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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

トム・ヒドルストン主演、J・G・バラード原作の『ハイ・ライズ/High-Rise』の予告編が公開

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トム・ヒドルストン主演でJ・G・バラードのSF小説を映画化する『ハイ・ライズ/High-Rise』の予告編が公開されました。階層化された高層マンション内部で暴かれていく異常性。ニュー・ウェーブによる現代を見通した予言の映像化。

『ハイ・ライズ/High-Rise』の予告編

スティーブン・スピルバーグ監督作『太陽の帝国』や、デイヴィッド・クローネンバーグ監督作『クラッシュ』の原作者としても有名なSF 作家J・G・バラードの代表作でもある『ハイ・ライズ/High-Rise』の映像化ということで、これは期待できます。熱心なバラードファンという訳ではないですが(熱心なバラードファンはパンク界隈に多いという印象)、特徴的な「そこに普通にある狂気」っぷりが短い映像からも伝わってきます。

『ハイ・ライズ/High-Rise』について

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原作は1975年に発表され、舞台は上層階に行けば行くほど経済的にも文化的にも豊かになる高層マンション。やがてそのマンションでは知らず知らずのうちに住民の階層化がはじまり、閉ざされた空間で住民らがそれぞれの異常性をむき出しにしていく、というもの。

デイヴィッド・クローネンバーグが映画化した『クラッシュ』とともにテクノロジー三部作のひとつとして知られる。

なお本作の監督はベン・ウィートリー。そして共演にはルーク・エヴァンズやジェレミー・アイアンズと尋常ならざる雰囲気を持った俳優たちがキャスティングされている。

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J・G・バラードとは?

英国を代表するSF作家。1930年、上海生まれ。「人間が探求しなければならないのは、外宇宙(アウター・スペース)ではなく、内宇宙(イナー・スペース)だ」として、SFの新しい波(ニュー・ウェーヴ)運動の先頭に立った。終末世界を独自の筆致で美しく描き出した「破滅三部作」と呼ばれる『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』、濃縮小説(コンデンスト・ノベル)と自ら名づけた手法で書き上げた短編を発表し、その思弁性に富んだ著作は多くの読者を魅了した 。

引用:BOOK著者紹介情報

J・G・バラードの小説は、特殊で異常な環境下での人間の心理をテーマにした作品が多く、その読感はシュールレアリズムの絵画に迷い込んだような感覚に近いです。そして主に異常な精神の模様を描きながらも、その筆は決して過剰な嫌悪感を生み出さず、奇妙な人間味にまで至るので読んでいる自分も決して正常な存在ではなく異常なことがよくわかります。

映画ファンにはクローネンバーグが『クラッシュ』を映画化し、同時に彼の最高傑作と言われる『結晶世界』の映像化にも取り組んでいたと説明すれば、何となくJ・G・バラードの病的な魅力が伝わるのかもしれません。あと映画評論家の柳下毅一郎さんもバラードの自伝を翻訳しているので、そのあたりからも猟奇的魅力が伝わるでしょう。

個人的にはノーランの『インセプション』の映像を見たとき、バラードからの影響を強く感じました。

なおJ・G・バラードは2009年に惜しまれながらも他界しました。

作品の設定上決して大柄な作品ではないでしょうが、イーサン・ホーク主演の『プリディスティネーション』のように良質なSF作品となると期待されます。

『ハイ・ライズ/High-Rise』は2016年3月18日に全英公開予定です。

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