ロサンゼルスで開催された『沈黙 -サイレンス-』の映画関係者向け試写会からレポートが到着!マーティン・スコセッシ監督の他にアンドリュー・ガーフィールドやイッセー尾形らも参加!
現地12月4日にロサンゼルスで開催された『沈黙 -サイレンス-』の映画賞ノミネートを目的とする関係者向け試写会の模様をお伝えします。映画賞への投票権を持つジャーナリストや組合員らが出席し満席となった試写会にはマーティン・スコセッシ監督をはじめ、出演者のアンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソン、イッセー尾形、プロデューサーのアーウィン・ウィンクラー、編集のセルマ・スクーンメイカー、撮影監督のロドリゴ・プリエトらも参加。上映後にはQ&Aが行われました。
マーティン・スコセッシ監督30年越しの夢の完成
「1988年に遠藤周作の『沈黙』を読んで以来、映画化したいと思っていた。最初に脚本を書いたのが1991年だから、30年越しの企画となった」とスコセッシ監督が語ると、長年監督とタッグを組んできたプロデューサーアーウィン・ウィンクラーは「『ヒューゴの不思議な発明』の撮影現場に行ったとき、長年『沈黙-サイレンス-』の脚本が宙ぶらりんになっているけど、どうなっているんだい? と聞いたんだ。そうしたら、なんで? 興味あるのかい? って聞かれて、それが始まりだった。こんなに大変だとは思わなかった」とスコセッシ監督の夢の実現に関わった経緯を明かしてくれた。
これまで何度も企画を立ち上げるも頓挫してきた『沈黙』の映画化だったが、監督のキャリアにとっては異例とも言える内容と成功を収めた『ヒューゴの不思議な発明』の撮影時の何気ない一言が夢の実現の一歩だったという。
そして監督にとっての夢の企画に参加した主演のアンドリュー・ガーフィールドは、「俳優として、これまでで一番素敵な経験をさせてもらった。監督が作る安全な環境は素晴らしく、何をしても間違いはないという気持ちで臨めるんだ。おまけに彼は、最も危険で、不快で、全く未知なものを望むけど、ぼくにそれをできるようにさせてくれるんだ」と語った。
カメラが語るスコセッシ・メソッド
キリシタン弾圧下の長崎を舞台とする作品だけに目を覆いたくなるような拷問シーンも登場する本作だが、撮影監督のロドリゴ・プリエトはスコセッシ監督とともにどのように緊張感を演出していったのかも語ってくれた。
「マーティンはロケ先に行く前にものすごく精密なショット・リスト(それぞれの場面でどういう映像が必要かをリストアップしたもの)を作成する。そして、そのショット・リストについて綿密に話し合い、ロケ先で常にリストを確認しながら撮影を進める。カメラを2台同時に使って撮影することも多く、そういう時は『このシーンがどういう風に進むかわからないから、とにかくピントが合っているようにして後は成り行きに任せよう』って彼は言うんだ」とロドリゴ・プリエトがコメントするとマーティン・スコセッシ監督が「あるシーンでは、閉所恐怖症のような感覚と渡り合わなければいけない撮影もあったからね。そういうシーンの撮影では、カメラを置ける場所が限られていた。ロケ先では、カメラ位置を自由に決めることができる場所もあれば、かなり限られてしまう場所もあったんだ」とフォローを入れた。
監督「映画で観るイッセー尾形の演技はすべて彼が考えたものだ」
そして劇中では井上筑後守を演じたイッセー尾形についても賞賛の声が多く寄せられた。
マーティン・スコセッシ監督は、「映画で観るイッセーの演技はすべて彼が考えたものだ。扇子でハエを追い払うアイデアや頭を扇子であおぐ動き、ぬかるみにハマる動きもそうだよ。素晴らしかった」と、その演技を絶賛。その言葉を受けてイッセー尾形は、「マーティンは新しいことをトライするのが好きなんです。だからいろいろやってみせると『素晴らしい! もう一回!』とテイクを重ねるんですよ(笑)」と言って、会場を湧かせた。
また英語セリフ以外での苦労について聞かれたイッセー尾形は「苦労したことは一つもなく、全部楽しかったです。楽しいから、井上をもっと複雑に面白く、チャーミングにするにはどうしたらいいだろうって考えていました。先ほど監督が僕の演技のアイデアについてコメントしてくださいましたが、現場で監督がもっとやろうよっという空気を出してくださったからこそできた。僕を全面的に信頼してくれていると分かるからこそ、引き出してもらえるんです。そういうことがいっぱいありました。頭をあおぐのもその一つでした。演技のアイデアは、全部現場で思いつきました。アドリブというよりも、井上になりきれたからなんです。全身で、井上にならせてらえたからこそできたんです」と監督との強い信頼関係を明かしてくれた。
そして劇中では棄教を迫る拷問の先導役であるも、かつては自身もキリストを信じていた経験も持つという井上筑後守役については「単なる悪役をやると薄っぺらい人物になってしまうから、悪役から逃げようとした。井上は追い詰める役でしたが、僕自身は悪から逃げようと務めた。本作は、悪とか善とかだけの話ではなく、もっと深い、追い込まれた人間の話。だからこそ、悪役は単なる悪だけじゃない方が作品に深みが出ると思ったんです」と作品のテーマと重ねて語った。
LA批評家協会賞ではイッセー尾形が助演男優賞の次点に選出されるなど、今後の賞レースでもその名前が聞かれるのを楽しみにしたい。そしてこれまで数々の傑作でカソリック教徒としての自身の独特な宗教観を表現してきたマーティン・スコセッシ監督にとって本作は、その集大成となることが期待される。
なぜ神は沈黙するのか?
話題作『沈黙 -サイレンス-』は2017年1月21日(土)より全国ロードショー。
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取材:Izumi Hasegawa/ Hollywood News Wire Inc.
文:編集部
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