7月25日公開のハリウッド版『ゴジラ』を記念して、全28作ある東宝ゴジラシリーズを見直そうとするマラソン企画第17弾は『ゴジラ VS ビオランテ』です。個人的にはゴジラ初体験作品ということもあり思い入れの深い一作であり、歴代ゴジラシリーズのなかでもオリジナルゴジラに次ぐ完成度の高い作品になっていると思います。
『ゴジラ VS ビオランテ』1989年製作
監督:大森一樹
特技監督:川北紘一
脚本:大森一樹
出演:三田村邦彦、田中好子、高嶋政伸、小高恵美、峰岸徹など
音楽:すぎやまこういち
・ストーリー
前作『ゴジラ』(1984)で描かれたように、東京はゴジラの襲撃によって一夜にして廃墟となった。そんななか、立ち入り禁止となっていた地区で、ゴジラの体の破片からなるG細胞を違法に持ち去ろうとする集団が出没する。自衛隊との銃撃戦のなかで、G細胞はアメリカのバイオメジャーからサウジア共和国の手に渡っていく。しかしサウジア共和国で研究対象とされたG細胞も、バイオメジャーによって爆破され、そこで働いていた白神博士は娘の英理花を亡くしてしまう。
そして五年後、三原山火口に突き落とされたゴジラの活動が開始するのに備え、政府は放射能を吸収する細胞である抗核エネルギーバクテリアの開発を進めようとする。核兵器を上回る危険性を秘めた開発だけに倫理的な問題が指摘されるも、その道の権威である白神博士はG細胞を一時的に借り受けることを条件に研究に参加することを決める。
しかしその後、白神博士の研究機関のある芦ノ湖から巨大なバラのような怪獣が出現する。それは白神博士が秘密裏に行っていた実験の産物で、白神博士の娘とバラの細胞にG細胞を組み込んだことで生まれた、植物怪獣ビオランテであった。
そしてとうとう三原山から復活したゴジラは、ゴジラの熱線を跳ね返す新機能を搭載したスーパーX2に苦戦するも、G細胞に呼び寄せられるようにして芦ノ湖に出現。そこでビオランテとの激しい闘いになるも、ゴジラの熱線攻撃の前にビオランテは散っていく。
一旦消えたゴジラも、エネルギー補給の必要性から再び日本に接近。若狭湾に向かうと読んだ自衛隊は舞台を伊勢湾に結集させるも、ゴジラは大阪湾に出現。部隊を一カ所に集めたことが裏目となるも、自衛官の権藤らは抗核エネルギーバクテリアを搭載したバズーカ砲を持って大阪市内に潜入。とうとう大阪に上陸したゴジラ目がけて打ち込むことに成功するも、ゴジラの反撃を受けた権藤は殉職する。
しかし抗核エネルギーバクテリアの効果がゴジラの低体温を理由になかなか効果が見られないとわかると、自衛隊は開発中だった雷発生装置を利用して、ゴジラに落雷させることで体温を上げる作戦に取りかかる。
そして徐々にゴジラに効果が現れるも、高浜原発までは少しというところになって、突然、空から光る細胞のようなものが舞い降り、進化を遂げたビオランテが復活した。
敵か味方か、ゴジラに闘いを挑むビオランテ。日本の未来をかけた闘いがはじまる。
・感想
まだ小学生だったことにこの作品をリアルタイムで見た時、内容はほとんど理解できなかった。日本映画なのにやたらと英語での会話シーンが多いし、何よりも内容が難しかった。科学と倫理を巡る問題や、世界のパワーバランスなど明らかに子供には難しすぎる。
しかしこの映画は凄かった。まずビオランテはこれまでの東宝怪獣とは明らかに違っていて、『エイリアン』のギーガー風の造形になっている。そしてその格闘シーンも生半しい体液が飛び散る陰惨なもので、本当に怖かった。しかしそれでも設定上はビオランテは人類の敵ではなく、むしろ沢口靖子という事実。とくに映画のラストーシーン近くには衝撃のワンシーンがある。おもわず、ファッ!なのだ。
そして何より本作がゴジラ史上最も興奮度の高い作品の一つに仕上がった原因は自衛隊だ。本作においては怪獣対怪獣という図式よりも自衛隊対ゴジラという設定に重きを置いている。しかもただのゴジラの引き立て役に終わるのではなく、対ゴジラ用新兵器など、しっかりとした対策を取っていること。実際に一時的にせよゴジラを圧倒もする。そして自衛隊関係ではやはり峰岸徹演じる自衛隊員の格好良さは格別だ。ゴジラ版『ハートロッカー』がここにある。
またゴジラによる大阪蹂躙のシーンも素晴らしい。特技監督の川北紘一の仕事ぶりが光っている。とにかくミニチュア撮影におけるスケール感の作り方が上手い。奥行きと高さがしっかりと表現されていて、ゴジラの迫力がよく伝わる。またゴジラの表情も人間を見下すような冷徹なもので、これまでの子供向けゴジラの表情とは全く違う。
前作では音楽が全くダメであったが、本作ではすぎやまこういちが担当。重要なところでは伊福部のテーマがしっかりと使われている。また官房長官役では当時既に死去していた平田昭彦の妻で昭和の大女優久我美子が出演している。
もちろんラスト10分ポカーンの連続であったり、存在理由の怪しい超能力少女を前面に押し出したりと、色々と大人の事情も見え隠れする作品ではあるが、平成になって初めてのゴジラ作品は、平成ゴジラの最高傑作と評させることも多い。個人的にも本作には強い思い入れがある。
未見の方は是非見てもらいたい一作です。衝撃のラストも見物です。
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いい映画なんですけどねえ。
超能力少女がねえ。
超能力でゴジラ追い返せるなら
最初から新兵器とか使わず。超能力でゴジラ倒せばいいじゃん
と思ってしまいます。
で、この作品以降、平成ゴジラは超能力少女の成長物語になってしまうんですよねえ、恋したり。
いや、小高恵美は悪くないんですよ、棒読みの沢口より頑張ってると思う。
だからこそ、もっとうまい使い方があったと思う。
ginさん、コメントありがとうございます。
80年代後半から90年代はじめにかけての東宝的な大人の事情はあまりにも露骨でしたよね。
当時は東宝シンデレラとか全然知らなかったので、子供ながらの変なキャスティングだと思ったものでした。
でも同時に、振り返ってみるとこのオウム以前のオカルトやらがテレビで普通に流れていた時代というのは、怪獣映画にとってもリアリティラインの確保に役立っていたと思います。
大人の鑑賞に堪えうるゴジラ作品。その分ゴジラの出演シーンが少ないし子供にはあまり楽しめないかもね。
平成シリーズって続いてるから一応順番に見ないとストーリーが判らなくなるでしょ。
確かvsキングギドラ以降毎年正月映画だったんだよね。時間かけてももっとクオリティの高いシリーズにしてほしかったよね。
私の一番最初に映画館で観た映画は何だたか調べてたらビオランテでした(●´ω`●)
6歳の時だったみたいで全く覚えてなかったんですが、触手がビルの窓を突き破って、人を締め付けるシーンだけ覚えてて、内容は全然覚えてませんでした(/ω\ )笑
懐かしい記憶を想い出させて頂き有難うございました☆
シロさん、コメントありがとうございます。
私も最初のゴジラ体験が『ビオランテ』なのですが、最初はストーリーは全く理解できませんでした。
結構、難しいことやってるんですよ。ビオランテが実はバラとゴジラと沢口靖子という事実の重みを知ったのは大人になってからです。ヒドいですよね。
でも映画としては最高に痺れました。
これ、好きなんですよ。
幼少期に見たため本筋の記憶は曖昧ですが、こちらの画像でも使われている、ラスト間際の生首打ち上げシーンが非常に印象に残ってます。
ふーみんさん、コメントありがとうございます。
これは最後のオチがすごいですよね。
本編は硬派なゴジラ映画なのに、最後のアレで一気にカルト化してしまいますから。
でも本編のバトルシーンも見応えありますので、また試してみてください。
私の中では最高のゴジラ映画です。
昭和シリーズとは異なり、怪獣対怪獣を描きながらも決して人間側に立つのではなく、あくまで敵であることが非常に良いと思っています。
ただ、ビオランテという素晴らしい新怪獣を生み出しながらもその魅力を描ききれず、唐突な終わりを迎えてしまった事には残念という意外にはありません。
折角ゴジラ細胞を組み込んだのであれば、ビオランテも樹液ではなく熱線を吐いてしっかり戦って欲しかったです。
あまりにも短いビオランテ戦をもう少し盛り上げていれば本当の意味で傑作になったのではないかと思います。
大好きな作品だけにもっと良くなったのではとの思いがつのり残念でなりません。
面白いんですけどね・・・