ニコラス・ケイジ主演『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』レビュー

俺たちのニコラス・ケイジ主演の怪奇ホラー『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』のレビューです。ハロウィンの日に行方不明になった息子を探す大学教授が、毎年のように発生するハロウィンでの子供失踪事件の恐るべき真相に挑む。半笑いで観るとしっぺ返しを食らうニコラス印のオカルトホラー。

Pay the ghost nicolas cage

『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』

日本公開2016年10月22日/ホラー/94分

監督:ウリ・エデル

脚本:ダン・ケイ

出演:ニコラス・ケイジ、サラ・ウェイン・キャリーズ、ベロニカ・フェレ

レビュー

ニコラス・ケイジの迷走は2006年くらいから顕在化していく。それまで大作アクションからドラマ映画まで幅広く個性的な役柄をこなしてきたニコラス・ケイジも『ウィッカーマン』あたりからラジー賞につけ狙われるようになり、『ゴーストライダー』『NEXT -ネクスト-』『デビルクエスト』『ゴーストライダー2』などなど、たった5年ほどの間でほとんど毎年ラジー賞にノミネートされてしまうようになる。

しかし今にして思えばラジー賞にノミネートされるだけまだマシだった。

2013年の『グランド・ジョー』という傑作に主演し「これで復活か!」と期待させておいた翌年の2014年、ニコラス・ケイジは二本のクズ映画に出演する。ひとつは『ザ・レジェンド』という謎の十字軍映画で、もうひとつは気狂い宗教映画『レフト・ビハインド』。前者は主演をヘイデン・クリステンセンに譲っているため目立たないが、後者に関しては近年稀に見るゴミ映画だった。『ゴーストライダー』のように愛されるダメ映画ではなく、正真正銘、つま先から光り輝く後頭部まで一貫してクズ映画だった。

『レフト・ビハインド』はひとことで言えば、質も悪ければタチも悪い、福音的オカルト映画だった。ある日、世界中で次々と行方不明者が発生。まるで神隠しのように人々が消えた後、世界は混沌に陥るという内容で、そのオチは「聖書に忠実に生きていないと死にますよ」というクソみたいな教条だった。別にニコラス・ケイジがオカルト映画に主演するのが悪いのではない。2008年の『ノウイング』なんて、なかなか素敵なオカルト映画だった。本来はニコラス・ケイジとオカルトとの相性はすこぶるいいはずだった。

それでも『レフト・ビハインド』はだめだった。ニコラス・ケイジ・ウォッチャーをもってしても『レフト・ビハインド』は1ミリの擁護もできなかった。ただ単純にクソほどの有り難みもない最低品質のオカルト映画だったのだ。

そして2016年、ニコラス・ケイジ主演の新たなオカルト映画『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』が日本で公開される運びとなった。以前のような優しい気持ちではなく、『レフト・ビハインド』後の取り残されたひとりとして厳しい姿勢で鑑賞に臨んだしだいだ。

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ニューヨークの大学で教鞭を取るマイク(ニコラス・ケイジ)は、ハロウィンの夜、一人息子のチャーリーにねだられ祭りの見学に出かける。しかしチャーリーはマイクに「霊に償ってくれる?/ペイ・ザ・ゴースト?」という不可思議な言葉を残し、マイクが一瞬目を離した隙に忽然と消えてしまう。

一人息子の失踪により、マイクとその妻クリステンは別居状態となり、マイクもまたチャーリーを見つけるために病的な状況に陥っていく。そしてチャーリー失踪から1年、マイクと妻クリステンの周りに不可思議な現象が立て続けに発生する。チャーリーが助けを求めるようで、二人は懸命に捜索を続ける。やがてマイクは毎年ハロウィンの日に、必ず子供の失踪事件がおこり、その事件は必ず未解決であることを突き止める。

まるで霊の仕業のように次々と発生する超常現象。そしてマイクはチャーリー失踪の裏に隠されたハロウィンの本当の意味を知ることになる。

Pay the ghost

結論から先に言うと、ホラー映画としても、オカルト映画としても、これがなかなか面白かった。というか、ホラー映画としてしっかりと怖がらせてくれ、オカルト映画として幽霊たちが大暴れするという、そのギリギリの中間線をしっかりと見失うことなく、90分ほどの尺を見事に使い切って見せた。もちろん内容が内容だけでに「傑作」とか「全米が泣いた」とかその種の映画ではないが、ジャンル映画としての及第点はしっかりと越えてきたという印象だった。

ネタバレに注意しながら本作の魅力を語ると、近年日本ではチャラチャラしたお祭りと化しているハロウィンの「本当」の姿を描いていることだろう。そもそもハロウィンはキリスト教とは無関係の古代ケルトの新年を祝う収穫祭であり、太陽の季節の終わりの象徴でもあるがゆえに悪魔や霊といった対象への信仰が生まれたとされる。

そしてその後のハロウィンはローマやイングランドに受け継がれ、ピューリタンがアメリカに移民することで新大陸に定着していった。こういった歴史的背景に隠された、ある悲しい悲劇が本作の核心となっている。

おかげで本作には『レフト・ビハインド』のような宗教的排他性は皆無となり、「ハロウィン」「悪霊」「犠牲者の霊」とそれぞれの真実が、ラストで一気に混じり合っていく。シンプルに映画の構造がしっかりとしており、 ひとつの謎からより大きな謎へと展開されていく推進力は見事だった。

一人息子が失踪してから主人公マイクがチャーリーの姿を空見するケースが多発する。山崎まさよしの『One more time, One more chance』のように失ったものへの未練が一人息子の幻影を見させていると思わせておいて、途中から本当に「見えていたのでは?」と思わせる演出は巧みだし、劇中半ばに登場する霊能者をインチキ呼ばわりしておきながら、彼女が霊の犠牲になっても責任なんて感じずチャーリーを助けることしか考えないマイクの真っ直ぐなサイコぶりもニコラス・ケイジが適役だった。というかニコラス・ケイジ以外に適役が思いつかない。

子供というのは大抵大人に見えない何かを見ているものだが、本作ではそういった子供独特の感受性をハロウィンの歴史に重ねつつ、それでも親は子を何があっても守らなければならないという厳しい姿勢も貫いている。

10月31日、今年もハロウィンで大騒ぎになるだろう。今年は何の仮装をしようかと悩む前に、特にお子さんをお持ちの方は本作を観るべきだ。日本ではハロウィンの歴史がまだ浅いため、そこに悪霊が介在することもないかもしれないが、日本中に存在するアンチ・ハロウィンの皆さんの怨念を軽く見るべきではない。ハロウィンに参加の際は、決してお子さんから目を離さないように。この映画はハロウィンの啓発系映画としても十分に評価できるのだ。

『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』:

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ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄
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