2012年に全米で大ヒットを記録し社会現象とまでなった女性アカペラグループの奮闘を描く作品の続編『ピッチ・パーフェクト2』のレビューです。前作では全米のアカペラ大会を勝ち上がっていった女性グループ「ベラズ」が、本作では世界大会に出場。大学卒業を控えた彼女たちが将来への不安や期待を歌に込める姿にも注目。日本では2015年内での公開を予定。
『ピッチ・パーフェクト2/Pitch Perfct2』
全米公開2015年5月15日/日本公開2015年予定/アメリカ映画/115分
監督:エリザベス・バンクス
脚本:ケイ・キャノン
出演:アナ・ケンドリック、レベル・ウィルソン、ヘイリー・スタインフェルド、ブリタニー・スノー他
あらすじ
バーデン大学に所属する女性アカペラグループ「ベラズ」は着実に実力と知名度をあげて、とうとうケネディセンターに招かれアメリカ大統領の前で歌声を披露するまでになっていた。しかしその大一番で、太っちょエイミー/Fat Amy(レベル・ウィルソン)がパフォーマンスを失敗し、大統領の前で、そしてカメラの前で未処理の下半身を晒すこととなってしまう。
この失態によって彼女たちのツアーが中止となってしまい、その名声は地に落ちてしまう。
それでも何とか名誉回復を目指す彼女たちはこれまでどのアメリカ人グループも成し得ていない世界大会での優勝を目指して再び結集する。そこに最大のライバルであるドイツからの刺客たちも現れ、しかも卒業を控えたベカや他のメンバーは将来についても考えなければらない。
学生最後の「ベラズ」の戦いがはじまるのだった。
レビュー
女性の、女性による、女性のための『バトルシップ』映画:
全米で公開されるやいなや、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』や同日公開だった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を蹴散らし、初登場1位を獲得した本作『ピッチ・パーフェクト2』。日本では2012年公開の前作がやっと2015年5月に公開されるということで話題にもなっていないが、実は前作は興行成績でもヒットを記録したのに加えてDVDが劇場興行の倍に匹敵するほどのセールスを記録するなど、特に女性の観客を大いに魅了した作品だった。
女子大生のアカペラグループの奮闘を描いた本作は、コメディアンヌとして引っ張りだこの太め女子エイミー(レベル・ウィルソン)のかなり下品な下ネタで幕をあける。その後は、この手の青春コメディのジャンルではお馴染みの、山あり谷ありを友情とガッツとユーモアで乗り越え、強敵ひしめく世界大会へ向けて走り抜ける、というものだ。もちろんその間には恋愛があり、将来の不安はあり、合宿があり、最強のライバルも登場する。こういった「踏み台」を彼女たちがしっかりと登っていくのを楽しむ映画だ。そして加えて、迫力満点のアカペラのパフォーマンスも披露される。
ということで、前述したのはあくまで続編の『ピッチ・パーフェクト2』の簡単な説明だが、実はそれは前作にも転用できる要訳となっている。つまりストーリー上は前作とほとんど変わりない。もちろんマイナーチェンジはある。前作にあった男性視点でのプロットはごっそり削られ、新たなメンバーとして『トゥルー・グリッド』のヘイリー・スタインフェルドが参加。しかし物語そのものには大きな変更点はなく、だからこそ容易に先の出来事が想像できてしまう。特に日本の場合は、前作と本作が続けざまに公開されるだけに、その共通点はさらに目立つだろう。
ストーリー上での変化が作れなかったために、本作ではギャグが多用されるようになり、その分レベル・ウィルソンの登場場面やコメディ担当のサブキャラたちの登場場面が多くなる。前半部分に関しては結構笑えたのだが、さすがに後半になるとギャグもきつくなり、強引なキャラ設定が前面に押し出されることになる。特にハリウッドの悪癖としての国籍や人種のイメージ化はかなりひどい。こうなるとほとんど笑いの強要状態だった。そしてとにかく「ベタ」だった。
はっきりと好みを伝えれば、評価のしようがない作品だ。ハリウッドの「ヒット作には続編を」という悪しき傾向を見るようであり、製作陣にも続編に新しい局面を作ろうとする熱意はそもそもなく、前作のヒットの要因を集中させ、同時にアップデートだけすればいいという魂胆があったのだろう。事実そうすればヒットは確約されている。
しかしだからと言って本作の意義を否定するようなことはしたくない。
こんな類型的な本作でも、ほとんど女性だった観客はみんな手を叩き歓声をあげながら本作に夢中になっていた。そしてラストの驚愕の禁じ手を見るに、なるほどこれは女性版『バトルシップ』なんだなとひとりごちした。『バトルシップ』もはっきり言って「ナニ」な作品だが、その派手さと、国境を越えたバディ感と、強引な力技と、そして継承される男気が炸裂した結果、体育会と文科系の垣根を取っ払い、男どもを笑顔にさせた。男がエイリアンと闘って勝ちたいと願う一方で、女性はきっとスポットライトを浴びて歌声を轟かせたいと思うのだ。
この映画に、展開が強引だとか、女性に都合良すぎるとか、そういう不満を抱いたのなら、きっとそれは女性たちがこれまで抱き続けてきた男性目線でのハリウッド大作映画への不満と同じなのだろう。ポール・フェイグ監督や、女性ヒーロー映画製作へと乗り出したマーベルやワーナーは、確実に女性をマーケットとして重要視し始めている。本作のヒットとは映画製作において無視され続けていた性差問題が是正されつつあることを意味しているのかもしれない。
『バトルシップ』同様に、本作もまた映画としてはアレだが、愛される一作となる可能性は十分に秘めていると思う。
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ということで『ピッチ・パーフェクト2』のレビューでした。前作とほとんど同じ内容ですが、アカペラパフォーマンスは確実にパワーアップしているし、下ネタも炸裂しています。特に最初のギャグはかなり過激です。いきなりち#ぽを丸出しにするようなもんです。でも8割女性客だった劇場では爆笑の連続でした。きっち僕らがジャド・アパトーの映画を見てワイワイしているのと同じ感覚なのかもしれないと思うと、映画の内容は結構どうでもよくなります。とにかくラストはルール違反のような気もするのですが、その辺もおおらかにいきましょう。日本公開は2015年中を予定しているようです。あと前作もそうだったけど、結構生々しい韓国いじりがありました。本シリーズの仕掛け人のエリザベス・バンクスはなにか恨みでもあるのでしょうか。まあ、とにかく女性は盛り上がること間違いなのでしょう(僕は男なんでわかりませんが)。
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