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映画ジャーナル<ビーグル・ザ・ムービー>

【ゴジラ第24作】『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』について

公開を控えた2014年版『ゴジラ』の大ヒット祈願として、これまでの東宝ゴジラシリーズ全作をもう一度見直すという孤独なマラソン企画、第24弾は『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』です。監督にゴジラファンの手塚昌明を起用した本作は、娯楽重視の物語のため御都合主義が目立つものの、しっかりゴジラ映画としての見所を備えた作品に仕上がっています。

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『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』 2000年公開

監督:手塚昌明

脚本:柏原寛司、三村渉

出演:田中美里、谷原章介、星由里子、勝村政信、伊武雅刀など

音楽:大島ミチル 

・ストーリー

1954年のゴジラの東京襲撃によって首都東京が壊滅状態に陥ったため、日本の首都は大阪に遷都された。そして1966年に再び現れたゴジラは東海村の原子力発電所を破壊。ゴジラの攻撃対象が原子力であることが判明したため日本は原子力の永久放棄を決断し、プラズマエネルギーの開発を進めその本拠地を大阪に置く。しかし1996年に三度出現したゴジラはそのプラズマエネルギーの開発所を襲撃する。

そして2001年、新型の対ゴジラ兵器の開発を目指す政府は、物理学者の吉沢博士(星由里子)とその教え子で天才的な頭脳を持ちながらも自由に生きる工藤(谷原章介)によって生み出された新兵器ディメンション・タイドの試射を行うことにする。ブラックホールを人工的に出現させることで、時空に歪みを生み、対象物のすべてを時空の亀裂に送り込むという画期的な新兵器であり、対ゴジラ兵器として大きく期待されていた。その試験運転を行った際、成功したように思えたが、同時に時空の切れ目から太古に生きた巨大昆虫メガヌロンが出現してしまう。

やがて成長したメガヌロンは人を襲いはじめ、そしてトンボのようなメガニューラへと変身。人類にとっての新たな脅威となる。

一方、衛星が海上で強力なエネルギー反応を発見、調べてみるとそこでゴジラが熱線を放射し、一体にはメガニューラの死体が転がっていた。過去に恋人をゴジラに殺された経験をもつ辻森隊長(田中美里)はゴジラ討伐に異常なまでの執着をみせ、その現場に現れたゴジラに単身で挑み、そこにディメンション・タイドの発信弾を打ち込むことに成功する。そしてディメンション・タイドを発動するため種子島より宇宙に打ち上げられた。

その頃、渋谷は水没。原因はメガヌロンが地下水脈を決壊させたためだった。水中には大量のメガヌロンが今まさにメガニューラへとふ化しようとしていた。そして多数のメガニューラは奇岩島のゴジラのもとへと飛来し襲いかかる。メガニューラと戦うゴジラに向けて、とうとうディメンション・タイドが打ち込まれる。成功したように見えたが、わずかに外れたためゴジラは地球に留まっていた。そしてゴジラからエネルギーを収集していたメガニューラは水底で眠るメガギラスにそのエネルギーを分け与える。そしてとうとう太古の大昆虫メガギラスが出現し、街を破壊する。

そしてお台場に上陸したゴジラ。そこに現れたメガギラス。そしてディメンション・タイドによってそれらもろともの消滅を図る政府。隠された嘘を抱えながら、ゴジラとメガギラス、そして人類の未来を賭けた三つ巴戦の火蓋が切って落とされる。

・感想

本作はミレニアムシリーズにおける一つの到達点であったと思う。もちろん色々と欠点もたくさんあるが、本作を見終わった時の爽快感は、娯楽怪獣映画としては及第点を優に超えている。本作は娯楽大作映画としてのゴジラの側面を強調しつつ、人間のおごりへの警鐘としてのゴジラもしっかりと描いている。またキャストの配役も近作では最も素晴らしいと思う。本来ゴジラ映画では常に女性が格好良く、そして男性キャストは古くは宝田明や高島忠夫のように優男が担ってきた経緯がある。ゴジラ討伐に執念を燃やす女隊長の田中美里はどう考えても怪獣対策組織の隊長としては華奢だが、気の強さはよく伝わってきたし、一方の谷原章介の「ちゃらい」ロンゲ設定も現代的解釈としては間違っていないと思う。こういったキャスティングを見ても手塚監督のゴジラ愛がしっかりと伝わってくる。

物語上においては、対ゴジラ兵器ディメンション・タイドに代表される新型兵器の登場によって物語に常に一定の緊張感が作られ、気を抜くことなく最後まで物語が展開できるようになっている。ゴジラと空想科学との組み合わせは場合によっては危険なものにもなるのだが、本作では変な宇宙人が登場しなかったりと兵器関連にのみ絞ったことも成功の要因だったと思う。

そして本作の最大の見所は、人類がゴジラから逃げなかったことが挙げられる。この点は『ゴジラ対ビオランテ』の興奮にも通じるところがあるが、本作では「逃げるな、戦え」というキーワードで人類がゴジラに真っ向勝負を挑み続ける。敢えてゴジラを遠い中心に置きながら、人間たちの見苦しいまでの必至さを近景に描いた点はきっと多くのゴジラファンも納得したことだろう。

特撮関連でも本作は白眉で、特にゴジラが徐々に近づいてくる様をロングショットで全景を映すカメラワークは、手塚監督が子供の頃にゴジラのおもちゃで遊んでいた経験が生きているに違いない。

批判の多くはストーリー上の無理矢理展開に注がれることになると思う。特に前半の作りがしっかりとしている分、中盤から一気に胡散臭くなるのが残念だ。しかしエンディングのゴジラ復活の匂わせ方はベタベタであるが嫌いではない。

そして今見るとゴジラと原発の関係はなかなか興味深く感じられる。評価の分かれる作品ですが、私は全然嫌いになれない作品でもあります。是非ご覧になってください。

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