ハリウッド版『ゴジラ』が7月25日に公開されるのを記念に、これまでの東宝ゴジラシリーズ全28作を見直そうというマラソン企画第20弾は『ゴジラ VS メカゴジラ』です。ゴジラ対人間のガチンコ対決がここに実現。平成シリーズの最高傑作に挙げる人もいる作品です。
『ゴジラ VS メカゴジラ』1993年製作
監督:大河原孝夫
特技監督:川北紘一
脚本:田中友幸
出演:高嶋政宏、佐野量子、小林恵美、原田大二郎、宮川一朗太、中尾彬、佐原健二など
音楽:伊福部昭
・ストーリー
度重なるゴジラ被害に対処すべく国連は対ゴジラ部隊「Gフォース」を設置し、対ゴジラ戦闘マシーンのメカゴジラの開発に取り組んでいた。
その頃、ベーリング海のアドノア島にて翼竜の化石が発見され、そこには巨大な卵も残されていた。研究チームが卵の分析をしている夜、突如巨大翼竜ラドンが飛来。加えて、海からはゴジラが出現し、2体の怪獣は激しい戦闘を繰り広げる。
隙を見て脱出したチームは卵を研究所に持ち帰ることに成功。そしてGフォースの隊員であり翼竜プテラノドンの大ファンの青木がこっそりと研究室に潜入し、ラボにあった植物の化石をこっそりと持ち帰ってしまう。そして青木の同僚で超能力を持つ三枝は、その化石から微かな不思議な波動を関知する。その波動を音楽として再現したものを青木らが研究所に持ち込み再生すると、それを聴いた卵が突然にふ化し、そこからゴジラザウルスの幼獣が現れた。
ゴジラとは違って大人しい雑食性のゴジラザウルスは「ベビー」と名付けられも、その赤ん坊を取り戻すためかゴジラが四日市に上陸。ゴジラ撃退のためメカゴジラが出撃。最新技術によってゴジラを追い詰めるも、ゴジラの巨大なパワーのために制御不能になり、ゴジラはそのまま研究所のある京都まで進撃する。しかしベビーを地下室に移されたために感知できなくなり、ゴジラは大阪湾に戻っていく。
ゴジラがベビーを探していることを知ったGフォースはベビーを囮にする作戦に出るも、ベビーの入ったコンテナをラドンによって奪取され、そのコンテナは千葉の幕張に落とされる。ゴジラより先にラドンと戦うことになったメカゴジラは、青木が操縦する飛行型対ゴジラマシーン・ガルーダとともに撃退に成功するも、そのタイミングでゴジラが登場。満身創痍のメカゴジラはゴジラに勝てるのか!そしてベビーはどうなるのか!?
・感想
まず本作が作られた1993年にはスピルバーグの『ジュラシック・パーク』が公開され、そのCGによる恐竜描写に誰もが度肝を抜かれました。そんななかゴジラはいいにせよ、ベビーの造形の安っぽさは際立ちます。加えて子供恐竜との話では安達祐実の『REX 恐竜物語』も公開されており、本作のストーリーは二番煎じ、三番煎じの印象が拭いきれません。脚本に多くを詰め込もうとしすぎて話が落ち着かないのが残念。
しかし人類対ゴジラという闘いから逃げなかったことは評価に値する。これまではどうしてもスケール感を作り出すことが難しいことから、なかなかゴジラと人類の正面対決は描かれてこなかった。しかし93年という時代もあって人類の対ゴジラ技術を描くことができるようになったからか、メカゴジラを人類の叡智に置き換えることで怪獣の力を借りること無くしっかりとゴジラと戦う姿を描いている。
またゴジラによりる都市破壊描写もレベルは高く、特に京都のゴジラ進撃のシーンはとても素晴らしい。また清水寺や東寺などの世界遺産に手を出さないゴジラの姿も好感が持てる。
また前作『ゴジラ VS モスラ』に比べるとキャスティングもしっくりとくる。ゴジラと高嶋家の相性はもっと評価されてもいいだろう。日本人キャストが話す英語もしっかりとしている。
それにしても久々にゴジラシリーズに登場したラドンだが、ここでも噛ませ犬感がハンパない。もう少しラドンに花を持たせてほしかった。いつからラドンは自己犠牲怪獣になってしまったのか。それにメカゴジラももっと色々な仕掛けがあってもよかった。あと中尾彬のせいでGフォースが悪の部隊のように映ってしまうのはどういうことだろうか。
色々と突っ込みが入る作品ではあるが、話のテンポがいいことで最後まで観られる作りにはなっている。平成シリーズのなかでは上位に入る充実度の作品なので、観て損はないと思う。たぶん。
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数々の日本の名所をぶち壊してきてきたゴジラなんだから世界遺産だろうがなんだろうがぶち壊してほしかった。そのほうがすっきりするし、好感が持てる。大体人間を歯牙にもかけない、人間を超えた怪獣なんだから人間の世界の、人間の決めた世界遺産なんてゴジラは知ったこっちゃないんだからぶち壊した方がゴジラらしいと思う。