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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

映画レビュー『劇場版 MOZU』-考えるな、とにかく感じろ!

人気テレビシリーズの映画化作品『劇場版 MOZU』のレビューです。ファンにとっても謎なら、シリーズ未見の人にとってはもっと謎だらけの本作はとにかく考えることを放棄して目の前のアクションに注目する限り、これはすごいテンションの作品でした。劇場公開は2015年11月7日より。東京国際映画祭特別招待作品。

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『劇場版 MOZU』

日本公開2015年11月7日/日本映画/115分/アクション映画

監督:羽住英一朗

脚本:仁志光祐

原作:逢坂剛

出演:西島俊秀、香川照之、真木よう子、伊勢谷友介、松坂桃季、長谷川博巳、ビートたけし他

あらすじ

妻の死の謎を追っていた公安警察官の倉木は、警察の内部に巣くう闇を明らかにした。しかし、それは恐るべき陰謀の氷山の一角にすぎなかった。ある時、高層ビルが占拠・爆破され、ペナム共和国の大使館が襲撃されるという2つの大規模テロ事件が同時発生。暗殺専門の殺し屋・権藤を中心とするテログループの犯行だったが、権藤らの裏には日本の犯罪史に残る重大事件を裏で操ってきた「ダルマ」と呼ばれる存在があった。

参照:eiga.com/movie/81409/

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レビュー

考えてもわからないものは、感じてみるべきだ:

海外のトレンドを多く取り入れ2014年にテレビシリーズとして2シーズンに渡って放送された『MOZU』の映画化作品であり、豪華出演陣が話題の本作。謎が謎を呼ぶ仕掛けのためテレビ放映時からのファンにとっては待望の作品であり、シリーズ未見者にとっては何が何だかわらからない作品でもある。かく言う私も原作小説だけでなくテレビシリーズも全く見ていない。そんな人間に本作を語る価値があるのか実に疑問だが、これが予想以上に面白かったので是非とも聞いてもらいたい。

妻子の死をめぐる謎を追う内に国家をも巻き込む巨大な陰謀の糸口をつかんだ公安捜査官の倉木(西島秀俊)は、その組織の中心に見え隠れするダルマと呼ばれる謎の存在に気がつく。語ることも近づくことも許されず、影で日本を動かし続けてきたダルマ。究極の悪とも言えるダルマが妻子の死に深く関係していることを掴んだ倉木は、狂気の組織に戦いを挑む。

映画を観終わって理解できた大筋とは、この程度のものである。簡単に説明される倉木の過去や、香川照之や真木よう子の役柄については何となく理解できるものの、途中で突如登場し形勢を一気に逆転させる立ち位置となる池松壮亮の役柄や、長谷川博巳の怪物ぶりについては全く理解できなかった。きっと過去には主人公サイドと問題を起こした経緯があるのだろうし、何やら深い闇を抱えているのも推測されるのだが、それが一体何なのかはわからない。もちろんシリーズ経験者には自明のことなんだろう。でもこれは映画なのだから最小限の説明くらいはしてほしい。その点で本作は初心者には優しくない映画なのだが、その説明不十分な設定が後々起きる過剰なアクションと不条理な世界観と奇跡的にマッチしてしまっていた。つまり「よくわからない」ことが、ダルマやその組織の不条理さと難解さにうまく回収されていたのだ。

まず初っ端から丸っきりジョーカーな松坂桃季が暴走する。テレビ的なチープさの残るシークエンスではあるが、とにかく異常なまでのテンションではじまり、その後ハイテンションのバトンが次々と手渡されていき、何とそのまま物語のエピローグまで一時間半を突っ切るのである。全く休みがない。アクションや漫画原作映画にも「物語」が必要とされる昨今にあって、このノンストップな過剰感は誠に新鮮だった。もちろん『96時間』や『ボーン』シリーズからの影響や盗用は多々あれど、それを日本でやってのけたことで本作はネタ元のハリウッドアクションよりも、60年代後半から日本のお茶の間を独占したド派手で過剰なアクションドラマへと接近していく。また容赦なく飛び散る血しぶきは倫理観を飛び越えていた頃の時代劇を彷彿とさせる。とにかく一つ一つのプロットに出し惜しみと終わり惜しみがなく、舞台や登場人物を変えてはまたアクションの連続なのだ。

おかげで途中から「わからない」ことが何の苦でもなくなり、逆に次への期待感に変わっていく。物語の細部や連続性についてはわからないが、目の前で殺し殺されていく人々の多さから、物事の深刻さは伝わって来る。

そして香川照之や伊勢谷友介の大げさな演技も作品そのもののハイテンションさのおかげで他ほど悪目立ちしていない。特に物語の中盤で活躍する誰なのかよく分からない長谷川博巳の怪演ぶりは、同様の演技をしている松坂桃季や主役の西島秀俊を完全に食っていた。

確かにオリジナリティの面ではとても褒められたものではない。ポスターは丸っきり『007』や『ボーン・アルティメイタム』と同じ構図だし、人物設定も他の有名ハリウッド作品からの拝借と思しき部分が多々ある。それに重要人物として登場するビートたけしは相変わらず滑舌に問題がある。プロット間の繋ぎも雑だし、テレビに出演していたからという理由だけで登場する人物もいるため、まとまりもよくない。それでも本作でのアクションの釣瓶打ちは一見の価値ありだし、それはシリーズ未見者にも同様である。

そもそも国家を覆うような巨大な謎を扱っているのだから、その全貌は不鮮明でも構わない。考える隙間なく連続するアクションは、まさに「感じる」に十分な魅力があった。考える必要はない映画だと思う。

ということで『劇場版 MOZU』のレビューでした。CGや演出部分に稚拙さは残るも、アクション映画として必要な水準は突破していると感じました。ここまで物語の説明は背景をすっ飛ばして、ただただアクションシーンを詰め込んだ作品は珍しく、しかも『ダイハード』や『スピード』のように決められた空間ではなく、国境さえも跨ぐ広い舞台で繰り広げられるノンストップアクションとしてはハリウッドを含めても異例と言えそうです。ファンは必見だし、シリーズ初体験の一作としても手頃だと思います。別に『MOZU』の回し者ではないですが、オススメです。

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