【ゴジラ第16作】『ゴジラ』(1984年)について

7月25日公開のハリウッド版『ゴジラ』の成功を祈ってはじまった、全ゴジラシリーズ28作を見直すというマラソン企画第16弾は『ゴジラ』です。今風に言うところのリブート版とも言える本作は、1954年のオリジナルの続編という形で作られ、その後も続く平成ゴジラシーリズの出発作となります。

Godzilla 84 Still 1 Front by geekspace

『ゴジラ』1984年公開

監督:橋下幸治

特撮監督:中野昭慶

脚本:永原秀一

出演者:小林桂樹、田中健、宅麻伸、夏木陽介、沢口靖子

音楽:小六禮次郎

・ストーリー

伊豆諸島での噴火の後に付近を航行していた漁船が遭難。近くを通りかかった新聞記者の牧が船内を捜索すると、そこにはミイラ化した船員の姿があった。そして牧は生存者の奥村を発見するが、その時、巨大なフナムシのような生物に襲われるも、間一髪で意識を取り戻した奥村に助けられる。

保護された奥村は病院を見舞った林田博士の見せた30年前の写真にひどく動揺する。奥村は難破する状況のなか、船外に現れたゴジラを見たのだった。

時の総理大臣はこのゴジラ復活の情報は国民をパニック化させる危険があるために情報規制を行うことを決定。しかしその後、日本近海を潜航中だったソ連の原子力潜水艦がゴジラに襲われて撃沈する。それをアメリカからの攻撃と見なしたソ連と西側諸国との緊張の高まりを受け、ここでゴジラの出現を世界中に報道することを決定する。

核兵器の使用によってゴジラ抹殺を提案するアメリカとソ連に対して、総理大臣は非核三原則を遵守する姿勢を打ち出す。そこにはこれ以上日本を核の実験場にはさせないという強い信念があった。そして静岡の井浜原発を急襲したゴジラは、その後、遂に東京湾に出没。その影響でソ連の核ミサイルが誤発射される危機が起きるも、アメリカの迎撃によって難を逃れる。

そして日本側は秘密兵器スーパーXやカドミウム弾の対ゴジラ兵器と、林田博士の考えたゴジラを三原山に誘導して火口に突き落とすという計画を実行。東京中心部に侵入したゴジラをカドミウム弾によって眠らせることに成功するも、その後、成層圏での核爆発の影響で発生した落雷によってゴジラは再び目覚めてしまう。

ゴジラによって壊滅状態の東京。三原山に誘い込まれたゴジラ。果たして日本の運命は!?

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・感想

本作は1954年のオリジナルゴジラから30年後の日本を舞台にしており、第2作から15作までのシリーズとは全く繋がっていない。劇中と現実が実際に同じ30年という時間を経験しているという設定は素晴らしい。そしてオリジナルゴジラの要素だけを引き次ぐという戦略も正しい。結果、本作は1985年の大ヒット映画となる(公開は1984年の年末)。

ただし本作はその観客動員数と比例するほど素晴らしい作品かと問われれば首を傾げざるを得ない。まず序盤の見せ場の遭難した船に取り残された船員のミイラ描写や、巨大なフナムシの造形は何とも安っぽい。荒波にもびくともしない海の男ならあんなフナムシなど撃退できるはずだ。

そしてその後の平成ゴジラシリーズの悪癖の元となるカメオ出演も本当に無駄だ。緊張感を高めるシーンでムッシュかまやつが登場したり、武田鉄矢の大袈裟演技など見せられたらそれだけで萎える。本当に余計なことだ。そして沢口靖子の棒読み演技はほとんど伝説の域に達している。しかも挿入歌まで歌わせる始末なのである。

色々と欠点はある映画だが、それ以上に、ゴジラのヒーロー化という設定からオリジナルに立ち返り、あくまで人類の愚挙とそれがもたらす恐怖の象徴として描かれている点は見過ごせない。特に1984年という冷戦下の状況を踏まえつつ、核の実験場にされようとする日本の立場を逃げずに描いたところは評価したい。やはりゴジラは日本と核(=放射能)を考えるときの一つの重要な示唆となる。

特撮的な見所は東京湾に上陸したゴジラと、それを迎え撃つ自衛隊のシーンだが、本作は「もしゴジラが日本に上陸したらどうなるのか?」という状況を俯瞰的に眺めた作品であるため、怪獣映画としての見所はそれほど多くない。しかし本作でしっかりとゴジラの背景を描いたことが次作の豊穣へと繋がることは間違いない。

本作はその後に続く平成ゴジラブームの火付けとなった作品であり、昭和最後のゴジラ映画であるなど様々な意味で分岐点となった作品として評価したい。しかし映画の内容を飛び越えて残念で仕方ないのが、本作では伊福部昭のテーマが一切使われていないことだ。伊福部テーマのないゴジラなど、天ぷらの載ってない天ぷらうどん、もしくはチャーシュー抜きのチャーシューメンと同義である。東宝シンデレラもいいが、伊福部を忘れてもらっては困るのだ。

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