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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

ベン・スティラー監督作『ズーランダー2』、公開前から怒られる。

Zoolander 2 trailer still

ベン・スティラー主演、監督最新作『ズーランダー2』が、トランスジェンダーの描き方が「差別的」と関係団体からボイコットを呼びかけられる。過去には障害者団体からも抗議されたことも。

「マイノリティの顔を黒くするとの同じ!」とボイコットを呼びかける

ベン・スティラー主演、監督作の『ズーランダー2』の予告編が先ごろ公開され、相変わらずの悪ふざけぶりに大いに笑い転げた次第ですが、そのなかでベネディクト・カンバーバッチが演じるトランスジェンダーらしきモデルを巡って、早速関連団体からクレームがつきました。ベン・スティラーの映画ではほとんど風物詩ともいえる光景です。

「LGBTQ」の活動家がオンライン上ではじめた抗議活動にはすでに5000を超える賛同が寄せられ、曰く、「これは現代において少数派の顔を黒くするのと同じ行為」であり、「カンバーバッチの役柄は明らかに過剰で、 あざけり以外のなにものではない」のだそうです。

ひどいぞ、カンバーバッチ。

問題となったシーンとは?

で、問題となったシーンは上の予告編の0:38頃に登場します。眉毛を剃ったカンバーバッチ演じる性別不詳のモデルに対しての会話です。

デレク・ズーランダー(ベン・スティラー):君は、、その、、男のモデルなの、それとも女のモデル?

カンバーバッチ演じるモデル:どうかしらね。

ハンセル(オーウェン・ウィルソン):こう聞くべきだな。「君が持っているのはホットドッグ?それともバンズ(スラングでケツ)?」ってね。

まあ、何というか、確かに下品でバカなやりとりですね。

でもね、公開前からボイコットは止めようよ

実はベン・スティラーの映画ではこのように描写が差別的であるとして抗議されることが珍しくありません。1998年の『メリーに首ったけ』や、記憶に新しいのでは2008年の『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』において障害者の描き方が侮蔑的だとして抗議され、後者の場合はかなり大規模な反対運動まで起こされています。

しかしベン・スティラーの映画を見ていればよくわかることですが、彼は決して障害者をバカにして笑いをとることを目的とした映画は作っていません。彼自身が反論するように、「それが面白いと思うような浅はかな考えを持つ連中が幅をきかせる業界が実際に存在しており、その現実を風刺している」ことは、よっぽど理解力に足らない人でない限り、理解できます。具体的には『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』では、ハリウッドそのものを風刺しています。

しかも実際に障害を持っている人たちは逆にベン・スティラーを擁護したほどです。

もちろん本作はまだ公開前で内容は推し量るしかなく、そこに差別的な表現がないとは断言できませんが、とりあえずは映画を実際に見てからでないとわからないでしょう。

また侮蔑の対象とされる役を演じるベネディクト・カンバーバッチは、「LGBTQ」といった人たちの立場を尊重することで知られている俳優です。全体の一部だけを文脈から取り外して非難するのは、逆にベン・スティラーが一貫して風刺してきた「浅はかな」人々と同レベルのものとなってしまいます。

日本でもアンジェリーナ・ジョリーの『アンブロークン』を見てもいないのに憶測だけで上映中止(2016年に公開決定)を訴える「浅はかな」運動が行われたことと、どこかで重なります。

もちろん抗議は自由で、反論や拒絶も観客に与えられた権利のひとつです。でもね、やっぱり映画をちゃんと見てからにしようよ。じゃないと建設的な議論や意義のある抗議なんて成立しないです。

とにかく、見てもいないのに、あれはダメ、これはダメ、は息がつまるよ。まったく。

参照www.hollywoodreporter.com/news/lgbtq-activists-call-zoolander-2-842548?utm_source=twitter

 

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