人間とゾンビとヴァンパイアが共存していた町に突然エイリアンがやってきた!これまでの秩序は崩壊し、対立する人間とゾンビとヴァンパイアだったが無慈悲なエイリアンを前に結束する、、、、系映画『フリークス・シティ』のレビューです。難しいこと言わずに爆笑しました。
『フリークス・シティ/Freaks of Nature』
全米公開2015年10月30日/日本公開2017年1月24日/コメディ/92分
監督:ロビー・ピッカリング
脚本:オーレン・ウジエル
出演:ニコラス・ブラウン、マッケンジー・デイヴィス、エド・ウェストウィック、ヴァネッサ・ハジェンスほか
レビュー
もはやただのゾンビ映画なんてクソほどの価値もない。そんなもんはここ数年で一生分は観た。同じことはただのヴァンパイア映画にも言えるし、宇宙人の地球侵略映画にも言える。それまでバラバラだった人間たちが共通の敵に遭遇することで人類の絆を再確認しながら手を取り合い巨悪と戦うとか、そんなプロットにももう飽き飽きなのだ。そこで頭のいい映画人が画期的なアイデアを実践したのが本作。まさにブレイクスルーなアイデアだ。
本作には人間もゾンビもヴァンパイアもエイリアンも出てくる。やっぱりゾンビもヴァンパイアもエイリアンも登場しない映画なんて寂しすぎる。それなら全部出せばいい。しかもそれらが全日の新春恒例バトルロイヤルみたいに「隣のあなたはやっぱり敵」みたいな冷血さで戦うなんて最高じゃないか。でもどうやってそういうクレージーな状況を作ればいいのだろう。これはなかなか頭の痛い問題だ。最高の役者たちはそこに存在するのに、そこに至るまでの現実的なストーリーがない。ならば無理にでも作ればいい。
そういったアメリカンな潔さのもとで、本作では人間とゾンビとヴァンパイアが「共存」している街を舞台にしている。しかもティーンの憧れをスクールカーストに持ち込んで、ヴァンパイアが上位カーストで、人間は中位、そしてゾンビを最下層に置くことにした。人間の女の子たちはヴァンパイアの男子に憧れ、内気な高校生男子はヴァンパイアに虐められ、辛くなって何の感情を持たないゾンビに共感したりする。
そんな風に街は人間とゾンビ、そしてヴァンパイアによる微妙な平和が保たれていたのが、そこに第4者であるエイリアンが地球侵略にやってきたことから、人間とヴァンパイアとゾンビによる勢力争いが勃発してしまう。つまりエイリアンと戦う前に人間とヴァンパイアとゾンビが内輪もめしてしまったのだ。まあ、何というかメチャクチャな話だが、もともとはセス・ローゲンたちと馬鹿ばかりやっていたジョナ・ヒル初監督作品として企画され、その後『マネーボール』やら『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などの立派な映画に出演して味をしめたために製作が中断され、監督を変えることでやっと完成にこぎつけた作品なのであまり真面目に考えるのもどうかと思う。
とにかく俺たちが好きなものを全部ぶち込んだ映画なのだ。もちろん童貞だって登場する。
本作の主人公は高校生3人だ。上の写真に写っている3人で、もともとみんな人間だったが、女の子は憧れのヴァンパイアに騙されてヴァンパイアになってしまい、もう一人は家庭環境に悩み人間を続ける気力がなくなりゾンビになった内気な高校生。そして唯一人間のままの高校生は童貞だ。
エイリアンの襲撃にあって世界中が火の海になるなか、人間とゾンビとヴァンパイアが血みどろのバトルロワイアルに突入する。
最初の30分は何も起きなくて、そこから人間、ヴァンパイア、ゾンビの血みどろの殺し合いが始まり、やがて別々のスクールカーストに属していた主人公3名(人間、ヴァンパイア、ゾンビ)による、エイリアンの襲来から逃げながらの『ブレックファスト・クラブ』展開になっていく。ということで何ともジェットコースターな作品なのだ。だがしかし、「悪ふざけ」というトーンは清々しほどに一貫している。
地上で争っていた人間とヴァンパイアとゾンビだったが、エイリアンの攻撃の前に街は壊滅状態にってしまう。ここへきて彼らははじめて悟るのだ。内輪もめしている場合ではない。今こそ人間とかゾンビとはヴァンパイアとかの垣根を越えて地球人として結束すべきなのだと、、、、、。
そしてトンデモないスラップステッィク展開ののち、トンデモない変身展開になって、最後はホロリとした感動が待っているとか、自分で説明していてどんな映画なのかさっぱりわからなくなりそうなのだが、とにかく近年のゾンビ映画多様化のなかでも悪ノリ度は特出している。描写が残酷だとかそういうことではなく、とにかくバカが過ぎるのだ。
やはりジョナ・ヒルが初期に関わっていただけあって、セス・ローゲンやジェームズ・フランコ周辺のノリを彷彿とさせ、『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』(2013)などで爆笑した人にはもってこいのバカコメディとなっていた。序盤はクソほどつまらないのだが、30分を越えてからラストの大どんでん返しまでは爆笑の連続となっている。
こんな馬鹿げたユニバーサル映画へのオマージュが可能だと爆笑するだけでも価値のある作品だと思う。
『フリークス・オブ・ネイチャー(原題)』:
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