映画レビュー|『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』

歪みゆくアメリカン・ドリーム、、、。アンドリュー・ガーフィールド主演の『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』のレビューです。リーマンショック後に家を失ったことで道を踏み外していく男たちの姿を事実に基づきスリリングに描いた社会派ドラマ。共演はマイケル・シャノン。

99 homes poster

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち/99 Homes』

全米公開2015年10月9日/日本公開2016年1月30日/ドラマ/112分

監督:ラミン・バーラニ

脚本:ラミン・バーラニ、アミール・ナデリ

出演:アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン、ノア・ロマックスほか

作品解説

リーマン・ショック後のアメリカで住宅ローンの返済不能により自宅を差し押さえられた人々の実話をもとに、家族や復讐のために道を踏みはずしていく男たちの運命をスリリングに描き出した。シングルファザーで無職のナッシュは、ある日突然、不動産ブローカーのカーバーによって自宅を差し押さえられ、強制退去させられてしまう。長年暮らし続けてきた家を取り戻したいナッシュは、カーバーが持ちかけてきた儲け話に乗ることに。それは法の穴をすり抜け、自分と同じような境遇の人々の家を差し押さえて大儲けするというものだった。家族に真実を言いだせないまま、大金を稼いでいくナッシュだったが……。

引用:eiga.com/movie/83433/

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レビュー 歪みゆくアメリカン・ドリーム

オープニング、リーマンショックを理由に住宅ローンが払えなくなった若いシングルファーザー(アンドリュー・ガーフィールド)が一瞬の間に家を失い、文字通りの一家がホームレスとなる。突然保安官を伴って現れた不動産ブローカー(マイケル・シャノン)が立ち退きを要求し、彼らは「2分間のうちに身仕舞いを済まし立ち退くか、不法占拠で逮捕されるか」を選択される。

本作は「1%の富裕層が世界の富を独占し、99%を貧困化させている」というノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者ジョセフ・E・スティグリッツの説をもとにした作品で、リーマンショックを契機とする住宅ローンの返済不能によって自宅を失いホームレスとなっていった実際の人々の姿をベースにしているのだが、これがアメリカの真実なのかと思うと身震いする。

ある日、突然家を失ったナッシュ(アンドリュー・ガーフィールド)は母親と一人息子と一緒にモーテルに避難する。そして後日、自分たちから家を奪った不動産屋に抗議に向かうも聞き耳を持たれず、逆に自分と同じような境遇の家族から家を取り上げるための手伝いを日銭のために依頼されることになる。そしてその働きぶりを気に入った不動産屋のカーバー(マイケル・シャノン)はナッシュに大金を匂わせて、自分の右手として働くように求める。

それは不法なやり方で支払い能力を失った家族から家を取り上げて儲けを得るという汚い仕事だった。すべてを失ったナッシュは金のため、家族のために、道を踏み外していく。

99 homes

この十数年の間にアメリカン・ドリームは本当の夢となってしまい、リーマンショック後のアメリカにおいてはもう幻と言えるのかもしれない。

その理由はまさに「1%の富裕層が世界の富を独占し、99%を貧困化させている」その現実にある。少数の成功者が大多数の人々から薄利を巻き上げた結果がウォール街の暴走でありリーマンショックであり、そして現在のアメリカの姿でもある。ブラッド・ピットやクリスチャン・ベイルらが共演した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で描かれているのがその一部の成功者たちの裏の表情だとするのなら、本作『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』で描かれるのは搾取され転落していく99%の人々のリアルな苦悩だ。

アメリカン・ドリームとはアメリカが移民たちの寄せ集め国家という弱点を、 出自や過去に関係なく成功する機会が与えられる国家という魅力へと反転させた象徴だった。アメリカン・ドリームを手にするにはもはやアメリカ人である必要すらなく、例えばオーストリア出身のボディビルダーが合衆国最大の人口を誇るカリフォルニア州の知事にすらなれてしまうように、アメリカで成功するという意志さえあれば誰にでも可能性が与えられたいたはずだった。

そして勝ち取った成功とは誰かの不幸を土台にして成立したものではなかった。その利益は横取りしたものでもなく、自分で勝ち取ったもので、誰かから後ろ指を指されることではなかった。それどころかゼロから成功した自分の姿が誰かの希望となるのがアメリカン・ドリームの体現者たちだった。

一方で現在のアメリカで成功しようとするとどうなるだろうか。1%の人々が富を独占する社会にあって、成功とは多くの場合、その1%の狭き門に入り込むことを必要とする。つまり99%の人々を搾取するしか道はない。正確には先に居座る1%の成功者たちよりも「えげつない」方法で99%から搾取する必要がある。本作の主人公ナッシュはまさにその道を歩んで行く。彼の望んだ形とは違うにせよ、彼は昨日よりも豊かに今日を生きようとした結果、倫理的に破綻した道へと歩みだしていく。これが現在のアメリカン・ドリームなのだろうか。

本作で描かれる汚れたアメリカン・ドリームは、やり方や働き場所が違うだけでリーマンショックを引き起こしたウォール街の金融マンたちと全く同じ構図だ。自分が新しい1%となるために皆がこぞって99%の弱者から搾取をした結果、99%の人々は文字通り空っぽになった。取り上げられるものも、搾取されるものもなくなり、残ったのは絶望と怒りだけとなった。

こうして大多数の人々の利益をかすめることで成立していた一部の成功者のビジネスモデルは崩壊する。本作のラストで描かれる成功を求めた人間の内的な崩壊とは、あの日、リーマンショックが起きたことで呆然となった金融マンたちと似ている。ただしウォール街の連中とは違い、彼にはやり直す権利はおそらくもうないのだ。

リーマンショックからも回復を見せるアメリカ社会はまた同じ道を歩もうとしているのかもしれない。リーマンショックとはあくまで新しい成功者たちが淘汰されにだけに過ぎなかった。本作のラストがこれほどまでに虚しいには、この物語に存在する大きな問題は何も解決されずに、終わっていくことだ。倫理的に悩んだものが退場し、搾取することに躊躇いもない連中は居座り続ける。そしてそれこそが現在の社会が抱える病巣そのものなのかもしれない。

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』:

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ということで『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』のレビューでした。これは本当に気持ちが沈み込む重い物語です。雪だるまのように転落していく男をアンドリュー・ガーフィールドが熱演していますが、彼もまたある意味においては被害者であり、その被害意識から道を誤っていく過程が描かれるため、救いというのがありません。でもこれがアメリカの現実であり、日本の未来なのかもしてないと思うと何とも陰鬱な映画です。それでもこれはオススメです。日本公開も決まっていますので是非とも劇場でご覧ください。以上。

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ドリーム ホーム 99%を操る男たち
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