ガールズアカペラに青春をかける個性豊かな女子大生たちの奮闘を描いた2012年全米公開のミュージック・コメディ『ピッチ・パーフェクト』のレビューです。同ジャンルの作品では『スクール・オブ・ロック』に次ぐヒットを記録し、全米で話題になった作品が続編に先立って日本でも公開されることに。日本公開は2015年5月29日です。
『ピッチ・パーフェクト/Pitch Perfect』
全米公開2012年9月28日/日本公開2015年5月29日/アメリカ映画/112分
監督:ジェイソン・ムーア
脚本:ケイ・キャノン
原作:ミッキー・ラプキン著『Pitch Perfect: The Quest for Collegiate A Cappella Glory 』
出演:アナ・ケンドリック、レベル・ウィルソン、スカイラー・アスティン、アンナ・キャンプ、エリザベス・バンクス他
あらすじ
大学に入学したばかりのベカ(アナ・ケンドリック)は音楽プロデューサーになる夢を強く持ったままで学生をするモチベーションがあまりない。それでも父親に半ば強制される形で、一年間だけでもどこかのクラブに属して大学生活を送るように促され、それでも学生を続ける意味を得られなければロスにでも行けばいいと言われる。
そしてベカはちょっとした出会いから女性アカペラグループに入ることになる。大学の女性限定のアカペラグループ「バーデン・ベラズ」には個性豊かなメンバーが集まっていた。そこで一緒にリンカーンセンターで行われる大学選手権に出場することを目標に練習に励む。
最初は乗り気でなかったベカも次第にアカペラの魅力に気がつき始め、そしてライバルでもある同じ大学の男性アカペラグループと切磋琢磨しながら、ともに全国大会を目指していく。
レビュー
『ブレイクファスト・クラブ』は最高、これだけは譲れない:
ガールズアカペラグループの奮闘を描き2012年に全米でヒットを記録した『ピッチ・パーフェクト』が、これまで日本ではソフト化さえもされないまま3年が経ち、全米でその続編が公開されるのに合わせて日本でもやっと劇場公開されることになった。日本では男性のための青春映画やコメディ映画は全く公開されないのに加えて、本作のような女性のためのミュージック・コメディ映画でさえもロクに劇場公開されないという悲劇が、本作が日本でヒットすることによって是正されることを望んでみる。
さて、あらすじを読めば一目瞭然だが、本作は米ヒットドラマの『グリー』のフォロワーのような位置付けである。しかしほとんどが女性目線で描かれ、またアカペラというスタイルが「ダサい」と思っているオルタナ風な主人公によって、その先入観が塗り替えられ、また確かに存在するダサい部分も修正されていく過程が描かれている。ストーリーに関してはこれといって特筆すべき点もなく、『スクール・オブ・ロック』のように音楽によって関係が作られ、音楽によって導かれるというこの手のジャンルの映画にはよくある内容となっている。
本作の魅力とはストーリー部分にはなく、やはりアカペラグループによるステージにそのほとんどを委ねている。きっとその部分に強く共感したか否かで本作の印象はがらりと変わるのでしょう。
音楽パフォーマンスがハイライトとなった作品だけに、なかなかストーリー面で厚みを出すことは難しく、そこで持ち出されたのが『ブレイクファスト・クラブ』だ。敢えて青春映画の金字塔を物語内で繰り返し言及し、あまつさえ、主人公の重要な心の変化を代弁させたりもする。おそらくは個性の違う女の子たちがアカペラによって結ばれて、心通わしていくという本編のストーリーを補完しようとしたのだろうが、それはちょっと表面的すぎる『ブレイクファスト・クラブ』理解のようで気になった。全く属する世界が違う5人の高校生がそれぞれの青春の葛藤をさらけ出す『ブレイクファスト・クラブ』の最大の魅力とは、今のこの想いが明日にはもうなくなっているのかもしれない、という青春期特有の不安定さと甘美さにあって、ただひたすら前向きな本作とは随分と違う内容となっている。この点は『ブレイクファスト・クラブ』への思い入れが強ければ強いほどに違和感となってしまう恐れもある。
前述したようにアカペラに青春をかける学生たちのパフォーマンスにどれだけ熱中できるかで本作の評価は分かれるだろう。女性たちが主役ということだが、男性視点でのパートもちゃんと用意されているので性別に関係なく楽しめると思う。そして本作でで「太っちょエイミー」を演じるレベル・ウィルソンは安定の面白さで、彼女の存在感に映画全体のトーンがかなり支えられている。
『アナ雪』のように、ハマった時の爆発力はとんでもないことになりかねない作品だということは間違いないでしょう。
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ということで『ピッチ・パーフェクト』のレビューでした。随分まえに見たことがあって、今回、続編が公開されるに合わせて見直したのですが、『グリー』にもハマれなかった自分としてはまあこんな感じかなという印象です。でも『ブレイクファスト ・クラブ』への言及がマイナスとなった訳ではなく、もうちょっとストーリー部分で意識して欲しかったということです。ここは敢えて女性グループに限定せずに、不良とか筋肉バカとかお嬢様とかが一緒にアカペラを強制させられて「大人、ファックユー」という展開になれば個人的には最高でした(そんなのは成立しないでしょうが)。本作は全米公開から遅れること3年弱、2015年5月29日に日本で公開されることになりました。でもね、問題は3年間もソフト化さえも棚上げされていたということ。劇場公開はいいことですが、それはないよ。
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