【映画】『ウルフ・オブ・ウォールストリート』レビュー

マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の話題作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のレビューです。スコセッシ監督作としては久しぶりのコメディー映画でありつつも『タクシー・ドライバー』や『グッドフェローズ』に通じるような、反社会的、反倫理的登場人物らによる反省なんて糞食らえな最高映画でした。日本公開は2014年1月31日。ちなみに本作中に出てくる「F◯CK」の数は映画史上最多の506回!

・ストーリー

 一攫千金のアメリカンドリームを手に入れるためにウォールストリートにやってきた弱冠22歳のジョーダン(レオナルド・ディカプリオ)。学歴もコネもない彼は、〈金こそが全て〉という思想を頼りにして、金、ドラッグ、セックス、全ての快楽に取り憑かれ、大金持ちに成り上がっていく。倫理や良識を笑い飛ばしながら、周囲を熱狂の渦に巻き込む〈ウォールストリートの狼〉の姿を極上のエンターテイメントとして巨匠スコセッシが描く問題作。

・レビュー

オリバー・ストーン監督作『ウォール街』に登場する強欲の象徴ゴードン・ゲッコー。2010年の続編ではなぜか殊勝な役回りを演じていたが、そもそもは肥大化した資本主義の醜さと崩壊を象徴する存在だった。オリバー・ストーンはその映画のなかで〈ゲッコー〉的なものの無価値さを説こうと意図したのだが、実際には映画公開後に〈ゲッコー〉に憧れる若者を大量に排出してしまう結果となった。映画の意図とは離れてゴードン・ゲッコーはアンチ・ヒーローとして今なお株式の世界である種の崇拝の対象にもなっている。

本作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のストーリーも結局のところは、拝金主義に取り憑かれた男の転落物語を描いている。主人公は年収49億円という途方もない金を手にし、ドラッグ、女と望む物は全て手に入れながらも、最終的にはFBIに逮捕され刑務所に送られてしまう。表向きは因果応報の勧善懲悪ストーリー。主演のディカプリオも東証取引所での公開セレモニーでのインタビューで「本作は違法な株取引の末路を描いている」と語っていた。

しかしやはりスコセッシは凄かった。そもそもスコセッシ作品を知っている人間なら、彼がそんな教条的な映画を撮る訳がないことは知っている。スコセッシ映画の真骨頂とは、どうしようもないダメ男への共感と憧れを監督自身の自己肯定の延長として臆面もなく描くことにある。本作でディカプリオ演じる主人公は浮気を重ね不法行為に手を染めた結果としての自分の非を責め立てる嫁を、容赦なく殴りつけるシーンがある。横っ面を叩くだけではなく、腰のすわったボディーブローまで見舞うのだ。本来なら衝撃シーンになるはずが、スコセッシはそれまでひたすら続く馬鹿騒ぎの一部として、しれーと描く。スコセッシ自身が度重なる離婚劇とDV問題を起こしており、そういった背景を知って観ると、齢70歳を超えても全然反省の姿が見えない監督自身の姿が主人公の描き方に透けて見える。

本作は18歳未満の鑑賞が禁止されている成人指定を受けている。劇中ではフィクション映画としては最多と言われる506回のF◯CKが飛び交い、ドラッグやセックス描写が全編にわたって描かれている。いわゆる〈タイタニック〉的ディカプリオ様を観たくて劇場に入ると気まずい思いをすること間違いなし。

この映画を反倫理的といって嫌う人もいるだろう。一部の報道では本作を「金権主義への警鐘」として捕らえているところもあるが、大きな間違いだ。彼は、資本主義がどうとかそんなことを考えて映画を撮っていない。あくまで面白い映画を撮ることしか考えていない。オリバー・ストーンのように映画にイデオロギーを持ち込みはしない。仮に持ち込んだとしてもそれは「イデオロギーは持ち込まない」というイデオロギーであり、そういった姿勢の監督が撮った作品を、反倫理的とか反社会的とか言って批判するのは、寿司屋の大将に軍艦巻きは帝国主義的だからもう握るな、と迫るようなものだ。

前作『ヒューゴの不思議な発明』でキャリア後半になってやっと子供と観れる映画を撮って話題となったスコセッシ。その次の作品には絶対に子供とは観れない過激な極上エンターテイメント映画を撮るスコセッシ。個人的にはスコセッシの帰還に最大の拍手を送りたい。

なお、オスカーの主演男優賞はこの映画の前半にも登場する「ダラス・バイヤーズクラブ」のマシュー・マコノフィーが有力と言われているが、今回のディカプリオの演技はとても素晴らしかった。激やせのマコノフィーが涎ダラダラのディカプリオか。賞の行方にも注目したい。とにかく肩の凝る正義感は劇場の外に置いて、映画という非現実の世界を笑い、そして楽しみましょう。

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