『ミニオンズ』のイルミネーション・エンターテインメントとユニバーサルがタッグを組んだ長編アニメ『ペット』のレビューです。飼い主と幸せに暮らす犬のマックスだったが、ある日飼い主が大型犬のデュークを連れて帰ってきたことで巻き起こる大騒動。続編製作も決定した大ヒットアニメ。
『ペット』
全米公開2016 年7月8日/日本公開2016年8月11日/アニメ/91分
監督:クリス・ルノー
共同監督:ヤロウ・チェニー
脚本:ブライアン・リンチ
声の出演:ルイス・C・K、エリック・ストーンストリート、ケビン・ハート、ジェニー・スレイト、エリー・ケンパー
レビュー
飼い主が外出している時、ペットはどんな風に過ごしているの?
本作はそんな素朴な疑問から出発する。マンハッタンのアパートでケイティという主人と一緒に暮らすマックスは、毎日がチョー幸せ。同じアパートに暮らす他のペットたちとも仲がいいし、とにかく主人のケイティが好きで好きでたまらない。そんなマックスにとって唯一の不満と言えば、ケイティとずっと一緒にいられないこと。彼女は毎日仕事に出がけ、夜まで帰ってこない。その間は、同じような留守番するペットの仲間たちと遊んだりするのだが、それでも寂しいのに違いがない。
ケイティと一緒に暮らせて幸せだからこそ、一緒にいられない時間が寂しい。
でもマックスは人間の言葉を話せないから、その想いは精一杯のアクションで伝えるしかない。ケイティが家を出る時はその寂しさを必死に伝え、帰って来ればその幸せを必死になって伝える。
マックスにとってそれは完璧ではないにせよ、満ち足りた日々だった。しかしある日、マックスを一匹で留守番させることを可哀想と思ったのか、ケイティが一匹の大型犬デュークを自宅に連れて帰ってきたことで状況は一変する。自分よりふた回りほど体の大きなデュークにマックスは闘志メラメラで敵視するも、デュークもまたマックスとの力関係をはっきりさせるためいきなりマウント状態で仕掛けてくる。
マックスがどれだけケイティに思い直すように訴えても、それは伝わらない。
ある日、散歩業者の手によって他のペットたちとマンハッタンに散歩にでかけたマックスとデュークは、ちょっとしたトラブルを起こしたせいで集団からはぐれてしまう。そして途中に野良猫集団に襲われたマックスとデュークは飼い犬の証である首輪を取られ、野良犬と勘違いされたために保健所に捕まってしまう。
やっとマックスの不在に気がついたペットの仲間たちはチームを結成し、マックス救出作戦を実行。その争いに反人間を掲げる過激な動物集団も加わり、事態はニューヨークを巻き込んだ一大事に発展していく。
果たしてマックスとデュークは無事にケイティをお出迎えできるのか!?
『ミニオンズ』のイルミネーションズが製作しただけあって、とにかく「楽しさ」を追求したアニメ映画に仕上がっていた。ここ最近のディズニーやピクサー作品に顕著な深度のあるテーマやメッセージに少し食傷気味の方には、ちょうどいい作品と言えるかもしれない。
物語はマックスとデュークという二匹の犬の諍いから始まり、やがては野良猫や、ニューヨークの地下に暮らし反人間主義的を掲げる暴力革命を目指す武闘派動物集団、そしてマックスやデュークの近所に暮らすペットたちによる救出作戦へと発展していく。主人公はマックスとデュークなのだけど、物語は思惑は全然違うが、とにかくこの二匹を追いかける集団たちによって展開していく。
本作ではあくまで動物が主人公なわけで、ペットたちの世界と、人間の世界の両方を動物目線から描くことで、動物たちの不幸な状況までも描いている。保健所に捕まったら終わりというペットの現実。そしてニューヨークの地下には人間から捨てられ虐げられたペットたちが怨念を燃やしながら生活を送っている。
描き方を間違えれば人間の不義理が強調されるアニメとなる可能性もあっただろうが、そんな状況でも力強く生きていく動物たちの姿がフューチャーされているためしっかりとコメディアニメとして成立している。
特にニューヨークの地下に暮らす反人間主義を貫く武闘派動物集団は、本作のヴィランという設定ながらも、よくよく考えれば彼らはただ生きようとしているだけで何も悪くない存在ということが「子供にでも」わかるようになっている。ディズニーやピクサーのアニメが子供の受け取り方と、大人の受け取り方を重層的に仕切っている反面、本作は子供にでも理解できる範囲でテーマを追求している。しかもその対象が犬や猫や様々な動物ということで、その愛嬌には子供も大人も関係なくイチコロなわけで、本当の意味で大人も子供も一緒に楽しめるアニメといえるかもしれない。
それでも90分弱の尺のなかで物語が目まぐるしく展開するため、しっかりと回収しきれていないプロットが散見される。特にデュークがなぜケイティに引き取られマックスとともに暮らすことになったのか、という部分はただ事実のみを伝えるのではなく、もっと深く描きこんでほしかった。そうすればマックスとデュークのバディ感がもっと強くなっていたはずでラストシーンも映えることになっただろう。
アニメが子供だけのものではない時代にあって、それでもアニメは子供(もしくは子供のような大人)のためにあるべきだ、というサービス精神に最初から最後まで貫かれた作品。夏休みのアニメとしては最適かもしれない。
なお全世界で大ヒットを記録したために続編が2018年7月13日に公開されることが早くも決定しています。
『ペット』:
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