『マッドマックス/怒りのデス・ロード』の大躍進の影で、あの人やこの人、そしてまた起きてしまった残念な問題など、相変わらず話題ずくめだったオスカーのノミネート作品発表。そのなかから今回の4つの驚きを紹介します。
アーロン・ソーキンとクエンティン・タランティーノの落選
今回のノミネート作品群のなかで二番目に大きな驚きが、脚本と脚色でノミネート間違いなしと思われていた『スティーブ・ジョブズ』のアーロン・ソーキンと『ヘイトフル・エイト』のクエンティン・タランティーノがどちらも落選したことです。ふたりともすでに受賞経験者ということや、『スティーブ・ジョブズ』は興行的に失敗し、『ヘイトフル・エイト』も脚本が流出する事件が起きるなどい、ネガティブな話題が多かったことも関係しているのかも。
それでもこの2作品は脚本の素晴らしさがひしひしと伝わる作品でしたので、ノミネートからも落ちるとは驚きです。
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『キャロル』と『ストレイト・アウタ・コンプトン』の作品賞落選
そして『キャロル』と『ストレイト・アウタ・コンプトン』の作品賞落選は前哨戦などから予想できたことですが、しかし論争を巻き起こしそうな話題でもあります。
『キャロル』は1950年代のニューヨークを舞台にした女性同士の恋愛を描いたドラマで高い評価を受けた作品です。賞レースの前半ではオスカー候補のひとつでもあった本作が落選し、一方で同じ50年代のニューヨークが舞台のひとつのアイルランド女性による古典的な恋愛を描いた『Brooklyn』が作品賞にノミネートされていることは、アカデミー会員の古い体質を象徴しているとも言えます。『Brooklyn』も素晴らしい映画でしたが遺恨を残しました。
そして『ストレイト・アウタ・コンプトン』の落選については、後に詳しく書きますが、今年のアカデミー賞には何かが決定的に足りていません。その象徴とも言えます。
リドリー・スコットの監督賞落選
監督賞の前哨戦となる全米監督協会賞の候補5人に選ばれたことからも監督賞ノミネートが有力だった『オデッセイ』のリドリー・スコットが、『ルーム』のレニー・アブラハムソン監督に押し出される恰好で落選となりました。
『オデッセイ』では職人的な技で作品をユーモアで彩っただけに前作などの不評作品たちが足を引っ張ったのでしょうか。
そして黒人のノミネートは?
去年に引き続き、というかここ最近は毎年のような話題ですが、今年はほぼ完全に白人にノミネートが独占されることになりました。黒人監督による黒人主演の『クリード チャンプを継ぐ男』からも助演のシルベスター・スタローンがノミネートされ、『ストレイト・アウタ・コンプトン』は作品賞からは無視され、選ばれた脚本賞でもジョナサン・ハーマンとアンドレア・ベルロは白人です。
他にも助演女優賞でのノミネートが期待されたトランスジェンダーたちの日常をインディペンデントに描いた『タンジェリン』や『ビースト・オブ・ノーネーション』のイドリス・エルバなど、期待された人々はそろって無視。
もちろんこれはアカデミー会員の志向の問題だけでなく、オスカーに向けてキャンペーンを行う製作や配給側にも問題があり、ハリウッド全体が取り組むべきシステムの問題と言えるでしょう。去年はハリウッドにおける男女のギャラ問題が浮き彫りになりましたが、今年はこの問題に声をあげる人がいるでしょうか。あげようにも白人ばかりの受賞になったら無理な話です。
これは驚きというよりも残念なニュースです。
第88回アカデミー賞の発表は現地時間2月28日(日本では翌日)に行われます。
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