【映画】『メイズ・ランナー』レビュー 

『ハンガー・ゲーム』や『トワイライト』シリーズ同様の人気ティーン小説を原作とする『メイズ・ランナー』のレビューです。この手の続編ありきのテレビ的映画スタイルには色々と言いたいこともあるのですが、ディストピア世界とティーン向けエンターテイメントの融合という避けては通れない流行だとも思います。日本公開は2015年5月22日。

The maze runner lead

■ストーリー■ ※ネタバレなし

16歳のある少年を乗せたゴンドラがどこかへ向かって上昇いていく。辿り着いた先には、彼を見下ろす同年代の少年たち。そこは大きな壁によって囲われた孤立した世界。その少年は自分が一体何者なのか、全く思い出せない。しかしその世界で暮らす少年たちにとって、その少年の困惑は珍しいものではないらしく、リーダー格のアルビーはその少年に、やがて自分の名前も思い出すから心配ないと告げる。それでも異様な世界には馴染めず混乱する。

その夜、新しい少年が到着したことを祝うパーティーが開催される。そこでこの世界の常識を教えられる。少年がそうだったようにここでは毎月ゴンドラに乗せられた少年が生活に必要な物品とともに一人ずつどこからか送り込まれる。そうやってこの世界に到着した少年の中で優秀な者は「ランナー」となり、あの壁の向こうに広がるメイズ=迷路を探検することが許される。それはこの孤立した社会から逃れるための命がけの探検だった。

夜、大きな口を開けていたメイズの入口は閉じる。朝にはまた開き、その間にランナーたちはこの世界から逃れるための経路を探るのだが、口が閉じている間に迷路の中はシャッフルされてしまう。そして夜の間にメイズに閉じ込められた者は生きて帰って来れない。

そしてその少年はその夜に横柄な態度を崩さない別にリーダー格のゲイリーと決闘することになる。そしてその瞬間、彼は自分の名がトーマスだったことを思い出す。

やがて少しずつこの特殊な世界について学んでいったトーマスは、メイズのなかには<グリーバー>と呼ばれるモンスターが生息しており、それに傷つけられたものはやがて正気を失っていく様も目の当たりにする。そしてある夜、帰還するも傷ついたランナーであるアルビーを助けるためにメイズのなかに取り残されることになったトーマスと、ランナーのミンホは生存不可能と思われたメイズのなかで一夜を耐え浮き、その過程で初めて<グリーバー>の殺害に成功する。

これまで異常な状態のなかでも秩序を保っていた世界は、トーマスの登場によって少しずつ変化を余儀なくされ、やがてはこの世界から脱するための大きなうねりへと変わっていく。

■レビュー■ ※ネタバレなし

本作はジェニファー・ローレンス主演の『ハンガー・ゲーム』のフォロワーという位置づけである。ティーン向け小説を原作とし、原作に忠実でシリーズを通して作品の世界観を少しずつ構築していく流れであることからもその比較は避けては通れない。原作ファンが主なマーケットとなり、シリーズ全体を通していくつもの謎が徐々に解明されていく構成から、製作初期からある程度のヒットは確約されていた。そして全米公開が9月と言う映画界における閑散期であることを鑑みれば、オープニング週末成績で40億円ほどを売り上げたことからも作品は成功と言える。

『ハンガー・ゲーム』同様に本作もポスト・アポカリプス<終末後>映画である本作だが、『ハンガー・ゲーム』が一作目から全体の世界観が提示されていることとは違い、本作ではシリーズを通して大きな謎が設定されており、シリーズ第一作の本作ではそのすべての謎は解明されない。解明されないどころか、新たな謎を提示して本作は終わる。こういった反映画的なテレビ的構造が本作を特徴付ける最大の要素だろう。

こういった本作の立ち位置に評価は分かれるところだと思うが、作品自体は謎解きと巨大な迷路でのサバイバルというスリルがしっかりと描けており、『ハンガー・ゲーム』とは違った醍醐味がある。特に映画の最初から最後までの約2時間をノンストップで物語が進行していくので、飽きることはない。

ただしテーマの意味として、巨大で無慈悲な迷路=大人社会というメタファーはちょっとチープすぎる。それは『ハンガー・ゲーム』同様に『バトルロワイアル』的であり、映画の最後のドンデン返しのために保留されたテーマであるとは言え、年齢的に大人側になってしまった身には既視感が強い。こういった所謂「ティーン向け物語」というカテゴリーから抜け出すためのハードルは、先行先品の『ハンガー・ゲーム』が強力な出演陣を揃えているだけにかなり高いと思う。

またこの手の映画で難しい点として、リアリティー・ラインの設定があるが、個人的には少年たちの服装が一見してかなりみすぼらしい反面、なぜか少年たちの髪型がナチュラルを装った“ばっちり”ナチュラルヘアーであることとか、悶々とするはずの少年の集まりのはずなのに“性”の行き場が描かれないなど、そういった細部の誤謬が気になってしまうのは大人の悪い癖なのだろうか。

とにかく作品全体に粗があることは間違いないが、物語としては次作への期待感をしっかりと煽っており満足度は高い。ハリウッドはこういったティーン向けエンターテイメント映画でも真面目に制作するし、過去作との差別化にも意識的に取り組んでいるのがよくわかる。ハリウッドではマーベルなどのアニメ原作映画が華やかな一方で、ティーン向け映画も同様にしっかりとした興行的土台を築いている。そう言う意味でも見逃せない作品だと思う。

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▼次のページよりネタバレのストーリー解説です▼

the_maze_runner_lead.jpg

3 件のコメント

  • こんにちは。
    私も『メイズ・ランナー』、公開日に見に行ってきました。

    個人的にはとても満足できた作品でした。
    『ハンガー・ゲーム』も好きですが、ゲームの緊張感の凄まじさや、ビジュアルの壮大さはこれの方がはるかに上でした。
    全体の世界観が最後まで明かされないところも良かったと思います。
    ただ、この映画で私が少し気になったのは、主人公に都合よく話が進みすぎなこと。
    ヤングアダルトの映画にはありがちな展開ですけど、これはあまりにも都合が良すぎでしたね。
    あと、映画のエンドロール後に異例な続編の予告編の上映があり、私も観ましたが、本来はこんなことあっちゃいけないと思います。これだけ公開が遅れたからできることなわけですからね。

    どうやら続編の公開が来年の2月から今年の10月に前倒しされたらしいですね。
    クチコミに後押しされて、ということらしいのですが、こんなことなくても早く上映しようとは思わないのかなあ?

    • shimahamaさん、コメントありがとうございます。
      『メイズランナー』は突っ込みどころはあれど、疾走感は素晴らしい作品でした。
      それにしても日本では続編の予告が流されるということで、嬉しいようで実に不快な状態ですね。
      一ヶ月二ヶ月の遅れならまだしも、本シリーズや『ハンガーゲーム』のように後出しじゃんけんで劇場公開が決まってしまう状況は、やはりうまく理解できないですね。

  • いちばん惜しいと思ったのは
    翻訳の下手くそさ。
    おい!そこそう訳すか?っいう突っ込みどころ満載。
    チャック子どものはずなのに
    セリフがオヤジすぎて興ざめもいいとこ!
    翻訳すりゃあいいってもんじゃないよ。

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