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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

【ゴジラ第25作】『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』について

2014年版『ゴジラ』の公開を記念し、これまでの東宝『ゴジラ』シリーズ全28作を見直すというマラソン企画、第25弾は『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』です。平成ガメラシリーズの金子修介監督を迎えた本作では、同時上映が『とっとこハム太郎』でありながらもシリーズ中でトップクラスの破壊描写を実現。怪獣映画でありながら怪奇映画でもあるという不思議な作品となりました。

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『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』2001年公開

監督:金子修介

特技監督:神谷誠

脚本:長谷川圭一、横谷昌宏、金子修介

出演:新山千春、宇崎竜童、小林正寛、天本英世、佐野史郎など

音楽:大谷幸

・ストーリー

ゴジラが東京を壊滅させてから50年経った頃、グアム島沖でアメリカの原子力原潜が突如消息を絶つ。捜索に参加した防衛軍の特殊潜水艇は無惨にも粉々になっていた原潜の残骸の近くで、背びれを青白く光らせながら移動する巨大な生物を発見する。これはゴジラなのか、と防衛軍内部に緊張が走った。

一方そのころ日本では奇怪な事件が多発していた。新潟では傍若無人な振る舞いを繰り返す暴走族がトンネルに生き埋めにされ、鹿児島の池田湖付近では羽目を外した挙げ句に犬を池に沈めようとした大学生が奇妙な巨大生物に殺される事例が発生。テレビ番組のリポーターの立花由里(新山千春)はこの一連の事件を調べるにあたって、それらが『護国聖獣伝記』に記されている3体の聖獣の住処と符合することに気がつく。そしてその取材の過程で、伝記の著者である伊佐山教授と出会い、ゴジラが日本を襲おうとしており、日本を守るためには国の守り神である3体の聖獣が復活することが必要だと告げる。そしてそこでゴジラとはただの生物ではなく、太平洋戦争で死んだ人々の怨念が宿っているとも告げられる。

そしてとうとう日本にゴジラが上陸。そしてそれにあわせて地底怪獣バラゴンも復活し、両者は箱根付近で合いまみえるも巨大なゴジラの前にバラゴンは小さすぎた。圧倒的なゴジラの強さも前にバラゴンは何も出来ずに敗北する。

そして池田湖では水面に巨大な眉が浮上、富士の樹海の地底からギドラが目覚めようとしていた。

ゴジラの迎撃に向かう防衛軍だったが全く歯が立たない。由里はゴジラ迎撃の一部始終を現場から生中継で伝える。そこで復活したモスラやギドラがゴジラと戦う存在であることが示唆され、防衛軍幹部の由里の父親は横浜に配備された首都防衛戦の艦隊の指揮を取る。

そして横浜で人類は、モスラとキングギドラととも日本を守るため、ゴジラとの決戦に挑むのだった。

・感想

平成ガメラシリーズで際立った仕事をしてみせた金子修介監督がガメラでは実現しなかった防衛軍の戦闘機の墜落シーンなどを本作で実現するなど見所は多いものの、個人的にはどうも気に入らない映画となってしまった。まず本作では前作や他のゴジラシリーズを完全になかったことにしており、前作から時間も空いていないためこの設定には興ざめした。前半にはハリウッドで98年に作られたエメリッヒ版『ゴジラ』への言及もあるなどサービスには事欠かないのだが、最も重要な『ゴジラ』にまつわる部分で強引さが目立ってしまっている。

まず怪獣を国の守り神とする設定には萎える。54年のゴジラで描かれるように怪獣とは人類など意に介さない存在であってほしいのだが、本作のストーリーラインの中心には常に『日本国』があり、防衛軍の存在意義がやたらと強調されている。これは左巻きのマスコミから随分と批判された。しかもゴジラにまでも大戦で散った英霊たちの怨念の集合体だとする設定を施したあげく、フランケンシュタインと死闘を演じたバラゴンは捨て駒扱いである。川本三郎氏のゴジラ英霊説をストーリーに組み込もうとしたのだろうが、それはあくまでゴジラを理解する上での仮説であり手法であって、物語のコアになるべきものだとは思わない。

見所のはずの防衛軍の闘いぶりも、やたらとヒロイックな盛り上げかたをするために逆に見ていて恥ずかしくなる。しかも新山千春のセリフ回しが早口で滑舌もよくないため非常に聞き辛く、父親役の宇崎竜童は逆にゆっくりとしたセリフ口調なため、親子のリアリティーが全くない。

そして何より本作は同時上映が『とっとこハム太郎』であり、配給側のゴジラの扱いに明らかな迷いが感じられる。本作は過去のゴジラシリーズのなかでも特徴的なまでに、怪獣による殺戮現場がしっかりと撮影されており、こんなのハム太郎狙いの幼稚園児が見れば軽いトラウマになる。温水洋一は踏みつぶされ、篠原ともえは吹き飛ばされる。無駄にキャストが豪華なことがサービスだと思っているのだろうが、観ている側の注意はその度に物語から遠ざかる。カメオにもやり方があるのだ。

ということで個人的にはがっかり作品でした。もちろんそこは金子修介監督ですので、見所はしっかりとあります。特にガメラでは自衛隊から却下された、戦闘機が撃墜され民家に墜落するというシーンは2001年当時では信じられないような高いクオリティでした。また『ガメラ』シリーズとの関係を窺わせるキャスティングなど、当時は本気で『ゴジラ対ガメラ』が実現するのではと期待もされました。

色々とファンのなかでも評価の分かれる作品ですが、とにかくハム太郎との同時上映は止めてくれと強く思いました。

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