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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

【ゴジラ第三作】1962年『キングコング対ゴジラ』について

新作ゴジラ公開までにゴジラ全28作を見直そうとする

マラソン企画第三弾は『キングコング対ゴジラ』です。

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『キングコング対ゴジラ』1962年公開

監督:本多猪四郎

特撮監督:円谷英二

出演:高島忠夫、佐原健二、藤木悠、有島一郎、浜美枝、若林映子、平田昭彦など

音楽:伊福部昭

・ストーリー ※ネタバレあり!

パシフィック製薬がシポンサーを務めるテレビ番組「世界驚異シリーズ」の視聴率テコ入れのために、宣伝部長の多胡(有島一郎)は南太平洋に潜む謎の巨大魔人を見つけるために、桜井(高島忠夫)と古江(藤木悠)の二人を現地に派遣する。

時を同じく、北極海を調査していた潜水艦が氷塊のなかに不思議な光源を発見し、それに接近するとそこに眠っていたゴジラの襲撃を受けてしまう。

目覚めたゴジラは帰巣本能から日本本土に上陸することが予想される中、南太平洋の島に上陸した桜井と古江は、原住民との接触に成功し、ある夜に出現した巨大タコに襲撃を受けている最中に伝説の巨大魔人キングコングに遭遇する。巨大タコを撃退したキングコングは村にあった特別な木の実で作られた果汁を飲み干し、島民たちの祈りの歌を聴くとそのまま深い眠りにつく。それを機にキングコングの捕獲に成功する。

一方ゴジラは北海道沖で貨物船を沈没させ、そのまま南下。キングコングは日本へ輸送中。そこで多胡部長は「キングコング対ゴジラ」という仰天プランを掲げる。

しかし輸送中のキングコングが目を覚ましてしまい、そのまま海洋上を北上。そしてちょうど南下を続けるゴジラと中禅寺湖で遭遇。奇しくもここで「キングコング対ゴジラ」という世紀の一戦の火蓋が切って落とされた。投石などで果敢に攻めるキングコングもゴジラの放射熱線にはかなわず、初戦はキングコングの敗走という結果になる。

しかしゴジラ対策として配備されていた高圧電線に触れたキングコングはそこで体に電気を溜め込む帯電体質を獲得し、首都圏まで侵入。国会議事堂をよじ登っているところにキングコングの島から持参していた睡眠効果のある果汁を麻酔弾として発射し、桜井の演奏するドラムによってキングコングは再度眠りにつく。

ゴジラに打つ手を持たなかった自衛隊だが、眠ったキングコングをゴジラに引き合わせることで、ゴジラの対抗手段に仕立てようとする。

そして首都圏を避けるように南下していたゴジラとキングコングは富士山麓で再び合いまみえる。古代怪獣ゴジラと伝説の巨大魔人キングコングは富士山から熱海へと激闘を繰り広げる!!

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・感想

前作『ゴジラの逆襲』から7年ぶりに公開された本作は観客動員1255万人という大ヒットを記録。日本代表のゴジラとアメリカ代表のキングコングの闘いということで、大いに注目を浴びた。この映画は当時の日本におけるアメリカへの感情を強く反映しているといわれており、結末を含めて戦後復興期のアメリカへ追いつけ追い越せという機運を感じることができるが、そういった難しい話はここではしない。

やはりこの映画がゴジラ史的に重要な理由は、これまで以上にコメディ要素が強くなると同時に、戦中戦後の人類の“業”としてのゴジラの要素が薄くなっていることだ。その後に続くゴジラ=娯楽映画という印象はここから出発する。

そのことで全二作が持っていた社会批判的な意味をずっと薄れてしまうも、カラー映画ということも重なり一気にゴジラは人気コンテンツへと押し上げられる。十分な予算があるために特撮もなかなか気合いが入っている。

全編を通して怪獣の闘いが見られるので特撮ファンにはたまらないだろう。特に前半部のキングコング対大ダコ、そして前景としての人間、という構図はハリーハウゼンの映画を彷彿とさせる素晴らしいもの。ちなみにタコは本物と模型を使い分けておりオドロオドロしい。

ただしキングコング対ゴジラの最終決戦に関しては、評価は真っ二つに分かれるだろう。特に先輩怪物キングコングを邪険には扱えない体育会気質なゴジラには正直がっかりもする。大人の事情とは言え、あの終わり方はいくらなんでもひどい。

しかし脚本として初めて関沢新一が関わっており、高島忠夫と藤木悠の弥次喜多コンビの掛け合いにはきっと当時の観客は大爆笑していたのだろうと思うし、多胡部長の秀でた個性は今でも人気が高い。そして一作目で芹沢博士を演じた平田昭彦が本作でも重沢博士役で登場しており、いくつかの名言を残している。特に帯電体質を得たキングコングを評する場面は最高だ。

「スイスにあった実例なんだがね。ある郵便局員が落雷に打たれて運良く助かったんだが、その後、彼の体が蓄電池みたいになったことがあるんだ」

マジかよ、博士!!そいつスゲーな!

このシーンが一番好きなんです。

ということでカラーになったことで生まれ変わったゴジラ。好き嫌いの分かれ目になった作品だと思いますが、なかなか楽しめます。また伊福部昭の音楽も素晴らしいし、オープニングシーンもカッコいいです。

是非ご覧下さい。

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COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. またまたお邪魔します。
    幼少の折、母親に連れられて春休み「東宝チャンピオン祭り」の目玉作品として本作をスクリーンで堪能しました。後から振り返ると、かの悪名高き短縮版だったのですけどね。この三ヶ月前の正月映画ジョン・ギラーミン監督作品「キングコング」にあやかった上映なんだと思いました。
    「ゴジラ対メカゴジラ」からこの世界にエントリした子どもとしては、正義の味方(として児童本等で刷り込まれていた)ゴジラがなぜ劇中でかように嫌われるのか、不思議でなりませんでした。ゴジラが来ると不機嫌なおじさん(タコ宣伝部長)が、コングか来たらナゼご機嫌??
    電車と絡むコングはオリジナル1933へのオマージュかな。そして薄暮の団地の明かりを見ると、本作を思い出さずに入られません。いつか熱海城を訪れてみたい。その際は天守を仰いでニヤつくこと必至でしょう。軽快なプロット展開、伊福部氏のサウンドも合わせ、シリーズマイベストです。
    一番のお気に入りのセリフは「ママ、ゴジラ見に行こうよ」「馬鹿ね、動物園に行くんじゃありませんッ」

    他にも「我が社が莫大な宣伝費を掛けたキングコングはどーなってるの?」「は、未だお見えになっておりません」
    「切手のキ、吉野のヨ、田んぼのタに濁点が…」「両雄並び立たず、双方共倒れ」…あぁ、止まらない。

    いつかスクリーンで「サラリーマン弥次喜多道中」との二本立てを見てみたいですね。
    高島・藤木・有島トリオよ永遠なれ。

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