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【ゴジラ第10作】『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』について

7月25日新作『ゴジラ』公開までにこれまでに製作されたゴジラ映画全28作を見直すという、楽しいのは最初だけで途中から苦行になってきたマラソン企画第10弾は『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』です。

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『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』1969年公開

監督:本多猪四郎

脚本:関沢新一

出演:矢崎知紀、佐原健二、天本英世など

音楽:宮内國郎

・ストーリー ネタバレあり

両親共働きで鍵っ子の一郎は、引っ込み思案な性格のため学校ではいじめられていた。そんな一郎は近所に暮らす玩具開発家の南(天本英世)と仲がよく、その影響から一郎はガラクタで作った、ゴジラやミニラが暮らす怪獣島のコンピューターで1人で遊んでいた。

そんな時、気がつくと一郎は怪獣島にいた。どうやら怪獣島のミニラが一郎を呼び寄せたらしい。同じように弱虫のミニラと一郎は仲良くなるも、ミニラは新怪獣ガバラに襲われてしまう。慌てる一郎だったが、ふと我に返る。

今晩も母親が仕事のために帰れなくなることを伝えに来ていた南が一郎を起こしたのだった。またその頃、2人組の強盗が5000万円を強奪し、どうやら近くに忍んでいるらしいことがわかる。

翌日、また怪獣島にやってきた一郎はミニラと再会。ミニラは弱虫な自分を鍛えようとゴジラとともに特訓に励んでいた。

そんななか、一郎は逃亡中の強盗組に誘拐されてしまう。監禁されてしまった一郎は、再び怪獣島に行き、そこでガバラと戦うミニラを見て、自分もこの強盗達に闘いを挑むことを決意する!

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・感想

きつい。本作はオリジナル脚本でありながらも、低予算での製作のために過去の映像を使い回しているため、全く新鮮さはない。怪獣シーンもガバラとの絡み以外は全て過去作からの流用である。本作よりオリジナル作品を再編集していくことが慣習となっていく、言わば悪しき風習のはじまりの作品である。

内容も徹頭徹尾、子供向けだ。まずミニラが話す。もうゴジラが古代生物とかそういう設定そのものが意味をなしていない。もちろん子供の夢のなかを舞台にした怪獣映画だとはいえ、ちょっとがっかりだ。また新怪獣ガバラも残念である。核爆発の影響から巨大化したガマガエルということだが、そういう説明がないとベースが全くわからない。それにとことん弱い。ゴジラには一本背負いで投げられ、払い腰で倒され、踏みつけられ、仕方ないからミニラを虐めるという怪獣としては非常に志が低い。それも一郎少年のルサンチマンの現れだと説明できるのだろうが、ゴジラが説教臭くなるのは勘弁してもらいたい。

上映時間70分という短さからも物語は非常に小さい。今風な言葉では『セカイ系』怪獣映画となるのだろう。ゴジラ映画としては評判が芳しくない本作だが、個人的には『ネバー・エンディング・ストーリー』や『バンデッドQ』に通じるような内容でもあり、もちろん嫌いではない。ただし何度も見るにはやはりきつい。

劇中での怪獣総進撃で使われたゴジラが戦闘機を破壊するシーンで、一郎少年が完全にゴジラ側に立っているのが、いじめられっ子のルサンチマンを爆発させるいいシーンだった。あとオープニングの怪獣マーチは一聴の価値ありです。「ごじらは放射能」というギリギリの歌詞です。

何かと残念な作品ですが、次回作の『ゴジラ対ヘドラ』に通じるような同時代的な社会問題を扱っており、ゴジラ映画史的にはなかなか重要な作品です。それにしてもこの作品の次が『ゴジラ対ヘドラ』というのは、東宝も思い切ったことをしますね。

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COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. 実際どうしようもない内容なのですが、ひとつ見どころをあげるとすれば天本英世演じる発明おじさんでしょうか。子どもを怖がらせる役ばかりで知られる天本氏ですが、本当は子供にとても優しい人でした。この作品にはそんな天本氏がまるで演技でなく地でやってるような珍しくも暖かい雰囲気があります。いや、それだけなんですがね。

    • banさん、おっしゃる通り、不思議な暖かさがありますよね。
      リアルタイムで観ておらず、子供のころに観た時にはすでにクラシック(古臭い)く感じたのですが、時間が経って見直すとずいぶんと印象が変わっていました。
      あんなお兄さんがいたらいいですよね。

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