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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

アカデミー賞での司会クリス・ロックの「ブラック・ジョーク」!

「オスカーは真っ白」で揺れるアカデミー賞の司会を担当した黒人のクリス・ロックが授賞式で見せた「ブラック・ジョーク」を翻訳して紹介します。これらがただのガス抜きにならないことを祈ります。

Oscar jokes

クリス・ロックのオスカー「ブラック・ジョーク」集

(オープニングの映像を見て)この映像だけで15人は黒人を見つけたぞ。

私は白人選定賞(White People’s Choice Awards)とも呼ばれるアカデミー賞の授賞式にいます!

もし司会者もノミネート制だったなら、ぼく(黒人)はここに呼ばれず、またニール・パトリック・ハリスが司会をしていただろうね。

黒人のノミネートなし。そのせいでみんな「クリス、君もボイコットすべきだ」、「クリス、出席するな」と言うんだけど失業者に言われても説得力はないよ。僕もキャンセルすることを考えたし、とても辛い決断だった。でもどちらにせよアカデミー賞は開催されるんだ。僕がボイコットしたからってアカデミー賞はキャンセルされない。そんなことしたって僕が仕事を失って代わりにケヴィン・ハート(黒人コメディアン)がここに立っているだけだからね。

なぜ僕らが今回のオスカーに抗議するのか? この第88回アカデミー賞と同じように過去71回のアカデミー賞でも黒人はノミネートされていない。50年代、60年代も同様に例外はシドニー・ポワチエくらい。でも黒人はその時は抗議していない。なぜかって? なぜなら他に抗議すべき問題が山ほどあったからさ。レイプされたりリンチされたりするのに忙しく、誰が撮影賞を受賞するのかなんてどうでもよかったんだ。ぼくらのおばあさんが木に吊るされているのに、誰が最優秀外国ドキュメンタリー短編賞なんて気にするんだ。

みんな本当に怒っている。ジャイダ・ピンケット・スミス(ウィル・スミスの妻)もだ。彼女は来場しないよ。というか彼女はテレビに出ていたっけ?ジェイダのオスカーボイコットは、ぼくがリアーナのパンティを拒否するみたいなもんさ。お呼びでないんだ。

「ハリウッドは人種差別集団?」、「それって十字架を燃やす(バーニング・クロス=人種差別の象徴)ような人種差別なの?」それとは種類が全然違う。ある夜、ぼくはバラク・オバマのパーティに参加していた。ここにいる大勢も参加していたね。そこにはたった4人の黒人がいた。ぼくとクインシー・ジョーンズとラッセル・シモンズとクエストラブだ。そこではみんな大統領と写真を撮ってたよ。そしてぼくは「大統領、ここにいる脚本家やプロデューサーや俳優たちは黒人を雇ったりしないんです、、、そして彼らは地球上で最も気のいい白人たちですよ、チーズ」こんな感じだった。そうさ、ハリウッドは人種差別的さ。ハリウッドでの差別とは社交的なんだ。

怒るのも無理はない。ウィル・スミスがノミネートされないのは不公平だ。一方で彼が『ワイルド・ワイルド・ウエスト』で2千万ドルも出演料をもらったことも同じように不公平だ。でも今年から状況は少しは変わるだろう。警官に射殺された黒人たちの思いは劇場に向かうんだ。

今年は黒人の『ロッキー』が誕生した。『クリード』という名前だけどもぼくは『ブラック・ロッキー』と呼ぶ。これは本当に信じられない出来事で、なぜならロッキーというのは白人だって黒人のようなアスリートになれることを描いた作品なんだ。まあSFみたいなものだったんだ。これに比べれば『スターウォーズ』なんて可愛いもんさ。

もし毎年黒人がノミネートされないと気が済まないなら黒人専用のカテゴリーを作るべきだ。すでに男女でカテゴリーを分けているだろう。演技において男も女も関係ないのに分けられてるじゃないか。そんな必然なんてどこにもないのに。陸上競技のトラックとフィールドのように違いがあるわけじゃないんだ。いちいち分別する必要なんてない。ロバート・デニーロがメリル・ストリープが受賞するために手を抜くなんてこともないんだ。だからもし黒人が毎年ノミネートされたければ黒人枠を作ればいい。最優秀黒人友達賞みたいにね。ワンダ・サイクスが圧勝するだろうけど。

ぼくらは機会が欲しいだけなんだ。黒人にも同じ機会が与えられることだ。一回ぽっきりとかじゃなくて。レオ(ディカプリオ)は毎年素晴らしい作品に出演している。ジェイミー・フォックスだって素晴らしい俳優さ。『レイ』を観ただろう。素晴らしすぎて病院が思わずレイ・チャールズの生命維持装置を外したくらいなんだから。

今年のもうひとつの大きな変化は誰も女性に向かって「どこのドレスを着ているの?」と聞かないことだ。でももっと彼女たちに注目しなきゃ。何でもかんでも性差別や人種差別に繋げるのは良くない。男だって服を着ているんだから同じ質問をすればいいんだ。ジョージ・クルーニーがライム・グリーンのタキシードを着ていて、裾からケツが顔を出していても突撃するんだ、「ジョージ、あんた何を着ているんだ?」ってね。

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ということでクリス・ロックのオスカーブラック・ジョーク集でした。個人的には今年のオスカーには冷めてしまっています。作品賞ノミネート作品は全部見ましたが、やはり人種的には偏りがあるように思いました。この問題に対する反論には「ただ黒人がいい作品に出ていないだけだろう」というものがありますが、クリス・ロックが言うようにマイノリティにも均等に機会が与えられていないハリウッドの現状が問題なんです。

同じことは東洋人にも言えます。ジム・スタージェス主演『ラスベガスをぶっつぶせ』(2008)はアメリカの学生たちがブラックジャックの裏技を駆使して大儲けするという実話を映画化した作品で白人をメインキャストにして作られましたが、実際には日系や東洋人、インド人が主体のチームでした。面白い企画があっても白人用作品に作り変えられてしまうハリウッドの構造は何も変わっていません。

なぜレオナルド・ディカプリオは毎年のようにアカデミー賞に関われるのか。それはただ彼が優れた俳優であるだけでなく「白人」だからでもあるのです。ディカプリオのように優れた俳優でも白人でなければ大役のオファーが毎年来ることはおそらくないでしょう。

そんな訳で今回の一件でオスカーが変わることを期待します。

・第88回2016年度アカデミー賞、5つのサプライズ!

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 8 )
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  1. 正しくは「一方で彼が『ワイルド・ワイルド・ウエスト』で2千万ドルも出演料をもらったことも同じように不公平だ。」ね。

  2. アカデミー賞をボイコットすると色んな人が騒いでいたという話で、「JLo(ジェニファーロペス)が授賞式に行かないと言ってたけど、これってボクが◯◯(聞き取れませんでしたが)の受賞式に行かないって言ってるようなもんだよね。招待もされてない授賞式。」と、ジェイロの話の方が大きかった気がします。

    「トラックとフィールド」は陸上競技という意味です。陸上競技の様にカテゴリーが男女に分かれている必要なんてないだろ?と言っています。

    • コメントありがとうございます。
      ジェニファーロペスの話もありましたが、今回のアカデミー賞ではウィル・スミス夫妻がボイコットしたことが象徴的だったし、Jloは歌手枠(映画にも出てますが)ということで割愛しました。
      トラックとフィールドは陸上競技のカテゴリーです。訳し方が分かりにくかったですね。

  3. クリス・ロックがアジア人のステレオタイプみたいなこと言ってて
    ちょっとがっかりしました。(アジア系の子供が3人登場する場面で)
    www.washingtonpost.com/news/arts-and-entertainment/wp/2016/02/29/the-oscars-were-all-about-diversity-but-people-hated-that-asian-joke/
    黒人にも同じ機会って言うけど少数派は黒人だけじゃないのに
    そのことには触れなかったのはなんだかなあ。

    • nanashiさん、コメントありがとうございます。
      確かにあのアジア系ジョークは、アメリカに根強いステレオタイプな人種感を揶揄していることが違いないのですが、笑いの取り方としては嫌な感じでしたね。
      おっしゃられる通り、これが白人対黒人の戦いに終始するなら何も変わらないと思います。
      その点でもっとクリス・ロックは黒人だけでなくアジア系や中南米系、そしてネイティブアメリカンといった人々を巻き込んで欲しかったですね。
      ハリウッドの白人男性主義の犠牲者とは決して黒人だけでなく、他の人種や女性にも言えることだと思います。

  4. もし彼ら(審査員)が司会者をノミネートしていたら、私はこの仕事を得ていなかったでしょう。
    ではないでしょうか?つまり、司会者も他と同じようにノミネート制にして選ぶなら、という意味かなと思ったのですが。

    • KOさん、ご指摘ありがとうございます。
      おっしゃる通り、誤訳でした、、、
      訂正します。

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