映画レビュー|『スタング/STUNG』-B級映画王道の低空飛行

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巨大人食い蜂の恐怖『スタング/STUNG』のレビューです。寂れた屋敷に突如大量発生した巨大昆虫。やつらは人の体に入り込んでは内臓を食い漁り、やがてはさらに巨大化して人々を襲うのだった。これぞB級。『エイリアン』シリーズのビショップ役ランス・ヘンリクセンも出演するネオ・エクスプロイテーション映画の王道を行く作品。

『スタング/STUNG』

全米公開2015年7月3日/日本公開2016年1月5日/アメリカ映画

監督:ベニ・ディエス

脚本:アダム・アレスティ

出演:クリフトン・コリンズJr、ジェシカ・クック、ランス・ヘンリクセン他

あらすじ(ネタバレなし)

 ポールとジュリアはケータリング会社に働いている。その日、二人は人里離れた郊外の屋敷で行われるパーティに派遣されていた。

準備に取り掛かっている最中、ポールは蜂よりも一回り大きな昆虫が屋敷の周りで飛び回っているのを発見するも、準備に忙しく大したこととは考えなかった。そしてパーティは始まると、土の中からポールが見た大きな昆虫が出現し、人を襲いはじめる。謎の巨大蜂はただ人を襲うだけではなく、寄生した人体の中で内臓を食うことでさらに巨大化し、やがては人体をぶち破り外に出てくる。

参加者のほとんど殺される中、屋敷の主人ととも地下室へ逃げ込んだポールとジュリアは、そこで謎の人食い巨大蜂の正体を知ることになる。

果たしてポールとジュリアは人食い巨大蜂の襲来から生き延びることができるのか!

レビュー

B級映画のお手本のような低空飛行:

最初はピンポン球くらいだった蜂型昆虫が人間を襲い体内に入り込み内臓を食い尽くすと、いつの間にか小型車くらいの大きさに成長しているのはいくらなんでもやりすぎではないか、という真っ当な意見なんか聞きたくない。足腰の弱った老人たちが人食い蜂の餌食になっているのに、主人公の若者らが屋敷に隠れてビンテージワイン飲みながら昔話に花を咲かせるとかちょっとひどすぎやしないか、といかいう説教もゴメンだ。映画のオープニングで主人公の男女が車で屋敷へと向う途中、車が揺れたもんでコーヒーが女の服にかかってしまうのだが、その時おもむろに彼女が服を脱いで下着姿になるなんて夢みたいな話あるもんか、という批判に対しても、そもそも夢みたいな映画なのだ、ということで処理できる。

まあ、とにかくそんな映画だ。

ストーリーはいたってシンプルで、寂れた屋敷にはちょっと頭のイカれた主人が住んでおり、彼の実験めいた悪巧みのおかげで昆虫が巨大化し、凶暴化して人々を襲いまくるというもの。運悪くその屋敷に仕事にきた若い男女。男の方は気楽な性格で、女の方が神経質。それでも男は女に恋心を抱いている。正体不明、というか意味不明な人食い蜂の登場に慄きながらも、生き残るために手を取り戦うのだ。

本作のレビューに関しては良いところしか言及しないことにする。

まず物語の早い段階で、蜂が人を襲ってくれ、その次の段階では数名の主要人物以外を食い殺してくれる。物語は主人公の男女と、イカれた屋敷の主人、そして登場と同時に最後までは生き残らないことが明白な老人の4人に絞られる。老人に関しては頼りない主人公男子を鼓舞する役割があるだけで、それが終わったらちゃんと犠牲になってくれる。そしてその老人を演じるのはランス・ヘンリクセン。『エイリアン2』で高速ナイフ芸を披露してくれたビショップです。頭の悪いオマージュも悪くない。

こういった潔いB級映画というフォーマットに忠実すぎるくらい忠実な姿勢は、B級映画という偏見を逆手にとって実は頭のいいことを自慢しようとする『キャビン』や『クロニクル』といった似非B級映画に対する反論のようにも思える。でもそれはこの手のジャンルの愛好家たちの心の叫びであっただろうし、やはり色気むんむんの主婦や、太った家政婦や、老人や、場末のシンガーは早い段階で死んでもらわないと困る。本作はその点で誠実な映画だ。

また昆虫の造形も悪くない。蜂のように毒針を刺し、人間の体内に潜り込んでは内臓から食い散らかし、最後は体を突き破って巨大化して再登場する。その際、人の頭や体の部位が昆虫の体にくっ付いており、なかなか風情が感じられる。

そしてこの手の映画に必要とされる後味の悪さも心地よい。ラストはあいつらがこうなってそれが大量にガーとなる。CGだが爆発だってするし、子犬もしっかり餌食になる。そして映画のタイトルとなっている「スタング(STUNG)/STING(トゲなどで刺す)」というの言葉どおり、しっかりと「スタング/突き刺し、突き刺され」し合ってから終わるもの悪趣味でよろしい。

謎の生命体が体に寄生するというだけでなく、 他にも色々と設定を『エイリアン』から拝借しているのもコンパクトでいい。

敢えて前言を撤回し苦言と呈するのならお色気がないのは評価に響く。ここまで人体破壊をしているのだから、レーティング上おっぱいのひとつやふたつ、どうってことはなかったはずだ。この手抜きは当然作品の評価の根幹部分にまで関わってくる。おっぱいだせや。序盤に主人公の女の子が下着姿になっておきながら、最後まで誰もおっぱいださないなんて考えれない。というか許せない。ありえない。

B級映画としてはヒッチコックを意識したパニックホラーでありながら、全然怖くなくて、それでいて画面だけは派手というなかなか潔い姿勢を評価したい。

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ということで『スタング(原題)/STUNG』のレビューでした。ここ最近はDVDで素晴らしい映画ばかりを見ていたので反動でB級映画を劇場までわざわざ観に行ってきました。これもこれでいいですね。人が食い殺されている最中に客席からは笑い声があがるという、なんとも怖い空間と時間を経験できました。まあ、これはよくてDVDスルーでしょうから、ご紹介することもなかったのかもしれません。テレ東あたりに期待しましょう。あと昆虫巨大化パニック映画といえが1954年の『放射能X/Them!』という傑作があって、これはゴジラのアメリカ版として僕は大好きなのですが、本作とは全く関係なかったです。『放射能X/Them!』は傑作ですのでぜひご覧になってください。以上。

追記:本作は『スタング』というタイトルで2016年1月5日より「未体験ゾーンの映画たち 2016」の一作としてヒューマントラストシネマ渋谷、1月30日より梅田シネ・リーブルで上映されることが決定しました。

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