映画『デッドプール』レビュー(ネタバレあり)

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世界中で大ヒットを記録した『デッドプール』のレビューです。ライアン・レイノルズが演じ、フィクションと現実の壁さえを突き破る異色な珍ヒーロー「デッドプール」の誕生。『X-MEN』シリーズの一派!?後半には元ネタバラしがいくつかあります。

『デッドプール / Deadpool』

全米公開2016年2月12日/日本公開2016年6月1日/アメコミ/108分

監督:ティム・ミラー

脚本:レット・リース、ポール・ワーニック

出演:ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、ジーナ・カラーノ、T・J・ミラー

レビュー

人殺しではじまるラブストーリーがあってもいいじゃないか!

ジュース・ニュートンが歌う身の毛もよだつ片思いソング『Angel of The Morning』で幕を開ける『デッドプール』は、頭から手首まで大抵の身体的突起物がチョンパされるほどに過激な作品なのに、体裁としては劇中で表明されるようにスーパーヒーロー映画の皮を被ったラブストーリーなのかもしれない。

ニューヨークでストーカーなどの陰湿な男たちから女を守る仕事で日銭を稼いでいる元特殊部隊員のウェイドは、行きつけの地下バーで出会った娼婦ヴァネッサに恋をして、婚約までする。しかし幸せの絶頂の時に、彼は末期ガンと宣告されてしまう。絶望のなかウェイドは治療と引き換えに危険な人体実験のモルモットなることを決意するが、実はガンの治療ではなく人工的に超人ミュータントを作るためのもので、ウェイドはその実験で不死身の肉体を得ると同時に全身が醜くただれてしまうことになる。

どんな傷もすぐに完治する肉体を得たウェイドは「デッドプール」と名乗り、自分を騙した組織への復讐を誓うも、醜くなった自分を恥じフィアンセのヴァネッサに会うことができない。

次々と組織の関係者を惨殺していくデッドプールだが、先回りした組織の手によって愛するヴァネッサが誘拐されたことを知り、愛する人を守るため、最後の戦いへと赴くのだった。

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というもっともらしいあらすじの行間は、下ネタや血しぶき、首チョンパ、メタ・ジョーク、映画やコミックといったサブカルチャーからの引用などで、ほとんど隙間なく埋め尽くされている。

観客とスクリーンを隔てる「第四の壁」さえも突き抜けることで有名なデッドプールらしく、映画のナレーションがただの説明ではなく彼自身の独白となり、観客に直接語りかけることになる。しかも『X-MEN』シリーズと同じ世界観を共有するということで、ことあるごとに鉄の爪を持つ「ウルヴァリン」が槍玉に挙げられるのだが、その名前をオーストラリア訛りで呼び、演じているのがヒュー・ジャックマンということさえ知っている。またプロフェッサーXを演じるのもパトリック・スチュワートとジェームズ・マカヴォイの二人であることも知っている。デッドプールは「第四の壁」の観客側の世界も知っているという不思議な設定なのだ。

それもこれも人体実験中に行われた拷問によって頭がおかしくなったからということで、彼の口から出る言葉はとにかくメチャクチャだ。そしてその言葉たちこそが本作の見所なのだろう。

本作の魅力はデッドプール個人の存在がほとんどを占めており、お世辞にもストーリーがいいとか、脚本が優れているとかは言えない。と言うか、劇中で描かれる事件そのものにほとんど価値はない。特に事件の解決に関してはかなりいい加減な作りになっている。

デッドプールが銃をぶっ放し、悪態をつき、冗談を吐き出し続けるだけの映画でもあり、見終わった後は劇中で「何が起こったのか」ということよりもデッドプール自身の印象が強く焼きついてしまう、アイドル映画の王道のような作品だった。

Deadpool 1

<ここから『デッドプール』のネタバレが含まれる可能性があります>

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『デッドプール』は世界中で記録的な大ヒット作となったわけだが、決してわかりやすい作品ということでもない。「第四の壁」を突き破ってくれるだけあって、そのジョークの多くは「こちら側(観客側)」と共有する世界から引用が多く、特にサブカルチャー関連のジョークはその理解に世代的な隔たりが生まれるだろう。

例えばデッドプールを助ける『X-MEN』メンバーのネガソニック・ティーンネイジ・ウォーヘッド(最高のクールな名前!)が丸刈りにした少女であるのを見て「『エイリアン3』のリプリーかよ!」とツッコミを入れたり、脅し文句が「リンプ・ビズキットがロックにしたことと同じようにてめえの顔をグチャグチャにしてやる!」(リンプはレコード会社からのゴリ押しでデビュー)だったり、他にもデッドプールを演じるライアン・レイノルズが過去に出演した『ブレイド2』や『グリーンランタン』といった作品を自虐的に振り返ったりと、映画内で言及されるサブテキストの量は膨大だった。

またサブカルチャー関連だけでなくライアン・レイノルズがカナダ出身ということで製氷車を「ザンボーニ」と呼んだり、そのジョークはかなり混み入っている。

映画を見ていて「あー、これは何かのジョークなんだろうな、わからないけど、、、」というシーンがいくつかあったが、早口でまくしたてるセリフを字幕翻訳だけで伝えるのは至難の技だし、吹き変えたところでそもそも意味がわからない部分も多いだろう。

少なくとも『X-MEN』シリーズと、その背景くらいは知っていたほうがいい。何の予備知識がない状態で『デッドプール』を見れば「面白いことをしゃべっているらしい過激なアクション映画」くらいしか印象に残らないかもしれない。でも実際は「面白いことをしゃべっている過激なアクション映画」なのだ。

物語だけを見れば凡庸なラブストーリーで、その中身は過激な描写と膨大なジョークで埋め尽くされた作品。

エンディングには「観客に訴えかける」映画の先輩格である『フェリスはある朝突然に』のフェリス・ビューラーが着用していたバスローブを着たデッドプールが登場するサービスなど元ネタ探しが楽しい映画なのは間違いないが、それ以外には大きな魅力を感じなかった。アクションも後半になるほどに尻窄みしてしまい、予算が少なかったという自虐ネタも笑えない状況になる。しかしそれでも悪い奴らは問答無用で皆殺しにしていく。その部分ではケチることはしない。

過激ならば何でもいい、というジャンル映画への偏愛に支えられる映画そのものが珍しいわけではないが、それが記録的なメガヒット作品となる現実は、思わずどこかの大統領候補の躍進と重ねずにはいられないほどに奇妙な現象だと言えるのかもしれない。面白い映画であることに異論はないが、熱狂するほどの映画でもなかった。

それでも続編では相棒のケーブルも出演するようだから絶対観るけどね。

『デッドプール』:

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Summary
Review Date
Reviewed Item
デッドプール
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