ブラジルの高級リゾート地を舞台に、お騒がせな男女が繰り広げるバカサバイバル・モキュメンタリー・コメディ『世界の果てまでヒャッハー!』のレビューです。過激な「ユーモア」が爆発する本国フランスで大ヒットしたシリーズ最新作。
『世界の果てまでヒャッハー!』
日本公開2016年11月19日/コメディ/93分
監督:ニコラス・ブナム、フィリップ・ラショー
脚本:ニコラス・ブナム、フィリップ・ラショー
出演:フィリップ・ラショー、クリスチャン・クラビエ、アリス・ダビッド、ジュリアン・アルッティ
レビュー
本作のオリジナルタイトルは『Babysitting2(ベビーシッティング2)』ということで、本当はフランスでスマッシュヒットを記録するシリーズ第二作目なのだが、邦題ではそのことを全く考慮していないことからも分かるように、シリーズだろうが、何作目だろうが、別にどうだっていいコメディだ。
それでもシリーズを特徴付ける要素かある。それは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド』同様の「ファウンドフッテージもの」であるということ。映画の流行りから見れば、もう10年も前のトレンドなのだが、本シリーズはYouTubeなどに見られる一般人の投稿映像という「てい」で進められるいわゆるモキュメンタリーで、ホラーやサスペンスとの相性がいいフォーマットに『ハングオーバー!』的な馬鹿騒ぎをねじ込んだような作品になっている。
物語はいたってシンプルだ。
コメディアンとして多方面で活躍するフランクは、悪友や恋人たちとバカンスを過ごすためにブラジルにやってきた。そこには彼女の父親や祖母も住んでいて挨拶も兼ねたものだったが、フランクの本当の目的とは恋人ソニアにプロポーズすることにあった。
しかし実際にブラジルに着いてみれば、フランクとソニアの関係はギクシャク。ソニアと別行動となったフランクたちはセスナで小旅行に出かけるのだが、彼らの姿はジャングルの奥深くに忽然と消えてしまう。そして残されたのは彼らの旅を記録していた小型カメラ。フランクたちの身に降りかかった全災難がそのカメラに収められていた。
男3人に、旅先で出会い主人公のプロポーズ大作戦を邪魔する格好になった美女2人、そこに主人公の恋人の祖母を加えたメンバーがブラジルのジャングルで遭遇するトラブルを描いている。
劇中で登場人物が持っているアクション・カメラによる視点から描かれるファウンド・フッテージもので、スピーディな展開と小回りの効いた映像が本作の魅力となっている。そしてフランス製コメディということで、ハリウッドとは一味違った毒のあるユーモアと馬鹿騒ぎがひたすら展開されることになる。
でも基本的には『ハングオーバー!』のフォロワー作品のひとつという大雑把なまとめで完結することになる。
本作における笑いの「パンチライン」とは、ほとんどが主人公らによる珍道中で出会う「見知らぬ誰か(もしくは何か)」によってもたらされる。それは高齢で電動車椅子によりつつも毒舌が冴えるお婆さんや、なぜか旅のお供に選ばれたナマケモノ、そしてジャングルの奥地で出会う半裸の原住民。それは『ハングオーバー!』シリーズで言うところの変人アランであり、ケン・チョウ演じるチャウであり、タイの仏僧であり、猿であり、そしてマイク・タイソンと同じだ。
性格も目的もぜんぜん違う連中だが、生き残るために呉越同舟するロードームービー。そして主人公にとっては失いつつあったフィアンセの信頼を取り戻すための試練にもなっている。
特に主人公のフィアンセのお婆さんが最高だった。足だけでなく口も悪いババアなのだが、非常事態時にはノリノリでスカイダイビングしたり、激流に思いっきり飲み込まれたり、電動車椅子ですでに走り出しているセスナに追いついたりと、やりたい放題。
ほとんど隙間なく敷き詰められたジョークに関しては、「アラブ系=テロリスト」や「原住民の特殊な風習」や「ゲイネタ」なども多くあり、こういった笑いに関しては好き嫌いが分かれるだろう。それでも同系統の『ハングオーバー!』やサシャ・バロン・コーエン作品などと比べると、毒も悪ノリも抑え目になっている。
はっきりと言ってしまえばどうってことのないコメディなのだが、ハリウッド作品とはやはり違う風味もあり、ミニシアター系の小洒落たドラマ映画ではない、もっとカジュアルで「どうでもいい」ヨーロッパ映画を体験するのはちょうどいい作品だとも思う。でもハリウッドの真似事みたいなヨーロッパ映画であることには変わりないが、、、
『世界の果てまでヒャッハー!』:
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