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Huluドラマ『11.22.63』第2話レビュー(ネタバレあり)「The Kill Floor」

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スティーブン・キング原作で、J・J・エイブラムスが製作するHulu期待の新ドラマ『11.22.63』第2話のレビューです。ジェームズ・フランコ演じる高校教師がJFK暗殺を阻止するためにタイムスリップする物語。第2話ではキング得意のホラーエッセンスが見事に再現されており、前話に続き素晴らしいの一言。

『11.22.63』第2話「The Kill Floor」

全米公開2016年2月22日/日本公開未定/SFドラマ/55分

監督:フレッド・トーイ

原作:スティーヴン・キング『11/22/63』

脚本:ブリジット・カーペンター

出演:ジェームズ・フランコ、ジョシュ・デュアメル、クリス・クーパー、ほか


レビュー

「優れた作品を書こうと思うのなら、優れた第1章を書かないと話にならない」

本編で殺人鬼から語られるこの言葉はスティーヴン・キングの小説を原作とするこのドラマにも言えることだ。そして先週放送された『11.22.63』の第1話とはまさに優れたシリーズに必ず必要な優れた第1話だった。テレビドラマがその質やスケールで映画よりも下に見られていた時代は、もう過ぎ去った過去なのだということを証明するように映像、美術、照明、そして俳優たちもすべてが映画の品質、しかも優れた映画のそれと同等のクオリティで作られていた。

また第2話となる「The Kill Floor」はこのシリーズの原作がスティーブン・キングであるという事実を前面に押し出したホラー展開となっており、そのクオリティに関しては前話に引けを取らない素晴らしいものだった。

ケネディ暗殺阻止という使命を背負った高校教師ジェイク(ジェームズ・フランコ)が現代から1960年にタイムスリップし、3年後に起きるケネディ暗殺を阻止すべく、過去の世界での生活を開始する。

現代でジェイクの国語の生徒でもあったハリーは、1960年ではまだ子供で、その年のハロウィーンの夜に自分の父親が母と妹を惨殺することになっていた。ハリーの人生はそのせいで不幸なものとなってしまい、1960年に降り立ったジェイクはケネディ大統領を救う前にハリーの母親が妹を救おうと計画する。ジェイクが生まれ育った世界では1960年に死んでしまったハリーの母親と妹を救うことで、歴史を変えようとするのだ。

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いじめられっ子だった子供時代のハリーと出会ったジェイクは、酒場で彼の父親、つまりハロウィーンの夜に妻と娘を殺す殺人鬼フランク・ダニング(ジョシュ・デュアメル)についてバーデンダーに聞き込みをするも、その事実がフランク本人にバレて二人は早速出会うことになる。

自分が作家だと名乗り取材をしている風を装うジェイクだったが、フランクに連れられ食肉加工場へと連れて行かれる。そこでフランクの異常性の一部を目撃したフランクは、彼を殺す決心をする。

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<ここからエピソードのネタバレが含まれます>

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前話のレビューでも述べたがこのドラマシリーズが素晴らしいのは、原作者スティーヴン・キングの作家的特徴を映像作品としても表現しているということだ。一見すると本筋とは関係がないように思える執拗な細部の描写や他愛のない会話でさえも、物語が終結するにつれてその磁場に吸い寄せられるように一気に意味を帯びてくる「ドライヴ感」こそがスティーヴン・キングの特徴だとするのなら、このドラマにもその魅力が備わっていることは第1話を見れば明らかだ。

そして第2話となる「The Kill Floor」はそれに加えて、ホラー作家としてのスティーヴン・キングの印がしっかりと刻印されている。

第2話の中心人物とは1960年のハロウィーンに家族を惨殺するフランクだ。演じているのは『トランスフォーマー』のレノックス役で有名なジョシュ・デュアメルだが、この『11.22.63』ではカリスマ性のある異常者として登場する。ルックスもよく愛想もいいフランクだが、自分のことを詮索するジェイクへの疑いを払拭させるために彼に「ハンマーで牛の頭を叩き割る」ことを強要する。

結局ジェイクは牛を殺すことができず、代わりにフランクが子牛の頭をハンマーで叩き殺すことになるのだが、その猟奇的な描き方はまさにキングの嫌らしさそのものだった。アメリカの大学サークル(フラタニティー) などにも見られる、後ろ指を指されることを一緒にすることで仲間として認め連帯の根拠とする伝統のなかに、1960年当時から変わらない村社会の閉鎖性とその異常性を見出そうとする。

ジェイクはフランクの異常性を間近で経験したことで、「ハロウィーンの夜にこいつは殺人を犯す」という確信を持ち、何とか事件を回避しようとセールスマンを装い特別招待券と称したチケットに当選したと嘘をつき、被害者となるハリーとその母親をハロウィーンの夜に自宅から引き離そうとする。しかし歴史がそれを許さない。「ハリーの母親はフランクに殺されなければならない」という歴史の事実が、ジェイクの行動を邪魔しようとする。結果、ジェイク自身もフランクから殴られ、そこで「もうこいつを殺すしかない」と決心するのだ。

銃を手にしたジェイクは、ハロウィーンの夜に凶行に及ぼうとするフランクを射殺しようとするのだが、そこに闖入者が現れる。フランクを付け回すジェイクを不審に思っていた酒場のバーテンダーだった。しかし彼は歴史の抵抗としてジェイクの前に現れた訳ではなかった。曰く、誰も信じないが彼の姉も過去にフランクに殺され死体さえも見つからないのだと言う。彼と一悶着している間にハリーの家から悲鳴が上がった。

ジェイクに歴史を変えさせまいとフランクは実際とは違う形で犯行に及ぼうとしていたのだ。急いで家の中に入ったジェイクは、まさにフランクが妻を殺そうとしている場面に間に合い、銃を発砲するも致命傷とはならなかった。ハンマーで殴りかかってくるフランクと対峙しながらも、幼いハリーの助けもあり、何とかジェイクはフランクを殺害することに成功する。ハリーも無事なら、妹も母親も無事だった。

ジェイクは様々な歴史の妨害も跳ね除け、ハリーの家族を救ったのだ。つまり歴史を変えたのだった

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第2話の終わりは、フランクを殺し車で逃げ去ったジェイクを追ってきたバーテンダーの男がケネディ暗殺を知らせる新聞を手にしたところで終わる。もちろん1960年にはまだ起きていない、ジェイクが現代から持ってきていた1963年の新聞だった。

第2話にはたった50分ほどの長さのなかに重要なプロットがいくつかある。なかでも印象的なのはジェイクが部屋を間借りする家の寡黙な主人が第二次大戦の思い出話をジェイクにするシーンだ。戦果を讃えられブロンズスターメダルを政府から与えられたその男は、戦争の英雄とされる一方でその実態は英雄とはかけ離れた行為だったことに今でも悩んでいる。そんな彼にジェイクはこう諭す。「でもあなたがそこにいたことにこそ意味があり、そして事実を告白したことはまちがいなく勇敢な行為ですよ」と。

フランクの殺人には一見無関係な会話であっても、その内容には物語全体を通したテーマの一部が少しずつ含まれている。歴史というのは教科書や新聞に書いてある事だけが真実というわけではなく、当事者だからこその歴史の真実もある。それはケネディ暗殺という歴史への疑問符となると同時に、ジェイクが過去を変える根拠にもなる。

第1話の段階で全8話のシリーズとなるこのドラマは傑作の予感がするという感想を持ったが、第2話を見終わると単純に次のエピソードが早く見たいという欲求が走ってしまう。映画のクオリティでありながらもドラマとしての次回への期待感もしっかりと作り上げていたエピソードで、前話は80分の特別枠でケヴィン・マクドナルド監督の映画的な演出が見事だったが、第2話ではテレビドラマ特有の展開の速さと謎の先延ばしが効果的で、『エイリアス』や『LOST』といったJ・J・エイブラスム関連作に関わってきたフレッド・トーイの手腕が光っていた。

原作のファンであることや色々と思い入れが混じっていることを差し引いても、これはスゴいシリーズになりそうだ。「過去を変えてしまいたい」、「変わってほしい過去がある」、「今が不幸は過去のせい」という後ろ向きな願望に対する強烈な答えとなるかもしれないとさえ思う。

とにかく4月4日公開の最終話まで目が離せないのだ。日本での放送の予定はまだ発表されていないが、これは要チェック。

『11.22.63』第2話「The Kill Floor」: 文句なし!

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『11.22.63』第2話「The Kill Floor」
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