今回はちょっと真面目な記事。ここ数週間(2014/07)でパレスチナが危機的状況に陥っていることは、さすがに日本のメディアも僅かながらも時間を割いて紹介するようになった。報復の応酬はもはや止めどなく、俯瞰で見ればそれは圧倒的な火力を誇るイスラエル側の“虐殺”とも写る状況だ。
そんななかイスラエルの国会議員がFacebook上にアップしたコメントが波紋を広げている。
彼らは皆、我々の敵であり、その血は我々の手によって垂れ流されるべきなのだ。そしてそこには地獄に送られた殉教者の母親たちも含まれる。母親たちも皆一緒に地獄に行くべきだ。そうでもしないと、また小賢しい〈ヘビ〉たちが生まれ育てられるだけだ。
つまりこの紛争を終わらすために、パレスチナの母親を皆殺しにしろと言っているのです。
ちなみにこの発言者はイスラエルの極右政党に属する女性議員のアイェレット・シャクド氏。38歳の女性議員の発言です。
▼Ayelet Shaked アイェレット・シャクド氏▼
この発言に対してトルコのエルドアン首相が「彼女とヒットラーの違いは何なのだろうか?」とコメントしました。
実はこの手の発言はイスラエル内では決して珍しいものではありません。極右的な勢力が政治的にも一定の権力を保持しているのが現状なのです。それでも一見すると上品な女性が「パレスチナの母親は皆殺し」と誇らし気に発言する事態に、何かおぞましいものを見たような気分になります。
停戦協定も無効化してしまい、エジプトなどの周辺諸国やアメリカの説得も意味なく、イスラエルはガザへ侵攻を開始しました。イスラエルを擁護する人々は口を揃えて、最初に手を出したのはハマスと言いますが、テロリスト殲滅活動に巻き込まれた一般市民の憎悪がハマスへの支持を生んでいるという構図を考えれば、ハマスを勢いづかせているのはイスラエルの軍事行動なのです。
ハンナ・アーレントは生きていれば、この事態に何と言ったでしょう。イスラエル社会は今、ナチズムを強烈に嫌悪しつつも、それと溶け合っているようにも思えます。
関連記事:パレスチナの今を撮った『我々のものではない世界』レビュー
参照記事:PressTV
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うーむこれは難しい問題ですね。パレスチナ側はパレスチナ側で、もうずいぶん前から、「ユダヤ人を皆殺しにせよ」というスローガンのもと、それこそ幼稚園児くらいの歳からユダヤ人への憎悪を叩きこむ教育をしている。今回の発言は問題だとは思うが、そもそもパレスチナ側(ハマス)がナチズムと全く同じ論理を適用している。(ユダヤ人は世界中から皆殺しにすべきだ、等々。)その部分を拾い上げずに、イスラエル側の発言だけ取り上げるのはちょっと公平を欠いているような気もする。
コメント、ありがとうございます。
この記事は2年半も前のものなのですが、いずれにせよ確かに難しい問題です。
しかしパレスチナ問題が最も厄介な点とはその「公平性」を担保しようと努力することで、「どっちもどっち」という意見を生んでしまい、その態度が当事者の意思を超え結果として状況を俯瞰的にコントロールしているイスラエルに与してしまうということです。世界がパレスチナ問題に対し「どっちもどっち」と両者を公平に非難することは、結局はイスラエルの思惑に従うことになります。
おっしゃる通りハマスにもどうしようもなく過激な面が多々あるのですが、被害の規模が違いすぎます。
またハマスはナチズムと同じ論理ということですが、正確にはハマスは反ユダヤ主義を標榜しており、ナチスの優生学思想とはかなり異なっています。彼らにとっての反ユダヤ主義とは生存のための論理でもあり、圧倒的軍事力で民族浄化を目指したナチズムとは一線を画すべきです(もちろん反ユダヤ主義を肯定する意思は全くありません)。
あと今回の発言が世界で大きく取り上げられたのは、当時イスラエルの軍事行動でパレスチナが危機的な状況にあるなかで、イスラエルの国会議員が民族浄化を肯定するような発言を行ったためです。イスラエルの国会議員が民族浄化を肯定するような発言をするインパクトは、上記の反ユダヤ主義とナチズムの差異を理由に、原理主義グループハマスの評議員が発する言葉とは重みが違います。
長文となりましたが、ご理解いただければ幸いです。