映画レビュー|『パディントン』-マーマレードのような絶品ファミリー映画

英作家マイケル・ボンドの人気児童小説『くまのパディントン』の実写映画化作品『パディントン』のレビューです。南米ペルーからロンドンにやってくきた礼儀正しく紳士なくまさんパディントンが巻き起こす大騒動。世界中で2億5千万ドル以上を売り上げ、続編の製作も決定。最高ファミリー映画。ネタバレページあり。

New paddington final quad

『パディントン/Paddington』

全英公開2014年11月28日/日本公開2016年1月15日/イギリス・フランス映画/95分

監督:ポール・キング

脚本:ポール・キング、ハミッシュ・マッコール

原作:マイケル・ボンド著『くまのパディントン』

出演:ベン・ウィッシャー(声)、ヒュー・ボネビル、サリー・ホーキンス、ジュリー・ウォーターズ、ニコール・キッドマン他

あらすじ

森深いペルーの奥地に暮らす一匹のくまさん。彼は両親は早くに亡くすも、叔父のパストゥーゾと叔母のルーシーと大好物のマーマーレードを作りながら平和に暮らしていた。その昔、イギリスの探検家がこの地を訪れたことで、パストゥーゾとルーシーは英語を覚え、イギリス風の習慣を身につけていたのだった。

しかし、そんなある日、ペルーを大地震が襲う。家も森の木々も全てをなぎ倒され、パストゥーゾおじさんは不幸にも亡くなってしまう。老いたルーシーは熊の施設に入ることを決意し、まだ若い彼は叔父の形見の帽子を携え、憧れの地ロンドンに向かうのだった。

ロンドンの鉄道駅に着いた彼だったが、忙しい人々は誰も彼に気をかけない。そして夜になって彼の前をある家族が通る。礼儀正しいくまさんに感心したメアリーは夫の反対を押し切って若いくまさんを家に招待することにする。そして彼に人間風の名前として、彼らが出会った駅にちなんで「パディントン」と名付ける。

礼儀正しく真摯なくまさんパディントンは、ドジを繰り返しながらもみんなから愛されるようになる。しかしそんな彼を付け狙う怪しい影が、、、。

かくしてロンドンを舞台に、くまのパディントンの大冒険がはじまる。

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レビュー

マーマーレードのように、甘さたっぷり苦味少々の絶品映画:

映画を好きな人は多かれ少なかれ、空想好きな傾向があると思う。もし宇宙に地球人とは別の生命体が存在していたらとか、もしタイムマシーンがあって未来または過去へ時間旅行できなのならとか、子供の頃からそんなことばかり考えているから、やがては想像力の矛先は映画や物語に向かっていくことになる。そんな空想の対象には、もし動物がしゃべれたら、というカテゴリーもきっと存在する。『ドリトル先生』はその筆頭で、世界中を旅しながら動物と親友になれるなんて最高の人生であることは間違いない。そしてイギリスの児童文学『くまのパディントン』も同様に、こんなくまが本当に我が家に来てくれたのなら、その家族はきっと最高だろうと思わせてくれる魅力がある。

暗黒のペルーを訪れた冒険家はそこで気さくで好奇心旺盛なクマたちと出会い、彼らが人間と同様の知性を備えていることを発見する。彼らはすぐに大親友になり、クマたちはその冒険家の故郷であるイギリスの風習を生活に取り入れ、やがては言葉まで覚えてしまう。もちろんこういった物語設定を、イギリスによる植民地政策を肯定する大英帝国主義的メタファーとなっていると非難することも可能かもしれないが、できることならそんな大人びた態度は取らずに、空想好きだったあの頃の態度そのままで、こんなクマと出会えたなら最高だろうにと思うに留まりたい。

この『パディントン』には隅々まで、子供の頃の憧れが描かれている。パディントンは嘘はつかないし、礼儀正しい。ちょっとドジだけど、時々ものすごいこともやってのける。友人としては最高だ。そして彼がいることで家族間の隙間風はこれまでにないほどに暖かくなる。ドラえもんみたいに、こんな友人がいてくれた何もかもが上手く行きそうに思える。今よりももっと楽しくなりそうな気がするのだ。子供の空想癖とは、時に家庭環境の寂しさの裏返しになる。もしスピルバーグが恵まれた家庭環境で育っていたのなら、きっと『ET』は生まれなかっただろう。しかしその『ET』によって空想に逃げ込んだ多くの子供たちが救われることにもなった。孤独が生んだ空想が、他の誰かの孤独を癒していく。

『パディントン』にもそんな力があるように思える。ひたむきで、家族思いで、情に篤く、それでいて頑固でドジなパディントン。彼と出会うことで人々は、子どもの頃にそういったものを確かに憧れていた自分を思い出す。子供の頃を夢を思い出させてくれるのだ。もちろん劇中の人物だけでなく、観客にも同じ効用が期待できる。

原作を読んだことにある人にとってはおなじみのキャラクターが勢ぞろいしているのも嬉しい。パディントンを受け入れるブラウン家の面々もそうだし、意地悪だが根はいい隣人のカリー氏。骨董屋の主人はパディントンにケーキをご馳走してくれるし、パストゥーゾおじさんもルーシーおばさんも原作のイメージ通り。そしてなにより重要なことだが、パディントンが本当にかわいいのだ。実写映画ということで下手をすれば「リアル」過ぎて怖いものにもなりかねないヴィジュアルも、彼のつぶらな瞳にズームインしていくだけであっさりと虜になってしまう。

ハリウッドの家族向け映画とは一味違って、エスプリの効いたシーンや「ミッション:インポッシビル」へのオマージュなど、「甘さ」以外にもしっかりと「苦味」も表現している。まさにマーマーレードのような絶品の家族向け映画。

ということで『パディントン』のレビューでした。非ハリウッド映画でありながら世界中で2億5千万ドル以上を売り上げ、早々と続編の製作も決定。しかし本作の日本公開は当初の予定から大幅に伸びて2016年春に設定されています。同じしゃべるクマさんでも『TED』とは違って、子供にも安心して魅せられる作品です。おすすめです。

※次のページにネタバレのストーリー紹介※

Summary
Review Date
Reviewed Item
パディントン
Author Rating
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