【映画】相葉雅紀主演『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』レビュー

嵐の相葉雅紀主演で東京国際映画祭招待作品の『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』のレビューです。山下達郎の「クリスマス・イブ」をモチーフとした中村航の原作小説を犬童一心監督が映画化。普段なら鑑賞することのないタイプの映画ですが、東京国際映画祭で観る機会があったため、ここで紹介しようと思います。なお、この記事のレビューを読んで不快になられる方もいらっしゃると思いますが、前もって深く謝罪いたします。どうも、すんません。2014年11月22日公開です。

Debukuro

■ストーリー■ ※ネタバレなし

漫画家志望の光(相葉雅紀)は、本屋でアルバイトする傍らコミケで自分の作品を売ったりする、とにかく気の良い男。ある夜、光は帰宅中に道角で走ってきた女性とぶつかってしまう。そのせいで彼女が持っていた模型が壊れていしまい、その一部が紛失してしまう。自分だけが悪い訳じゃないのに、平謝りの光を見て、彼女は「ピドゥルギ(鳩)」みたいとたどたどしい日本語で笑った。

光には近所に住む幼馴染みの杏奈(榮倉奈々)という理解者がいた。いつもうじうじして場に流され易い光と違って、杏奈は強い意志と男勝りの性格の持ち主。ひとりで溶接工として家業を継いでいる。光と杏奈は子供の頃から強い友情で結ばれており、特に光にとってはなくてはならない存在だった。

昼間は大人しい性格の光だったが、実は自身のイマジナリーフレンド(空想上の友人)として「デビクロ(デビル・クロース)」というサンタクロースの負の部分を背負ったキャラクターをいつも自分の近くに住まわせていた。そして夜な夜な光は「デビクロ通信」というイラスト入りのメッセージポスターを町中に貼付けて回っていた。

そしてあの夜、光が道角でぶつかった女性は、光自身が作り出したデビクロの世界観に登場する運命の出会いと一致していた。そのことで彼女を自分の運命の女性と信じるようになった光は、唯一の理解者である杏奈に相談する。

実は光に片思いをしていた杏奈だったが、それを押し殺し、光の運命の女性探しを手伝う。そしてその糸口となる彼女が落としていった模型の一部を見て、杏奈は彼女の正体を理解する。

ソヨン(ハン・ヒュジュ)は韓国人の人気絶頂の空間プロデューサー。彼女は杏奈と一緒に仕事をしていた。そしてソヨンにはロンドン留学中に付き合っていた漫画家志望の元大手証券マンである北山(生田斗真)のことが未だに忘れられずに、彼を追うように日本に来ていた。

そしてある日、コミケに自分の作品を売りにいっていた光はそこで同級生の北山に再会。実は彼は今日本で大人気漫画家として活動していることを知る。

光、杏奈、ソヨン、北山、それぞれのすれ違う想いは、聖なる夜クリスマスに、光が作り出したデビクロによって、素敵な奇跡を奏でることになる。

■レビュー■

※以下の文章にはこの映画の出演者及びそれらが所属する集団や団体を強く支持される方には好ましくない表現が含まれる可能性がありますので、注意してください。※

今年だけで200本ほどの映画を見ていれば、当然ガッカリするような映画に出会うことも珍しくない。脚本が雑であったり、撮影手法が古くさかったり、演技がお粗末だったり、そもそも映画化する必要があるのか疑問だったりと、その理由は様々だ。でもそういった映画が存在すること自体は仕方のないことで、もし映画界には傑作しか存在しないとしたら、その傑作の価値すらなくなってしまう。その意味で映画の質が多様であることは、好ましいとも言える。

しかし多様な映画のなかには、作品の質以前の問題として、それが一体何なのかという理解さえも拒むような作品も存在する。例えば本作「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」という映画。配給元からの情報では“新感覚ラブストーリー”ということなのだが、その新感覚たるや、純度を高め過ぎたせいで、とうとう理解不能なレベルまで達している。しかも監督はこの10年でコンスタントに話題作を撮っている犬童一心ということでどこまでが確信犯として行われているのかもわからない。もしかするとわざとこんな訳の分からん映画を撮ったのかもしれない。

まず本作には主人公のイマジナリーフレンド(想像上の友達)としてデビクロという、負の感情の集積のようなキャラがアニメーションとして登場するのだが、この手法いつの時代だよ、と愕然とする。現在の日本で最も人気のあるアイドルグループのひとりが初主演を務める映画で未だに『ロジャー・ラビット』や『スペース・ジャム』をなぞるとか正気とは思えない。しかもアニメーションも安いぞ。

4人の登場人物にも全くリアリティーがなく、その人物設定は映画やドラマというよりもお笑いコントに近い。おそらく30歳前後であろう光の行動を冷静に見れば、ちょっとした脳障害、例えばある種の分裂症を患っているのかもしれないと心配になる。何があってもニコニコして、自分に非がなくとも土下座せんほどの勢いで謝り倒す。というか30過ぎてイマジナリーフレンドと大声で喧嘩したり、会話することに違和感を感じていないとか、純粋を通り過ぎてホラーです。

そして生田斗真演じる北山の、前職・ロンドン在住のエリート証券マン、現職・大ヒット漫画家という設定。絶対ウケ狙っているよね。しかも超絶イケメンの元エリート証券マンで現在は人気漫画家が、物語終盤で抱えている悩みを打ち明けるシーンは笑えます。「好きなことと、売れることは違うんだよね」。えっ?そんな薄い悩みで自暴自棄になってたの?そんな悩み証券マンを止めて漫画家になろうとした時点で当然ぶつかっている壁だろうに、いまさらそんなもん持ち込むなよ。

物語全般を通して、こういった意味不明且つ理解不能なシーンの連続です。でもきっと原作がそういう世界観なんだと思います。

しかしそんな思いもラストの一連のシークエンスを見て、一気に吹っ飛びます。顛末は省きますが、クリスマスに光は自分の本当の想いに気がつきそれを告げるために山下達郎の「クリスマスイブ」をバックに雪のなかを成田空港まで走るのです。東京都心から。途中車に乗ったりしますが、基本ランです。雪が降っていて、急いでいるなら電車一択という状況のなかなぜ走る?そして光も長距離走になることを覚悟の上で、キロ6分ペースのジョギング風に走ります。もちろん途中で雪のなかに倒れ込んだりもします。そのまま寝てろ、と思いますが立ち上がり、また成田に向けて走り出すのです。しかも途中カメラに傾斜を付けた坂道撮影などレトロな演出も冴えわたっています。ちなみに東京都心から成田までの距離約80キロ。雪降るホワイトクリスマスに、ウルトラマラソンとか一体何を考えているのか。とにかくここは今年最高の失笑ポイントでした。

クリスマスイブ、相田みつを、ジャニーズ、ロジャーラビット、空間プロデュース、といった明らかに「混ぜるな危険」の要素を一本の映画に詰め込んだ本作。普段なら見ることのない映画ながらも東京国際映画祭の招待作ということで鑑賞させていただく機会が巡ってきたのですが、一体これは何なんでしょうか。

本作を鑑賞中、近くに座っていた人は速攻でいびきをかいて眠りだし、左斜め前の外国人はラスト間近になって「もう堪えきれない!」という面持ちで退出していました。そして幕が閉じた後、後方に座っていたあるライターさんらしき女性が「これは相葉くんの代表作になるわ」と言っていました。

僕にはこの世界の真実というものがわかりません。

相葉雅紀主演『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』は11月22日全国ロードショーです。心を込めて言います。是非ご覧になってください。

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