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ブラッドリー・クーパー主演『二ツ星の料理人』レビュー

BURNT TOPPER 01

ブラッドリー・クーパー主演『二ツ星の料理人/Burnt』のレビューです。性格は最悪だが料理の腕はピカイチのフランス料理のシェフがトラブルで何もかも失ってから、もう一度シェフとして再起を目指す料理ドラマ。共演はシエナ・ミラー、ダニエル・ブリュール。ブラッドリー・クーパーの流暢なフランス語にも注目。

『二ツ星の料理人/Burnt』

全米公開2015年10月30日/日本公開2016年6月11日/ドラマ/101分

監督:ジョン・ウェルズ

脚本:スティーヴン・ナイト

出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、オマール・シー、ダニエル・ブリュールほか


レビュー

ブラッドリー・クーパーが性格に問題を抱える凄腕のシェフを演じる『二ツ星の料理人/Burnt』は、鑑賞前に予想した映画の出来栄えから何一つ加えられるものもない、想像通りの映画に仕上がっている。

本作の脚本家スティーヴン・ナイトは「料理」を書くのが好きなようで、クローネンバーグ監督作『イースタン・プロミス』でも食事シーンが印象的に使われていたし、2014年には山間のフレンチ・レストランを舞台にした『マダム・マロリーと魔法のスパイス』では料理を偏見のないコミュニケーションとして描いていた。本作では天才シェフの七転八倒を通して、彼の手から作られる料理に淀みがなくなっていく過程を描いている。監督は『カンパニー・メン』のジョン・ウェルズ。長くTV監督をしてきただけあって、2時間を優に切る尺で物語を収めている。

物語は以下のように進んでいく。

フランスのミシュラン星付レストランのシェフ、アダム・ジョーンズ(ブラッドリー・クーパー)はある日牡蠣剥きをしている時に突然厨房から消えてしまう。その後もシェフとしてトラブルを起こしまくったアダムは、旧知のレストランオーナー(ダニエル・ブリュール)を訪ね、彼がオーナーを務めるパッとしないレストランを救う変わりに、自分のレストランの開業を手伝うように求める。

過去に共に働いた訳あり料理人たちをかき集め、そして新しい仲間も加えてとうとう念願のレストランはオープンする。オープン当初はつまずくも、その後は好評を獲得する。

そしてとうとうミシュランの審査員が訪れるという頃にアダムは最大のピンチに見舞われる。

Burnt poster

ということで物語そのものに特筆すべき点は何もない。主演のブラッドリー・クーパーがこれまで何度も演じてきた、「癖は強いが根はいい奴」という役者としてのパーソナリティに、「天才シェフ」という肩書きを乗せただけで、物語の展開によって観客を惹きつけることを目的とした映画ではない。自信家の男が挫折を経験することで本物のシェフと成長していく過程を描くことが本作の主要な目的であり、料理や恋愛といった要素はフランス料理のソースほどの重要性もない、いわばその料理を提供するレストランの内装や雰囲気程度のものだ。

一方で最良のフランス料理にとっては料理が提供されるまでの料理以外の要素もまたミシュランの審査対象となるほどに無下にはできない。場違いなBGMが流れ、排気ガスの匂いで満たされ、センスの欠片も見出せないチープな複製絵画が掛けられたレストランでは、どれだけ最高の料理が提供されたとしても最良のフランス料理とはならない。それらは目的ではなくとも、目的を達するためには必要不可欠な要素でもある。そして本作はメインディッシュ以前の問題として、そこに至る前のサービスが三流程度のものとなっている。

やがてアダムは勝気だが優秀な女性シェフと恋に落ちる。正確には唐突に恋に落ちる。そして唐突にトラブルに襲われる。因果応報とは言えたった10分ほどの間に、様々な出来事が唐突に重なっていくとなれば、作品の印象は定まらない。

厨房を舞台に繰り広げられる料理の格闘もジョン・ファブローの『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』に比べるとその匂い立つような美味には遠く及ばない。映画を通してこのシェフが作った料理を食べたいと強く思うこともない。

細部もいい加減なら、主人公の成長物語としても中途半端で嘆かわしい。彼の窮地を救うのはいつだって他人であり偶然であり誤解である。こんな物語に価値があるとすれば、それはブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、オマール・シー、ダニエル・ブリュールという人気俳優たちが始終眺められるということと、ブラッドリー・クーパーのエクサンプロヴァンス仕込みの流暢なフランス語くらいのものだ。

冒頭で本作を想像通りの映画と評した。普通の映画を普通に楽しむ機会が少なくなっている映画界において、普通の映画というのは時には褒め言葉にもなるが、本作は想像通りに普通の映画だったということで評価に値しない。

原題の「バーント/Burnt」とは「焦げ」や「やけど」を意味するのだが、見終わった後には何の形跡もなく忘れ去ってしまうような一作だった。

『二ツ星の料理人/Burnt』:

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Burnt cb

ということでブラッドリー・クーパー主演『二ツ星の料理人/Burnt』のレビューでした。何なんでしょうか、とにかく登場人物の関係性がまったく描けていないから、驚きの展開になっても「ふつーう」、幸運に出会っても「ふつーう」と作品に一切感情移入できません。これだけ人気俳優を出演させておいて、誰にも共感できないとかどういうことでしょう。俳優さんたちが可哀想な一作です。ブラッドリー・クーパーファンの方にはオススメです。以上。

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二ツ星の料理人
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