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映画レビュー|『COP CAR コップ・カー』ケヴィン・ベーコン主演

実力を備えたラッキーマン、それが監督ジョン・ワッツ、、、。ケヴィン・ベーコンが主演、製作総指揮を務めたクライムサスペンス『 COP CAR コップ・カー』のレビューです。マーベル/ソニーで挑む新『スパイダーマン』の監督にも決定した新進気鋭のジョン・ワッツが描く、怖くて間抜けな警官による追跡劇。

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『COP CAR コップ・カー』

全米公開2015年8月7日/日本公開2016年4月9日/スリラー/88分

監督:ジョン・ワッツ

脚本:ジョン・ワッツ、クリストファー・フォード

出演:ケヴィン・ベーコン、ジェームズ・フリードソン=ジャクソン、ヘイズ・ウェルフォードほか

作品解説

ハリウッドを代表する実力派俳優ベーコンと、ホラー映画界の帝王イーライ・ロスに才能を認められたワッツ監督という、ふたりの才能がつくりあげた、恐怖とブラックな笑いも誘う予想外の展開を秘めた作品。

家出中の少年ふたりが、荒野で偶然1台のパトカーを見つける。車を走らせはしゃぐふたりだが、それは絶対に手を出してはならないパトカーだった。ふたりがトランクの中身に気づいたとき、謎の悪徳保安官(ベーコン)による恐ろしい追跡劇が始まる。

引用:eiga.com/news/20160110/3/


レビュー

ソニー・マーベルによる新『スパイダーマン』の監督にジョン・ワッツが決まった時は驚いた。というか彼の撮った作品は観たこともなく、それでもジョン・ワッツという名前を知っていたのは、彼が仲間たちと遊び半分で勝手に作った自称「イーライ・ロス製作総指揮」映画の予告編が本物のイーラン・ロスの目に止まり、結果、本当にホラー映画『クラウン』を監督することになった類い稀な「ラッキー・バスタード」だったからだ。そのラッキーなデビュー作の次にこの『COP CAR コップ・カー』を撮って、そして『スパイダーマン』である。成功の階段なんてものはあったもんじゃない。

でも本作『COP CAR コップ・カー』を観ればジョン・ワッツという若手監督がただの「ラッキー・バスタード」なんかじゃないことがよく分かる。意味もなく悔しくなるほどに、卓越した演出力を持った監督なのだということがこの一作からでも十分に伝わってくるのだ。

物語は驚くほどにシンプルだ。10歳のガキふたりが荒野の大自然のなかで「クソ、ビッチ、アスホール、ファック」と意味不明な遊びに興じている。すると一台の誰も乗っていないパトカーを発見する。恐る恐る近づくふたりだが、どうやらそこには誰もいない。そして調子に乗ったガキはそのパトカーで爆走をはじめる。

しかしそのパトカーの荷台には恐ろしいあるモノが隠されていた。パトカーを盗まれたと知った保安官は鬼となりパトカーを盗んだガキどもを追い込んでいく。

Copcar

本作『COP CAR コップ・カー』はふたりの少年の悪ふざけがキチガイ警官の怒りを買い地獄に追い詰められるというスリラーだ。イカれた警官をケヴィン・ベーコンが演じるとなればそれは怖い怖い映画になりそうなのは誰にも分かる。

一方で物語の細部はほとんどコメディと言っても差し支えがないほどに滑稽の連続だ。物語の発端そのものが間抜けだし、イカれた警官のケヴィン・ベーコンが真面目に怒れば怒るほどに、それはボケとなっていく。パトカーを盗んだのがふたりのガキだとわかったケヴィン・ベーコンは無線で少年たちに警告するのだが、その瞬間もガキたちはキャッキャ言いながら遊んでいるのだ。

追う側と追われる側の状況理解の差が生み出す滑稽さが、前半部の独特の雰囲気を作り出している。追う側が焦れば焦るほどにその状況を理解していない少年たちの無邪気さとの落差が、作品のスリラーとしての筋書きにナンセンスコメディの色合いを生み出していく。不条理であるが故の怖さとは、その滑稽さと紙一重なことが最初の50分ほどで完璧に演出されている。不条理な世界での恐怖とコメディの分水嶺の上を綱渡りするような作品なのだ。そして状況が少年たちにとって不条理であればあるほどに、その無邪気な視線に映るの大人たちの焦りは滑稽でしかない。

しかし状況は少年たちの目に映るだけでなく、やがて少年たち自身を巻き込むようになる。目に映っていた不条理が、そのまま自分たちの身に降りかかってくる。そして少年たちは自分たちの悪ふざけからはじまった不条理な物語を、自らの手で終わらせなければならなくなる。この物語の出口の設定が見事だった。

本編はたった80分そこそこのため、物語上の大きな捻りはほとんどない。登場人物も少なく、試そうとした事柄も限定的だ。しかし描かれるテーマは『大人は判ってくれない』同様に少年の視線からみた世界の不条理さと、それを認めた上での成長なのだ。一見するとB級テイストでイロモノ映画だと思わせておいて、最後の最後で作品としてしっかりとまとめる手腕はほとんど職人的だ。ケヴィン・ベーコンという俳優の名前と設定の奇抜さで目を引かせておきながら、作品として全く違う場所に着地させてしまう。

なるほどジョン・ワッツ監督、おそるべし。新『スパイダーマン』も期待せずにはいられないのだ。

『COP CAR コップ・カー』:

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ということで『COP CAR コップ・カー』のレビューでした。B級なんですが、「これが才能というヤツですか」ということをヒシヒシと感じることができる一作です。映画を観る前の期待とは全く違う感覚で満足させてくれる、なかなかお目にかかることのないサプライズな経験でした。とにかくラストが見事です。ケヴィン・ベーコンのテンパりまくりな演技も見ものです。オススメです。以上。

Summary
Review Date
Reviewed Item
COP CAR コップ・カー
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