全編をパソコンの画面上で描いた『アンフレンデッド/Unfriended』のレビューです。アメリカでも問題となっているSNSで交わされる見えない「いじめ」が生んだ悲劇とその罰が描かれる新感覚ホラー。「Skype」や「facebook」といった若者の必須ツールが抱える問題点をホラー映画として描いた作品。全米では製作費の30倍以上を売り上げるヒットを記録。
『アンフレンデッド/Unfriended』
全米公開2015年4月17日/日本公開2016年7月30日/アメリカ映画/83分
監督:レヴァン・ガブリアゼ
脚本:キール・キムジー
出演:シェリー・ヘニング、レニー・オルステッド、ウィル・ペルツ他
あらすじ
ある日、高校生のローラは学校で拳銃自殺した。酔っ払った自分の醜態がインターネット上に流出したことを苦にしての悲劇だった。そしてその一部始終は携帯で撮影されており、それもネット上で閲覧できる状態だった。
ローラの幼馴染で同じ高校に通っているブレアーは恋人のミッチとSkypeで会話していると、誰も承認していないのに、突然他の友人たちが会話に割り込んできた。そしてそこには登録していない見知らぬ誰かのアカウントもスクリーンに映し出されていた。やがてその見知らぬアカウントは、死んだはずのローラを名乗り出す。
悪質な嫌がらせだろうと思うも、ブレアーのパソコンはローラを名乗る謎のアカウントにコントロールされてしまう。しかしコントロールされたのはパソコンだけではなかった。
ローラの死にまつわる隠された嘘。そのひとつひとつが明らかになるたびに、Skypeに参加している仲間が謎の死を遂げていく。
疑心暗鬼になる仲間たち、そして明らかになる真実。他愛のなかったはずのイタズラは、少女の死によって後戻りのできない恐怖の惨劇を招くことになる。
レビュー
「いじめた奴らは皆殺し」道徳的なスラッシャー
本作は全編がパソコンのカメラが映し出したスクリーン上の映像で構成されたシチュエーション映画で、今の若者には必要不可欠な「Skype」や「Facebook」といった新世代の「繋がり」ツールを利用した新感覚のホラー映画。誰かと容易にネット空間だけで「繋がる」ことができる故に問題となっている「ネットいじめ」を恐怖体験の理由に置きつつも、容易に「繋がる」のは人間だけでない、、、、という設定もなかなか深い。またネット上で構築された関係というものには「嘘」が簡単に入り込んでくるということや、画面を通じてでは本当の姿は理解できないというテーマも、非常に現代的な風俗に基づいている。
ある日、学校の校庭で拳銃自殺する少女は、別にいじめられっ子というわけではなかった。容姿に優れて、友人も多かった。それでもたった一度の醜態がネット上に流されたことで、彼女はあっけなく死んでしまう。あまりに突然の悲劇だけで、彼女の死に少なからず関わった同級生たちも自分たちの行為を「悪意はなかった」という自己弁護で納得してしまう。そして「悪意はなかった」からこそ彼ら彼女たちは、友人の死の理由から目を反らし続け秘密を保持し続ける。
若者文化の負の側面にフォーカスした設定や、ホラー映画でありながらパソコンを通して右往左往する高校生たちの滑稽さ(ホラーでありながら爆笑できる)、そして「Skype」という同じスクリーンを仲間たちで共有できるシステムを映画のスクリーンと同期したアイデアなどが、本作のホラーミステリとしてのストーリーの弱さをしっかりと補っている。
しかしこの映画の最大の問題は、残念ながら、怖くない、ということにある。
これはホラー映画が道徳的であることの最大の難点で、被害者側のモラルの欠如が明らかになるに従い感情移入ができなくなるから、物語が進むにつれて恐怖感が徐々に薄まっていく。何ならもっとやれとも思ってしまう。悪意もなく他愛もない軽はずみな行為が大きな恐怖を生むという構図はホラー映画の定番であるが、本作で描かれる恐怖の契機とは決して「悪意はなかった」では済まされないものとして描かれている。だから本作の顛末が、因果応報、なんとも道徳的なのだ。
アイデアや設定が素晴らしかった分、もう少し「恐怖」表現にもこだわって欲しかった。ホラー映画が道徳的であることは間違ったことだとは思わないが、捻りようはあったはずだ。「いじめた奴は皆殺し」って、そんなの当たり前ですから、想像の世界では。
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ということで『アンフレンデッド/Unfriended』のレビューでした。今年のSXSWで話題となった新感覚ホラーということでかなり楽しみにしていたのですが、Skypeとかあまり使った事がないネット音痴には、あまりピンとこなかったですし、何より怖くない。全然、怖くないぞ。しかもホラー映画なのに何度か爆笑したぞ。怖くて笑ってしまったという「怖笑い」ではなく、純粋に高校生の仲間割れは面白かったぞ。しかし、それでいいのか、ホラー映画だぞ。でも本作で描かれる「ネットいじめ」という新しい問題と身近に接している若者からすれば、そこにはしっかりとしたリアリティがあるのかもしれません。1億円の製作費で32億円以上の売り上げを記録したのだから、やはり魅力はあるのでしょう。なお、続編の製作も決定しているので、機会があれば是非ご鑑賞あれ。
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