新作『ゴジラ』公開までにゴジラ全28作を全て見直すと言うマラソン企画第四弾は東宝映画三大怪獣の2体がそろい踏みの『モスラ対ゴジラ』です。
『モスラ対ゴジラ』1964年公開
監督:本多猪四郎
特撮監督:円谷英二
脚本:関沢新一
出演:宝田明、星由里子、小泉博、藤木悠など
音楽:伊福部昭
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・ストーリー ※ネタバレあり
巨大台風が日本を襲った後、静之浦の浜辺に巨大な卵が漂着する。新聞記者の酒井(宝田明)と三浦博士(小泉博)がその卵の正体を研究しようと近づくも、すでに所有権は興行主の手に渡っていた。興行主の熊山は海岸近くの土地を買い占め、卵をふ化させて、巨大なテーマパークを作ろうと画策していたのだ。
そして酒井や三浦博士の前に、その卵を取り戻そうとする二人の小美人が現れる。掌ほどの大きさの彼女たちは、水爆実験によって甚大な被害を受けたインファント島からやってきており、その卵はインファンタ島に残された最後のモスラの卵だという。モスラの卵を取り戻すために奔走する酒井や三浦博士であったが、熊山は聞く耳を持たない。
そんな時、台風が襲った倉田浜で放射能が確認されたため調査に赴く酒井。そこに突如として干拓地からゴジラが出現。そのまま名古屋に上陸したゴジラは街を破壊する。ゴジラとアンギラスの闘いで壊滅状態になった名古屋はまたしてもゴジラに蹂躙されるのだった。
酒井はゴジラへの唯一の対抗手段がモスラであることを渋々ながらも認め、一路インファンタ島へと飛ぶ。そこで原住民らにゴジラに対抗するためにモスラを日本へ向かわせることを要請。一度は断れるも熱意が通じたのか、小美人やインファンタ島の長老も了解。しかしモスラはいつ寿命が終わってもおかしくない状態であった。
一方、日本ではゴジラの被害は拡大。そしてゴジラはモスラの卵がある静之浦に接近。ゴジラが卵に手をかけようかという時に、大空の向こうからモスラが飛来する。卵を守ろうと戦うモスラは、最後に残された力を振り絞りながらゴジラを卵から遠ざけ、毒鱗粉を撒き散らしながら必死に戦うも、ゴジラにとどめを刺す前に力つきてしまう。万事休すかと思われた時、モスラの卵は発光しはじめ、やがて中から二匹のモスラの幼虫がかえる。
そして避難に遅れ小学生らが取り残された孤島を狙うようにゴジラが接近をはじめる中、二体の幼虫のモスラはゴジラへの反撃を開始するのだった!!
・感想
東宝三大怪獣の内のゴジラとモスラが雌雄を決する怪獣バトル映画の金字塔。前作『キングコング対ゴジラ』に引き続き、ゴジラは引き立て役扱いに徹するも、そのため破壊者としてのキャラが立っている。人類の味方のモスラとの対比からゴジラが徹底した悪役となっているところも評価したい。
また本作ではオリジナルゴジラとは違った形で水爆実験や放射能問題への厳しい態度を表明している。オリジナルではゴジラそのものが放射能の破壊性を暗喩していたのに対し、本作では水爆実験の被害者であるインファンタ島の住民による怒りの文明批判が行われるシーンがある。つまりこの映画では、水爆という「悪魔の火」を炊いた文明側の人間がその驚異を持て余すようになり助けを求めた先が、水爆の被害者だったという皮肉を描いているのだ。
そして本作でゴジラが最初に蹂躙する街が四日市であることも重要だ。高度成長期を迎え置き去りにされる公害問題への怒りとしてゴジラはコンビナートを破壊し尽くす。ここでゴジラは日本にとっての驚異であると同時に、日本で無視されていく弱者の怒りの反映ともなった。オリジナルゴジラが被爆国日本を背負っていたのに対し、本作では日本の中の弱者を背負っている。ここにゴジラは、敗戦という戦後的メタファーから、高度成長のために忘れ去られていく戦後的メタファーへと変わっていく。少なくともこの段階ではまだゴジラは日本の戦後事情と合わせ鏡のようにして現れていたのだ。
それでも本作はやはりモスラ抜きには語れない。1961年の『モスラ』の続編という色合いが強いため、初モスラが本作だと少しぽかーんとしてしまうかもしれない。まず小美人の登場にもみんなあまり驚かない。掌サイズの妖精が表れて訳の分からん歌を絶妙なハーモニーで熱唱されれば、普通は卒倒する。でもその辺は前作で妖精ショーとして登場しているので免疫がついているのだろう。
そしてモスラの健気さには心打たれる。卵を守ろうとするモスラの姿は感動的だし、卵からふ化した二体の幼虫モスラはどうも気持ち悪い。最近の日本では反意する形容詞『ダサ・カッコいい』や『ブサ・カワいい』など日常的使われるようになっているが、モスラは50年前から『キモ・カッコいい』である。一貫して『キモ・カッコいい』なモスラの戦略的な好感度操作には個人的に思うところはあるが、見習いたいとも思う次第である。
ということで怪獣ブームの夜明けを知らせる『モスラ対ゴジラ』も是非ご覧下さい。
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