マーク・ウォールバーグとウィル・フェレルが共演するコメディ『パパVS新しいパパ』のレビューです。『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』以来の共演となる真面目バカとワイルドバカの二人の父親によるアツい家庭内戦争を描くコメディ。
『パパVS新しいパパ/Daddy’s Home』
全米公開2015年12月25日/DVDリリース2016年6月23日/コメディ/96分
監督:ショーン・アンダース
脚本:ショーン・アンダース、ブライアン・バーンズ、ジョン・モリス
出演:ウィル・フェレル、マーク・ウォールバーグ、リンダ・カーデリーニ、ほか
レビュー
乱暴に要約してしまえば本作『パパVS新しいパパ』は「ウィル・フェレル的映画」の一言で説明ができてしまう。『オースティン・パワーズ』や『ズーランダー』などの有名映画ではなくとも、ウィル・フェレルが主演する「俺たち」シリーズが日本でも根強いファンを獲得してからというもの、嬉しいのか悲しいのかわからないが、彼の新作の説明はほとんど「ウィル・フェレル的コメディ」で済むようになってしまった。
でもそれではレビューサイトを運営している意味が薄れてしまうし、せっかくDVDを仕入れてまで見たのだから何かと言い添えたいこともある。
ウィル・フェレル主演のコメディには必ず対照的存在が必要とされる。それが一連の主演作に「俺たち」とバディ風味を加えられている理由にもなっているし、日本のお笑い風にいうのなら古典的な「ボケとツッコミ」という形式ではなく「笑い飯的」なボケがボケを誘い、さらにボケが加速していく形に近いとも言える。そしてウィル・フェレル主演最新作『パパVS新しいパパ』で彼の相手役、つまりは彼のボケを加速する相手として選ばれたのはマーク・ウォールバーグ、、、、『ブギーナイツ』や『ザ・ファイター』の俳優というよりも、「ウィル・フェレル的」には「2010年に『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』で共演したあのマーク・ウォールバーグだ。
ストーリーも「フィル・フェレル的」で、子持ち女性と結婚したウィル・フェレルが、マーク・ウォールバーグ演じるワイルドな前夫と子供たちの支持をかけて戦うという内容で、ウィル・フェレルが相変わらず糞真面目なアホで、マーク・ウォールバーグもワイルドだけどアホという『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』とほとんど同じ設定となっている。
加えて『なんちゃって家族』や『モンスター上司2』というアホコメディを監督したショーン・アンダーソンがメガホンを取るわけで、二人のコメディ上の掛け合いが徐々にインフレしていく様は、この手のコメディの愛好家にはお馴染みのものだろう。
例えば大型バイクに乗るマーク・ウォールバーグに子供達が羨望を視線を送れば、負けじとウィル・フェレルは大型バイクに跨るも運転なんてしたことないから我が家を突き抜けて、危うく死にかけてしまう。他にもスケボーをやってみれば加減がわからず、電線に飛び絡まってしまい感電死寸前になってしまうなど、映画の大体の説明は予告編で済んでしまう。
ウィル・フェレル的コメディを好んでいる一人として本作をわかりやすく説明するならウィル・フェレル的映画のなかでもダメな部類のコメディとなる。確かにギャグのひとつひとつはしっかりと笑えるのだが、いかんせん話のスケールが真面目すぎる。子持ちとの結婚というアメリカでは珍しくなく、だからこそ一般化される問題を、コメディ的に拡大したというだけの作品で、『俺たちフィギュアスケーター』や『俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員!』にあった、どれだけバカをやっても受け止めてくれる設定の寛容さがない。
また今やアカデミー賞に関わるまでに出世したアダム・マッケイ監督の『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』や『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』にあった、バカはバカでも社会システムを信じきっているバカよりはマシだよね、という毒っ気も本作にはない。
同じウィル・フェレル映画でも
『Get Hard』の方が断然に笑えた。それでもマーク・ウォールバーグとの共演ということで時系列的には後になる本作の方が早く日本紹介されることになっているが、もう十年ほど同じようなスタイルの映画を作り続けているのだから、どこかの部分で激しく突き抜けてもらわないと退屈になる。
マーク・ウォールバーグとの共演も新鮮さがなく、ウィル・フェレル的コメディとしての激しさも足りない。日本で首を長くしてハリウッドコメディを待つファンの期待値を超えられるとは思えない作品だった。
『パパVS新しいパパ』:
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