山形ドキュメンタリー映画祭も折り返しを迎え、話題作なども上映。会場付近や喫茶店などで映画を熱く語る姿も見えますし、山形映画祭の夜の社交場、香味庵では深夜まで日本をはじめ各国の映画バカ(最高の褒め言葉です!)たちが監督や批評家を交えて、映画談義に花を咲かせています。
そして性懲りもなくマルケル。私はマルケルです。
・ 動き出す列車/The Train Rolls On 1971年製作
ソ連の伝説的映画監督アレクサンドル・メドヴェトキンのマルケルのインタビューを中心としたモンタージュ作品。列車で移動しては、列車内でポスト・プロダクションも上映まで行うソ連独特の手法を描く。マルケルの原点についてよく分かる価値の高い作品。
・一千万の闘い /The Battle Of Ten Millions 1970年製作
キューバのサトウキビ生産量1千万トン化計画の挫折を描く本作。カストロのカリスマがほとばしるも、結果としては挫折するキューバ革命後の状況を描く。マルケル自身の社会主義への共感が揺らぎはじめた姿を象徴する、彼のフィルモグラフィー上も重要な作品。
・空気の底は赤い/A Grin Without a Cat 1977年製作
この映画祭で最大の収穫が本作だった。オリジナル版は4時間を超えるも、上映作は後にマルケル自身によって編集された3時間版。世界各国の闘争の記録に『戦艦ポチョムキン』が挿入される。そして革命闘争が圧倒的な物量の前に呆気なく握りつぶされていく情景までをマルケルの編集によって描き出す、闘争の叙事詩。これについてはしっかりと書きたいです。
後期マルケルの代表作にして、『ラ・ジュテ』と並んで高い評価を受ける本作。日本とアフリカを繋ぐ、記憶と歴史、場所と時間を巡る詩的な映像作品。同時に他会場ではインター・コンペで最も話題になっている『殺人という行為』が上映されていながらも、小ホールは満員。DVDで発売されているので日本でも比較的見やすい映画だが、それでもこれだけの集客力はすごい。というか山形映画祭にはどれだけ物好きがいるのか想像もつかない。これもちゃんと書きたい。
ということで、マルケルの回顧上映も50年代から80年代の作品がそろそろ出揃いました。マルケルという映像作家が場所と時間を追い続けたことがよくわかった。そして90年代から9.11以後の作品がこれから上映される。完走まであと少し。
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