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アンソニー・ホプキンス主演『ソレス(原題)/Solace』レビュー

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アンソニー・ホプキンス主演『ソレス(原題)/Solace』のレビューです。1995年のデヴィッド・フィンチャー監督作『セブン』の続編の脚本をリライトして作られた、「超能力者vs超能力者の殺人鬼」の知能戦を描いたサイコ・スリラー。長い凍結期間を経てやっと日の目をみた作品。

『ソレス(原題)/Solace』

全米公開2015年10月2日/日本公開未定/スリラー/101分

監督:アルフォンソ・ポイアルチ

脚本:ピーター・モーガン、ショーン・ベイリー

出演:アンソニー・ホプキンス、コリン・ファレル、ジェフリー・ディーン・モーガンほか


レビュー

まず最初に本作が作られる経緯について説明する。2002年頃、ニュー・ライン・シネマは1995年の大ヒット映画『セブン』の続編製作に動き出すも、デヴィッド・フィンチャー監督とブラッド・ピットは関与を否定したため、モーガン・フリーマン演じるベテラン刑事サマセットを主人公にした続編を企画する。そして『オーシャンズ11』の脚本家テッド・グリフィンが書いて塩漬けされていた、超能力者の医者が同様に超能力を持った殺人鬼を追い詰めるという内容の脚本を元にして、主人公の超能力者の医者をサマセットに置き換えたサイコ・サスペンスの製作に乗り出すも、結局は頓挫してしまう。

結果、宙に浮いたままとなった脚本を今度はアカデミー賞にノミネート経験もある『フロスト×ニクソン』や『ラッシュ/プライドと友情 』のピーター・モーガンと現在はディズニーの実写部門の責任者を務めるショーン・ベイリーが、もう一度主人公を超能力者に置き換えてリライトしたのが本作『ソレス(原題)/Solace』のはじまりだ。そして主演の超能力者にアンソニー・ホプキンスを据えることで、本作は『セブン』の精神的な続編であり、そして『羊たちの沈黙』も想起させる期待のスリラーとなった。

しかし実際には2013年に撮影が開始されるも、その後公開スケジュールの目処は一向に立たず、長い凍結期間の末に2015年にトロント国際映画祭で上映されるも批評的にはほとんど無視され、アンソニー・ホプキンス、コリン・ファレルという大物俳優の出演しているというのにアメリカでの配給がなかなか決まらなかった。

こういった長々しい経緯もあり、本作からは地雷映画のような佇まいさえ感じるのだ。

触れた物に関連する映像や、人の過去や未来が見えてしまう特殊能力を持つジョン (アンソニー・ホプキンス)は、捜査員としてFBIに協力していた過去があるも現在はたったひとりで隠居生活している。そこにジェフリー・ディーン・モーガン演じるFBIの捜査官が未解決の連続殺人事件の捜査協力にやってくる。

最初は協力に難色を示したジョンだったが、ひとりの女性捜査官に触れた瞬間、彼女が額から血を流して死んでいる姿を透視してしまう。また彼女だけでなく他の人々の無残な姿を見たことでジョンは捜査に加わることを決意する。

首筋をアイスピックのようなもので突き刺して殺す無差別猟奇殺人は、捜査の手をあざ笑うようにして続いていく。そして被害者の検死に立ち会ったジョンはそこで犯人の正体を知る。それは犯人もまた自分と同じような超能力者だということだった。しかも自分より強い能力の持ち主でもあった。

こうして老齢の能力者と、どこかに潜む超能力者の猟奇殺人犯との知能戦が開始される。

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なかなか尻尾を見せない犯人や、ミュージックビデオのようなセンスと編集で見せる超能力描写、そしてアンソニー・ホプキンスの説得力もあって、予想していたほどの「酷さ」は感じなかった。特にアンソーニー・ホプキンスが出演していた『ハイネケン誘拐の代償』と比べると、彼の演技力の作品に占める割合が高くなっているために、超能力老人という設定もさほど違和感はない。

それでもやはり物語そのものが馬鹿げている。監督の意図としては『羊たちの沈黙』のサスペンスと『セブン』のネオ・ノアールの雰囲気を混ぜ合わせようとしたのだろうが、結果としては映画としての輪郭がぼやけたままだった。登場人物たちの深刻さや切実さを物語の唐突さや突飛さが足を引っ張る形になり、逆に物語の非現実感も俳優陣の熱演によって水を差されている。つまり脚本の内容と演出の方針がうまく合致していないのだ。

おかげで物語は『セブン』系パートと、『羊たちの沈黙』系パートにばっさりと分断され、そして曰くありげな犯人の目的はどちらの系統に乗せても浮いてしまっている。事件の幕引きもお粗末だ。内容がお粗末だということもあるが、その描き方との相性も悪い。

それは映像にも言えることで、おそらくは撮影が終了しても公開のゴーサインが製作サイドから出なかったため追加での撮影やポスプロでの手直しなどを繰り返したのだろうが、あかげで映像の色調やトーンが全く一致してない。こういったグレーディングの変更というのはイメージと現実の違いを強調する時や回想シーンなどで使われるものだが、本作ではただ単純に一貫性がない。細部を見れば高度な映像技術もふんだんに盛り込まれているのだが、それらの繋がりが甘いから、長いミュージックビデオを見せられている感覚になる。

何か新しいことに挑戦しようとしたのだろうし、その姿勢は評価したいが作品そのものが凡庸なのでは仕方がない。

『ソレス(原題)/Solace』:

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ということで『ソレス(原題)/Solace』のレビューでした。『セブン』の続編脚本をアンソニー・ホプキンス主演で映像化となれば誰だって見たいでしょ?でも本作は公開までの経緯からもわかるように、アンソニー・ホプキンスとコリン・ファレルの名前だけの作品です。しかもこの手の猟奇系スリラーは現在ではスプラッターも辞さないホラー系作品に吸収されてしまっていることもあって、どこを取ってもヌルいです。あと詳しく言うとネタバレになるのでぼかしますが、犯人の目的と主人公の過去はどちらもヒドイ。まあ、『セブン』の続編がどうしても観たいという方は失望覚悟でご覧ください。以上。

 

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ソレス(原題)/Solace
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