっており、個人的な問答で物語が停滞することはなく、それぞれが状況のめまぐるしい変化に対応するために、決断し成長する過程を、特徴的な少ないカットでの長回しシーンに象徴されるように、一連の流れの中で描ききっている。それはサム・メンデス監督の手によってシリアス度合いを深めていく「007」へのアンチテーゼとなっているし、劇中でも言及されるように、「ジェームズ・ボンド」でもなく「ジェイソン・ボーン」でもなく、「ジャック・バウアー」な作品なのだ。また本作にはイギリス人のスピリットが溢れ出しており、ファッションやガジェットはどれも極上に洗練されている。そしてイギリス人だからこそできるアメリカの描き方も素晴らしい。あらゆるアメリカ的(米大統領も)なものを小馬鹿にして、アメリカ的な反知性集団を皆殺しにしたりするのだ。ここでは笑いたいのだが苦笑するに留まるべきかもしれないが大丈夫、最後には大爆笑が待っている。

続編の製作も動き出した『キングスマン』。2015年は話題作の多くが続編やリブートで占められる中、ハリウッド大作とは違った趣がある作品としては異彩を放っている。過激にスタイリッシュで古くて新しいスパイ映画。R指定だからこその久々の怪作。個人的には今年観た映画の中では一番ハマった作品かもしれない。

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ということで『キングスマン』のレビューでした。実は同時期に観た『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』よりもこっちの方が面白かったです。やはり『パシフィック・リム』の時もそうでしたが、オリジナル(原作はあれど)映画の怪作に出会った時の、想像の遥か向こう側へ連れて行ってくれる興奮は格別で、それは続編やリブートではなかなか味わえないものです。コリン・ファースとサミュエル・L・ジャクソンの対比も最高です。そして本作には色々と小ネタが満載ですが、あのマーク・ハミルも爆笑出演しています。とんでもない役柄です。日本公開は2015年夏に予定しているそうなので、これは絶対に劇場鑑賞推奨作品です。R指定で結構です。

※次のページにネタバレのストーリー紹介※

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