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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

【追悼レナード・コーエン】映画に深みと苦味を与えてくれたサウンドトラックを振り返る

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82歳で逝った詩人歌手レナード・コーエンを追悼して、数々の映画に深みと苦味を与えてくれた彼の名曲を振り返ります。ファスビンダーからザック・スナイダーまで。

ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞し、そしてドナルド・トランプが次期大統領に確定したその翌日、詩人でシンガーソングライターのレナード・コーエンが82歳で亡くなりました。

彼の名曲たちが多くのミュージシャンにカバーされていることと同じように、彼の名曲たちは多くの映画にも登場しています。

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーからザック・スナイダーまで、幅広い映画人からも愛された彼の名曲でその死を追悼します。

Bird on the Wire -『自由の代償』ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作

レナード・コーエンの代表作のひとつ「Bird on the Wire」は多くの映画に登場する曲で、ジョン・バダム監督作でメル・ギブソンとゴールディ・ホーン共演のタイトルもずばり『バード・オン・ワイヤー』にも使用されていますが、この曲はライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『自由の代償』でも流れます。


The Future – 『ナチュラル・ボーン・キラーズ』

映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』にはレナード・コーエンの曲は『The Future』以外にも『Waiting for the Miracle』なども使用されているが、やはりエンディングで流れるこの曲は印象的。

詩を朗読するような曲でありその歌詞は極めて抽象的だが、人知れず破滅という未来へと突き進んでいく「何か」の絶望を歌っているよう。彼の死がトランプ大統領誕生の翌日ということに絡めて、映画評論家の町山智浩氏が早くも対訳を公開しています。


Dance Me to the End of Love – 『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』キャサリン・ビグロー監督作

映画史上屈指の名曲揃いと評価されるキャサリン・ビグロー監督作『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』でもレナード・コーエンの「Dance Me to the End of Love」が使用されている。破滅的で倒錯的な作品に異常にマッチしている。


Suzanne – 『奇跡の海』ラース・フォン・トリアー監督作

そしてレナード・コーエンの代表曲でもある「Susanne」はラース・フォン・トリアー監督作『奇跡の海』でも使用されている。触れられるようで触れられない微妙な愛情の距離感さえも、レナード・コーエンはほとんど完璧に描ききっています。

この曲は他の映画にもよく登場し、近年ではジャン=マルク・ヴァレ監督作mリース・ウェザースプーン主演の『わたしに会うまでの1600キロ』でも使われている。


Hallelujah – 『ウォッチマン』ザック・スナイダー監督作

レナード・コーエンと言えば「Hallelujah/ハレルヤ」を外せません。そしてザック・スナイダー監督作『ウォッチマン』には「First We Take Manhattan」とともに使用されています。一般的にはジェフ・バックリーのカバーの方が有名だし、僕もそれを経由してレナード・コーエンに行き着いたのだが、やはりオリジナルの退廃感こそが歌詞の解釈に深みを与えていると思う。彼の歌詞はとてもシンプルなシンタックスを使用していながら、ひとつの理解に行き着いてもまた別の解釈に揺らいでしまう深みがある。

ということで今回ご紹介したリストはごく一部なのだが、それでもファスビンダーからザック・スナイダーまで、幅広いジャンルの映画のなかで印象的な使われ方をしていることからもレナード・コーエンの懐の深さが伺える。

日本ではトム・ウェイツは有名でも、案外レナード・コーエンをしっかりと聴いたことのない人が多いような気もするが、海外ではほとんど伝説的なシンガーソングライターとして尊敬されており、悲しいことだが訃報を機に是非とも一聴してほしい。

彼の死に多くの著名人が哀悼の意を表明しており、なかでも印象的だったのでラッセル・クロウの言葉で締めたいと思います。

親愛なるレナード・コーエン。あなたがくれた、静かな夜、考察、物の見方、苦笑い、そして真実に感謝する。

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