追悼 レイ・マンザレク

 伝説的ロックバンド『DOORS/ドアーズ』のオルガニスト/キーボーディストのレイ・マンザレク氏が2013年5月20日、ドイツのローゼンハイムで肝外胆管ガンのため死去されました。享年74歳。
 1960年代後半を青春期に過ごした人々にとってドアーズと言えばジム・モリソンだし、ジム・モリソンもまたドーアズそのものだった。ただ80年代に生まれた私は当然リアルタイムのドアーズも知らないし、生まれたときにはジム・モリソンもとっくに死んでいた。それでも頭でっかちのロック好きで歌詞もろくにわからないのに中学生の時からドアーズを聴きはじめた私にとって、ドアーズとはジム・モリソンのファッションとレイ・マンザレクのサウンドが合わさったものだった。ドーアズの代表曲のほとんどはマンザレクの印象的なオルガンの音色で彩られている。『Light My Fire/ハートに火をつけて』の異様な盛り上がりはマンザレクのオルガンによるものだ。そして私の大好きな『Strange Days/ストレンジデイズ』は曲全体にマンザレクの特徴とも言える波に漂うような不思議な音色が敷き詰められている。ドアーズの特徴とも言える難解で病的な歌詞を無感動に歌うモリソンにマンザレクのオルガンの揺らぎが加わる。鬱屈した日々にこの音楽がかかれば狭い自分の部屋に危険な匂いが立ちこめるようだった。

 奇妙な日々が俺たちを取り囲んでいる
 奇妙な日々が俺たちを監視している
 奴らは俺たちのささやかな喜びまで粉々にしようとしている
 それでも俺たちは戯れ、新しい町を探すんだ
 
 よそ者の部屋にはよそ者の視線で溢れている
 聞こえてくる声が奴らのどんずまりの印だ
 女主人がにやついている
 客たちは罪から逃げるように眠っている
 

 なあ、俺が罪について語れば、お前は全部わかるんだぜ

 どんどんと社会が世の中にある“不謹慎”なものを責め立てては漂白していき、倫理や正義について語る嘘ならば平気でつくことが良しとされる今にあってもドアーズの音楽が世代を超えて聞き継がれることの意味は意外なほど深いように感じる。猥雑で不謹慎で反抗的。いつの時代も求められるものなのかもしれない。

マンザレク(左)とモリソン(右)

マンザレク(左)とモリソン(右)

 こういったドアーズのパブリックイメージとは裏腹に実際のマンザレクは知的に寛容な存在だったようだ。モリソンの描き方を巡って賛否が分かれるオリバー・ストーンの映画『The Doors/ドアーズ』でもマンザレク演じるカイル・マクラクランは暴走するモリソンを前にしても彼の才能だけは最後まで評価し続ける男として描かれている。また2010年に日本でも公開されたドキュメンタリー映画『ドアーズ/まぼろしの世界』は60年代後半からモリソンの死までの時代的な空気が当時の映像を基にしてとてもわかりやすく表現されている。特に大学時代のモリソンとレイの映像などドアーズが時代の熱狂に巻き込まれてスターダムにのし上がりそしてモリソンの死とともすべてが“まぼろし”へと変わっていく様を当時の映像のみで組み合わせた良作である。オリバー・ストーン版のように映画的メッセージを伝えようとする意思がそもそもないぶん、『ドアーズ/まぼろしの世界』は当時の匂いや興奮を我々の世代にも伝えてくれる。

レイ・マンザレク

レイ・マンザレク

 とにかく60年代後半から70年代初頭という非常に不思議な時代を作った一人の偉大なミュージシャンが亡くなってしまった。レイ・マンザレク氏、享年74歳、合掌。

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