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SFヒーロー映画『マックス・スティール』レビュー

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玩具メーカーのマテル社が1997年に発売した人気アクションフィギュアシリーズを実写映画化した『マックス・スティール』のレビューです。幼い頃に謎の事故で父親を亡くした孤独な青年マックスが、エイリアンのスティールと一体化することでスーパーヒーローに変身し、戦う姿を描く。日本の特撮ヒーローとアメコミヒーローの合体か!?

『マックス・スティール』

日本公開2016年12月3日/アクション/92分

監督:スチュワート・ヘンドラー

出演:ベン・ウィンチェル、マリア・ベロ、アナ・ビジャファーニェ、アンディ・ガルシア

レビュー

本作『マックス・スティール』はハズブロと並んで有名な玩具メーカーのマテル社が1997年から発売するアクションフィギュアの映画化で、系統から言えばマーベルやDC映画よりも『トランスフォーマー』や『G.I.ジョー』といった作品に近く、対象年齢もアメコミヒーロー映画よりも低く設定されている。

また本作は2014年5月に撮影が終了していながらも公開がずるずると伸びて、全米でも2016年10月に大きな宣伝もなくひっそりと公開されて、当たり前のことだがほとんど話題になることもなかった。

主人公は高校生のマックス。幼い頃に父親を亡くしていて母親と二人暮らしで引越しを繰り返す生活を送っていたが、物語はそんなマックスと母親が、父親が事故で死んだとされる街に帰ってきたところからはじまる。繰り返される引越しにうんざいするマックスだったが、ちょうどその頃、彼の体に異変が起きていた。体から電気のようなエネルギーが放出されるようになり、自分でうまくコントロールすることもでいない。

そんな時、マックスの前に「スティール」と名乗る球体のエイリアンが現れる。スティールはマックスがコントロールできないエネルギーを吸収し、両者の波長が合わさった時、マックスはスーパースーツを身にまといスーパーヒーロー「マックス・スティール」に変身する。

突如発現した特殊なパワーに戸惑いながらも、マックスとスティールは追いかけてくる謎の集団の追撃をかわしながら、地球の存亡を脅かすほどの危機が迫っていることを知る。そしてマックスは父の 死と、自らの出自に向き合うことになる。

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アンディ・ガルシアには気をつけろ!

日曜の朝は「特撮ヒーロー」で育ち、大人になってからもアメコミ映画を見続けている人たちにとって『マックス・スティール』は決して驚くような作品ではない。

乱暴に行ってしまえば『スパイダーマン』的な父性コンプレックスを抱える少年を主人公に、『スーパーマン』的な世界観のなかで、『仮面ライダー』などの日本の特撮作品のヴィジュアルを多いに利用した結果が、『マックス・スティール』だった。そして突然宇宙からやってきたエイリアンが自分と切っても切れない存在となる設定は漫画『寄生獣』も想起させる。

敵役の造形やアクションシーンなどには日本の特撮シリーズと、それらを輸入して作られた『パワーレンジャー』のような作品からの影響は色濃く、スクリーンで見ることよりも家で家族揃って鑑賞されることを前提にしているような気もする。

とまあ、オリジナリティに関してはあまり褒められたものではないのだが、アメコミ映画に代表されるような大人向けヒーロー映画とは違って、重苦しいテーマや政治的正しさなんてものは最初から考慮されておらず、その点においてヒーローの覚醒と活躍に絞った興奮を楽しみにしている視聴者には過不足ない作品とも言える。

特に凸凹コンビだったマックスと、球体飛行型エイリアンのスティールが合体して「マックス・スティール」が誕生する瞬間はやはりアガる。しかもちゃんと地面での三点着地も披露してくれており、さすがアクションフィギュアから誕生したヒーローだけあってヴィジュアルのかっこよさは際立っている。主人公のマックスは16歳という設定なのだが、どう見ても20台後半の大人にしか見えず、回想部分でもキャストが現時間とほとんど変わっていないという「 老け」問題を差し引いても、ヒーローの特撮感はしっかりと描かれている。

しかし本作の最大の難点というのはキャスティングだった。対象年齢が低い作品なのはよくわかるが、安易にアンディ・ガルシアを使うのはやめてもらいたい。彼の最近の低空飛行ぶりに関係なく、あの顔相はどの角度から見ても悪役にしかならない。誰がどう見ても悪党だ。出オチとはまさにアンディ・ガルシアのことで、彼が登場することで簡単に物語の終わりが透かし見えてしまう。

前述の通り本作は劇場興行的には全く話題になることもなかった。しかし根強いフィギュアのファンや特撮層は、おそらくDVDやVODという形態で自宅で鑑賞することになるのだろう。劇場で稼げなくても、最終的に玩具が売れればいいという狙いの作品とも言える。ならばもっと冒険すべきだった。いっそのことアンディ・ガルシアが実はいい人だった、くらいの変化球は試せたはずだ。

現在の特撮ファン層とはマーベルもDCも当たり前のように鑑賞した上で特撮的要素を重要視している人々だとするのなら、そのハードルは本作の制作サイドが思っている以上に高いものであるはずだ。それを越えようとする意思をもっと前面に出して欲しかった。

『マックス・スティール』:

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マックス・スティール
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