事故がきっかけで老けることができなくなった女性の孤独と解放を描いたロマンティック・ファンタジー『アデライン、100年目の恋』のレビューです。見た目は20代後半でも、実年齢が100歳を超える主人公をブレイク・ライブリーが演じ、共演はエレン・バースティンやハリソン・フォード他。日本公開は2015年10月17日。
『アデライン、100年目の恋/The Age 0f Adaline』
全米公開2015年4月24日/日本公開2015年10月17日/アメリカ映画/112分
監督:リー・トランド・クリーガー
脚本:J・ミルズ・グッドロー、サルヴァドール・パスコウィッツ
出演:ブレイク・ライヴリー、マイケル・ユイスマン、ハリソン・フォード、エレン・バースティン他
あらすじ
アデライン(ブレイク・ライブリー)は1908年の新年に生まれた。その後は当たり前のように成長し、結婚し、子供も設ける。そして夫の死別した後、29歳のとき、自動車で事故を起こしてしまう。一度は完全に心臓が停止するも、偶然にも雷が直撃し息を吹き返した彼女は、そこから不思議にも年老いることがなくなってしまった。
書類上は40歳を超えても、一向に容姿の変わらない彼女はやがて警察から怪しまれるようになってしまう。そしてとうとうFBIからも追われるようになった彼女は、一人娘にだけ行き先を明かし、行方をくらましてしまう。
身分や年齢を偽り、定期的に暮らす場所を変えながら、秘密を抱えた生活を何十年も送り続けるアデライン。しかし彼女はパーティーでエリス(マイケル・ユイスマン)と出会い恋に落ちてしまう。そして過去に愛した男性との再会。
誰とも深入りすることなく秘密を抱えたまま暮らしてきたアデライン。老いることのできない苦しみとともに、彼女が隠し通してきた秘密は明かされる時を待っていた。
レビュー
究極のアンチエイジング、それは雷(AEDは不可):
単刀直入に言えば、とてもロマンティックで甘くて美しい、バカみたいな作品である。
まず主演のブレイク・ライブリーや相手役のマイケル・ユイスマンとの恋模様は、バブリーで、星空あり、ワインあり、教養ありとそのほとんどと無縁な生活を送る一般ピーポーの感情を逆なでするほどにロマンティックだ。そして後半にはハリソン・フォードも関わってきて、70歳を過ぎても結構走れる彼を見て、「スターウォーズ」への期待感もさらに高まることになる。映像も甘ったるほどに美しい。しかしそれでもこの映画がバカみたいなのは、やはりファンタジー映画として手抜き感がハンパないことに尽きる。
自動車事故を起こし、低体温状態のまま一度は完全に心臓が止まるのだが偶然の落雷によって息を吹き返したアデラインはそこから永遠の若さを手に入れてしまう。百歩譲ってこの設定はいいにせよ、その過程を神様視点のナレーションが重箱ほじくり返すように、どうでもいい細部まで丁寧に説明してくれる。ファンタジーにせよSFにせよ、非現実的な設定を物語に敷く場合は、その特異なリアリティを物語として再現できるかに作品の可否が問われるのに、本作ではただナレーションして終わりである。おそらくは100年以上生きる主人公を意識して、クラシック映画の作法を引用したのだろうが、非現実感ばかりが強調される結果となった。
それでも滑稽とも受け取れる設定の中、俳優陣は素晴らしかった。主演のブレイク・ライブリーは、見た目とは裏腹に成熟して人生を諦観しながらも、女性としての心も失っていない難しい役どころを無難にこなしていた。しかし社会からなるべく目立たぬように生きていながらも抜群の美貌を維持している点に、ファンタジーとロマンスの融合の難しさを見た。またアデラインの老いた一人娘役を演じたエレン・バースティンも、自分よりもずっと若い女性が母親であるという微妙な関係をうまく演じ分けていた。実はこの作品のトーンを作り出したのは、彼女の存在だと思う。ハリソン・フォードはちゃんと全力疾走していたので安心した。
ドラキュラやエルフなどをモチーフに描かれる老いない(もしくは老いが遅い)者たちの悲しみとは、愛する者をただ見送るだけの人生に由来し、それは誰にでも起こりうる大切な人との別離の言い換えでもある。しかしその悲しみを嫌って愛するものを避け続けたところで、孤独であることには変わらない。しかし悲しみと孤独とは違いが内包しあう存在で、孤独からの解放でしか悲しみは解けず、悲しみからの癒しによってしか孤独から解放されることがない、ということを本作は描こうとしている。それが成功したか、失敗したかは、本作を観た人の判断となるのだろうが、ファンタジーだからロマンスだからといった理由で、都合のいい展開が許されることもないと思う。
きっと感動的な映画なのだと思う。美しくて甘い、まさにロマンティック映画の王道なのかもしれない。でもよく考えてみてほしい。これだけアンチエイジングに血眼になる方々が存在するなか、雷一発で不老不死が達成されるとか冗談じゃない。それをクソ真面目に解説するナレーションもお前誰だよ。しかもお前、ラストにもまた出てくるだろ。
真面目に考えると色々と問題が出てくるので、ここは雷に打たれた気分で観るべき映画なのでしょう。
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ということで『アデライン、100年目の恋』のレビューでした。ツッコミ満載の映画ですが、出演者たちはいたって真面目に演技をしています。アデラインは何とも美しいのですが、しっかり者のように見えて肝心なところでの不注意が目立ちます。あと回収していない伏線もあったり、なんだかなー、という気分です。それとしつこいですが、ハリソン・フォードはちゃんと走っていました。年の割には結構動けていますので、これは『スターウォーズ』に期待できます。ちなみにアデライン役のブレイク・ライブリーは『デッドプール』のライアン・レイノルズの奥さんです。以上です。
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