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ドラマレビュー|『わたしを離さないで』第4話

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カズオ・イシグロ原作のベストセラーを綾瀬はるか主演でドラマ化する『わたしを離さないで』の第4話のレビューです。学苑から巣立っていった恭子たちは同じ運命の仲間たちとの共同生活を開始する。 本エピソードから新展開となります。

『わたしを離さないで』

出演:綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ、中井ノエミ

原作:「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

脚本:森下佳子

音楽:やまだ豊

プロデュース: 渡瀬暁彦 飯田和孝

演出:吉田健 山本剛義 平川雄一朗

製作著作:TBS「わたしを離さないで」公式サイト

第4話 あらすじ

学苑を卒業し、「コテージ」と呼ばれる一軒家に生活の場を移した恭子(綾瀬はるか)、友彦(三浦春馬)、美和(水川あさみ)の3人。
自分たちと同じく“提供者”となる浩介(井上芳雄)や、あぐり(白羽ゆり)ら先輩住人たちと共同生活を送るなかで、陽光出身者には知らされていなかったある事実を知らされる。

そんな共同生活でうまく馴染むことができず、徐々に孤立していく恭子…

さらに友彦と美和の生々しい関係を目の当たりにしたことで、どんどん殻に閉じこもっていたある日、別のコテージで生活する真実(中井ノエミ)から手紙で誘いを受け、会いに行く決心をする…


第4話レビュー

現代を舞台にしたオープニング、美和が足を骨折して病院に運ばれる。そして駆けつけた恭子は、病室のベットに横たわる美和を見て、彼女がわざと怪我をしたのだと理解する。美和は恭子を縛り付けているためにわざと怪我をしたのだと。

そして物語は学苑卒業後にコテージへと移っていく。恭子、美和、友彦は同じグループとして先輩住人たちとともに共同生活を営むことになる。そこには様々な学苑からやってきた未来の提供者たちが共同生活を営んでいる。

本エピソードではこれまで先延ばしにされてきた謎が詳しく明かされ、そこから新しい謎も提示される。先輩の住人たちの口から「提供者」と「介護人」の関係性の説明を受け、そして恭子たちが育った陽光学苑の特殊性が示唆される。本来は学苑を卒業すれば「提供者」になることが基本で、努力しその資格を得た者たちだけが「介護人」として「提供者」までの時間稼ぎの機会が与えられることになっているのだが、陽光学苑出身者は例外なく「介護人」として働く機会が与えられているらしい。

なぜ陽光学苑だけが?

それは前話で真美が靴から取り出した発信機と何か関係あるのか?

ここから謎が謎を呼ぶ新展開への突入となっていく。

同時に彼らの将来の選択肢も明確になる。サッカー選手や料理人という将来はそもそもありえないもので、彼らに残された将来とは「介護人」になってやがて「提供者」となるか、もしくはそのまま「提供者」となり臓器を取り出されて緩やかに死んでいくかという、出口はひとつの二種類の人生しかないことが明かされる。そしてあらかじめ決められた将来がもたらす絶望感から、コテージの住人たちの生活は退廃的になっていく。

このコテージ内に漂う厭世観の演出は現在の地上波ドラマとしてはギリギリのラインをついていた。社会から将来を決定づけられた若い男女が同じ家に放り込まれればやることは一つしかない。セックスも描かれるし、タバコも吸うシーンもちゃんとある。一方、刹那的な日々を送るコテージの住人とその空気に簡単に馴染んでいく美和とは対照的に、恭子は孤立し彼らの生き方を軽蔑さえするようになる。しかしその生活のなかで深まっていく恭子の孤立感とは彼女の幼さに原因があることも、先輩住人の指摘から明らかになる。

原作も劇場版『わたしを離さないで』も、現実世界の比喩として彼ら彼女たちの運命が描かれていたが、そのテーマ性が初めて本エピソードではっきりする。とても分かりやすい関係だが、このコテージの生活とは現実世界でいうところの大学生活や、それに準ずるモラトリアムと同じである。就職までの時間を遊んで過ごす学生と、その生産性のなさを冷めた目で見つめる孤独な学生。両者の過ごす時間は全く別種のものだが、いずれは同じ出口から社会という外側の世界へ出ていかなければならない。それはそのままコテージの住人や恭子にも言えることだ。

この第4話ではじめて、恭子たちの運命と現実世界との関連がかなりはっきりと描かれることになった。そしてその狭間で、何かが目覚めていくことになる。

また恭子と美和の関係についても新しい視点が提供される。これまでの「わがまま」な美和という表面的なイメージから、その原因や理由が示唆される。美和がわがままなのは恭子たちよりも早く自分たちの運命を知ってしまった絶望が原因なのか、それとも恭子と美和の中間に立ったまま煮え切らない友彦のせいかのか、それとも、、、、。

ということで第4話は新展開となって物語がぐっと前に進むことになった。登場人物たちの本音がやっと見え隠れし、その避けられない運命の残酷さが普遍的な人生の悲しみへと結びついていく。正直ここまでの全3話とは違って、中身はかなり濃い内容となっていた。学苑の謎や提供者の過酷な運命という大きな命題のなかで、恭子や友彦たちの「普通さ」がきめ細かに描かれ、登場人物への感情移入が可能な土台が作られた。これまでは原作の流れをほとんど無視し強引にラブストーリーへと向かわせるのかとも疑ったが、本エピソードでは原作のトーンがかなり意識的に取り入れられている。

エンディングには新しい謎も描かれ、恭子と美和、そして恭子と友彦の関係も変わっていくことが予想される。

やっと『わたしを離さないで』らしくなってきて次回へ期待を持たせるエピソードだった。

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Reviewed Item
『わたしを離さないで』第4話
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