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映画レビュー|『JOY/ジョイ』ジェニファー・ローレンス主演

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『世界にひとつのプレイブック』の監督とキャストが再結集した『ジョイ/Joy』のレビューです。デヴィッド・O・ラッセル監督で、ジェニファー・ローレンスがアイデア商品の発明で成功した実在の主婦ジョイ・マンガーノを演じる。共演はブラッドリー・クーパーやロバート・デ・ニーロ。

『JOY/ジョイ』

全米公開2015年12月25日/日本公開未定/ドラマ/124分

監督:デヴィッド・O・ラッセル

脚本:デヴィッド・O・ラッセル

出演:ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパーほか

作品解説

「ミラクル・モップ」というアイデア商品を発明した主婦実業家、ジョイ・マンガーノをアカデミー賞女優ジェニファー・ローレンスが演じた伝記映画。日々を生きるのに精一杯のシングルマザーが、厳しい生活から生み出されたアイデアで成功を勝ち取っていく物語。監督は『世界にひとつだけのプレイブック』、『アメリカン・ハッスル』とジェニファー・ローレンスとタッグを組んできたデヴィッド・O・ラッセル。共演もラッセル監督作品ではおなじみのロバート・デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパー。


レビュー

シングルマザーで二人の子供を育てるだけでなく、家事のできない母親や甲斐性のない父親、果てには別れた旦那の世話までする貧しい女性が、そのクソ忙しい家事の手間を少しでも減らそうとして発明した商品が空前の大ヒットとなり、結果、金持ちになる。日本でも一般的な主婦が家事に関するアイデア商品で大当たりする、なんてという話はテレビなんかでも時々紹介される。

乱暴に言ってしまえば本作『ジョイ/Joy』はそういう話だ。

シングルマザーのジョイ・モンガーノは才能を持て余した女性だ。子供の頃から物作りが得意で、社会的に成功しようとする野心にも溢れている。しかし状況が彼女の挑戦を邪魔し続ける。同居する母親は昼間からソープオペラを見てばかりで家事はすべてジョイに押し付ける。その母親と離婚したはずの父親も一人では生きていけないのかジョイが暮らす家に転がり込んでくる。それだけでなく別れた旦那も居候している。二人の子供の世話と日々の仕事に加えて、家での家事もジョイの挑戦を邪魔し続ける。

そんなある日、彼女はワインの入ったグラスを落としてしまう。そして床にこぼしたワインを拭き取ろうとしたとき、割れたグラスの破片で手を切ってしまう。そのとき、ジョイは思いついた。手を汚さなくても床を拭けるモップがあれば、と。

そして彼女は「ミラクル・モップ」を発明する。

もちろん最初はどこにも関心を払われないが、家族や友人の助けもありテレビショッピングに出演して商品を売り込むと、たちまち同じような経験のある主婦層を中心にバカ売れする。

人生の大逆転に成功したジョイだったが、その後に本当の苦難が待ち受けていた。

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という内容で普通の女性が自分の確固たる意思で周囲を見返していく、という流れはジュリア・ロバーツ主演、スティーヴン・ソダーバーグ監督作『エリン・ブロコビッチ』を彷彿とさせる。内容だけでなく、監督と主演女優との強い信頼感を土台にして作られた作品ということでも、本作でのデヴィッド・O・ラッセル監督とジェニファー・ローレンスの相性は『世界にひとつのプレイブック』や『アメリカン・ハッスル』ですでに証明済みだ。そして共演陣にもブラッドリー・クーパーとロバート・デ・ニーロとおなじみのメンツが揃っている。

でも実際には本作はジェニファー・ローレンスの映画だった。『世界にひとつのプレイブック』に見られたブラッドリー・クーパーとのケミストリーや監督自身の個人的な苦悩の投射、そして『アメリカン・ハッスル』で描かれた一癖も二癖もある登場人物による疾走感のある演技合戦などと比べても、作品の特徴というものが感じられなかった。監督デヴィッド・O・ラッセルという印のようなものがないため、作品の印象がぼやけてしまっている。

まず物語に捻りはない。過去に『スリーキングス』や『ハッカビーズ』という癖のある映画を撮った監督の作品とは思えないほどに、よく言えばストレート、悪く言えば無個性に仕上がっている。

物語そのものは普通の主婦のサクセスストーリーというものだが、主人公が成功の階段を上っていく苦労が描かれるのは全体の半分ほどで、特に前半は主人公の特殊な家庭環境の描写に費やされる。監督の意図としては安易な成功物語を描くのではなく、成功と表裏一体にくっついている日常へのフラストレーションにスポットを当てたのだろうが、家庭問題と成功物語のパートが完全に切り離されているから物語としての一貫性を失っている。

また登場人物たちの物語への関与が少なく、主人公の窮状が一気に改善するきっかけがブラッドリー・クーパー演じる大企業の幹部に委ねられていることも唐突すぎる。これまで登場していない外部の力で突然状況が好転するというのは物語上の怠慢であり、決して褒められたものではない。

おかげでせっかくのブラッドリー・クーパーが台無しだし、ロバート・デ・ニーロ演じる父親の立ち位置も釈然としない。実話をベースにしながら作り話のような安っぽさが消えず、最後まで煮え切らないという印象だった。

それでも、序盤でジェニファー・ローレンスがこっぴどい挫折を味わう場面でブルース・スプリングスティーンの『Racing in The Street』がかかるシーンは印象深い。元は夜遊びばかりして家庭を顧みない男の姿を哀愁たっぷりに歌った曲なのだが、それをあえて歌のなかで孤独に悩む女性を想起させる主人公のどん底にぶりに合わせてくるあたりは皮肉がよく効いている。

先にも述べたが本作はジェニファー・ローレンスの映画だ。彼女の演技は相変わらず素晴らしく、主人公が置かれた状況を演技で再現し分け、オープニングとエンディングとの対比で主人公の成長と変化を見事に演じきっていた。

それでもやっぱり、普通の女性が困難に打ち勝ち成功する普通の映画という印象は拭えない。

『JOY/ジョイ』: 

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ということでジェニファー・ローレンス主演の『ジョイ/Joy』のレビューでした。ゴールデングローブ賞主演女優賞をジェニファー・ローレンスが獲得しましたが、彼女の演技力を楽しむにはいい作品かもしれませんが、『世界にひとつのプレイブック』や『アメリカン・ハッスル』と比較すると明らかに見劣りする映画で、しかもストレートすぎてデヴィッド・O・ラッセル作品とは思えませんでした。それでも細部では笑える部分やグッとくる部分もあります。そういう感じでオススメです。以上。

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Reviewed Item
『JOY/ジョイ』
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