カズオ・イシグロ原作のベストセラーを綾瀬はるか主演でドラマ化する『わたしを離さないで』の第3話のレビューです。これまでの子供時代から時間がたち、学苑を卒業することになった恭子たちは次なる場所へと向かっていく。ここからは新展開か?
『わたしを離さないで』
出演:綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ
原作:「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ
脚本:森下佳子
音楽:やまだ豊
プロデュース: 渡瀬暁彦 飯田和孝
演出:吉田健 山本剛義 平川雄一朗
製作著作:TBS:「わたしを離さないで」公式サイト
第3話 あらすじ
月日は流れ陽光学苑を卒業する年になった恭子(綾瀬はるか)たちは、次の生活の場・コテージに移ることに。
コテージへは学苑から2、3人単位で行けるため、生徒たちはそれぞれ誰と行くかコテージの話題で学苑は持ちきりだった。
他の生徒たちと同様、どこのコテージにするか悩んでいた恭子に花(大西礼芳)は、一緒にいても疲れてしまう美和(水川あさみ)と離れ、自分たちと一緒に来ないかと恭子を誘う…
そんな中、サッカーをしている友彦(三浦春馬)の元に差し入れを持って行った恭子。
コテージの話題になり、どこにするのかと恭子が尋ねると「恭子の決めたところでいい」とこたえる友彦。恭子は戸惑いながらも喜びを覚えるのだった。
ある日、友彦から将来サッカーのプロチームを受けたいと告白される恭子は、友彦とともに希望を夢見ていた。すると突然堀江龍子(伊藤歩)が現れ、「あなたたちは何者にもなれない」と聞かされる…
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第3話レビュー
第1話、第2話と主人公らが子供時代を主な舞台だったが第3話である今回からは子役たちは出てこない。
オープニングは前話に提示された、盗まれたCDの真相が語られたのちに、三浦春馬演じる友彦が登場する。彼は臓器の提供手術を終えたばかりで入院中。
そしてここではじめて恭子の口から「介護人」という仕事の中身が明かされる。原作でも映画版でもオープニングに登場するナレーションがここで使われ、加えて臓器提供者を介護し最後まで見届ける介護人もやがては臓器を提供する運命にあることが明示される
今回は学苑の卒業を控えて社会へと出て行くまでの準備期間を描きつつ、恭子と美和のいびつな関係性を重点的に描いている。子供の頃にはまだはっきりとしていなかった、美和の恭子への歪んだ依存 心が、淡い恋心の悲しい結末の反動と、自分たちの運命の惨さによって強化されていたことが描かれている。
こういった展開からも恭子と美和の関係がこれからの物語の重要なパートになることも予想できる。原作ではあくまで彼らの運命の謎が物語の中心だったが、このドラマシリーズではあくまで彼らの関係性にスポットをあてるようだ。原作にあったSFドラマという設定は薄められ、やはり彼らの三角関係によって引っ張っていくことになるのだろう。
気になったこととしては本エピソードでは学苑の教師である堀江龍子(伊藤歩)が狂ってしまうシーンが描かれるのだが、ここはどう考えても辻褄が合わない。学校に赴任してから数年経っているにも関わらず、なぜ今ここで壊れてしまったのかその理由がまったくわからない。やはり学苑の目的と生徒たちの運命は、第1話ではなくここで明かされるべきだった。自分たちの教え子の卒業をまえに、思わず真実を語らずにはいられなかったという設定なら彼女の真面目さも活きる。そしてなぜか生徒数が桁違いに増えているのもどうにかして欲しい。
第3話は子役パートがなくなったことで演技のぎこちなさによる違和感はほとんどなく安心してみていられる。特に氷川あさみ演じる美和と中井ノエミ演じる真美との対立と、その争いを収めることに居場所を見つける綾瀬はるか演じる恭子の優しさでもあり弱さがしっかりと描かれていた。
そして恭子の立場が彼女の美徳を「てこ」にして隅へと押し出されていく結末は胸が痛くなる。
また学苑を卒業する最後のシーンで描かれる真美の言葉によって、今後のサスペンス・ホラーな展開が示唆されることになる。次からのコテージでの新生活は3人の関係性が中心となるため、更にその傾向は加速するだろう。
原作や映画版では彼らの運命を巡る葛藤が中心命題として描かれていたのだが、ドラマシリーズでは運命によって狂わされる彼らの恋愛模様を中心にするようだ。それが世に言う「ヒューマン・ラブストーリー」なのだろう。
ということで第3話が今後の展開への占う意味では重要なエピソードとなりました。正直、想像したドラマとは全然違っていきそうですが、さて来週ぼくはまたレビューするのでしょうか。
そんなこと誰にもわからない(綾瀬はるかのナレーション風)。
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