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映画『バッドガイズ!!』レビュー:警官と悪党、悪いのはどっちだ?

War on everyone michale pena alexander skarsgard

『ターザン:REBORN』のアレクサンダー・スカルスガルドと『アントマン』のマイケル・ペーニャが悪徳警官コンビを演じたクライムコメディ『バッドガイズ!!』のレビューです。警察バッチを武器にやりたい放題の二人の前に街の悪党が現れる。警官 vs 悪党ども、手に負えないのはどっちだ!?

『バッドガイズ!!』

全米公開2016年10月7日/日本公開2017年2月21日/クライムコメディ/98分

監督:ジョン・マイケル・マクドナー

脚本:ジョン・マイケル・マクドナー

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、マイケル・ペーニャ、テッサ・トンプソン、ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ、デヴィッド・ウィルモット

『バッドガイズ!!』レビュー

『ターザン:REBORN』では育ちは野生でも生まれは高貴な貴族の主人公を演じたアレクサンダー・スカルスガルドと、『アントマン』などお気楽な脇役として存在感を発揮するマイケル・ペーニャがどうしようもない警官コンビを演じる『バッドガイズ!!』を観て痛感したのは、やはり警官は悪かったということだ。

日本でもドラマなどでは中卒の検察官が主人公になったり、超人的な推理力を持った刑事のバディものが人気だが、基本的に彼らは一般市民のために働く「公僕」として描かれる。結果としての登場人物の誰かが悪事に手を染めたとしても、それは正義感のこじれが原因で、いずれにせよ正義感があって当たり前、人助けをして当たり前の世界が前提として共有されている。

でもそればかりっておかしくない?

警官だって人を殺したり、麻薬取締官が調書を偽造して麻薬犯を見逃したりと不祥事には事欠かない。別に警察を悪の巣窟とは思わないが、政治家とかジャーナリストとかトラック運転手とかユーチューバーなんかと同じように悪い(イかれた)奴だっていて当たり前。そんなイカレポンチが実社会の印籠とも言える警察バッジを持ってその辺をウロチョロしていると思うと我々無力な一般市民はうかうか昼寝もしていられない。

そして『バッドガイズ!!』はまさに確率的にはどこかに存在しているだろうけど、一生お会いしたくない警察官コンビによる悪さ比べ映画だった。

悪党 vs 警官による悪さ比べコンテスト

テリー(アレクサンダー・スカルスガルド)とボブ(マイケル・ペーニャ)の警官コンビは警察官であることをいいことにやりたい放題。ドラッグディーラーを車で追いかけ回し、そのドラッグはしっかりとくすねるなど朝飯前。警察バッジを武器に悪さし放題で、二人はニューメキシコの豪勢な家に暮らすほどに私腹を肥やしている。

ある日、二人は街の小悪党が大金を強奪する計画を練っていることを知り、その事件を捜査するふりをしながら大金ものとも奪い去ろうとする計画を立てていた。しかし結局はその大金は他の小悪党に持ち逃げされた挙句、街を牛耳る大物悪党まで関わっていることが判明。それでも二人は諦めない。悪党ごときに尻尾を巻いて逃げ出すなんて、警察官の風上にも置けない。悪いのは俺たちだ、とばかりに確固たる信念で大金を頂戴しようと暗躍する。

ストーリーはシンプルだが、ここまで悪い警察官もなかなかいない。最近ではニコラス・ケイジとイライジャ・ウッドが共演した『ダーティ・コップ』なんて作品もあったが、あっちが知能悪とするなら、『バッドガイズ!!』の二人はフィジカルに悪い。飲酒運転での追突や殴る蹴るは当たり前で、銃撃戦になれば容赦なく一般人を盾にする。デブの物陰に隠れて悪事を働く警官とか最悪なのだ。

もう、本当にひどいんです。

悪党が主人公となるいわゆる「ピカレスク」ものとも全然違って、そこに社会批判や、毒が毒を制するという悪としての意義のようなものは描かれず、主人公二人は、少なくとも警察官という肩書きが影響する範囲で、一貫して悪い。とにかく悪い。全部悪い。

アレクサンダー・スカルスガルドが巨躯を生かして小悪党をタコ殴りにして、マイケル・ペーニャはコカインをたらふく吸い込みながら「ファック、ファック、ファック」と毒吐きまくる。これだけでもずっと見ていられるのだが、二人の特異なキャラクターと性格、そしてなぜか強固な友情関係が巧みに演出されていて、ただの悪さのように見えてそこには彼らなりのルールや美学のようなものが介在していることをうかがい知れる。

特にグレン・キャンベルを愛聴し、『青い珊瑚礁』が好きという設定のテリー(アレクサンダー・スカルスガルド)は、度を越した悪漢でありながらも非常に狭い対象にだけは常識はずれの優しさも発揮するという不安定なキャラクターがしっかりと作り上げられていた。そして彼の孤独感や焦燥感を表現する手段として本作の映像は非常に美しい。

ニューメキシコという原色が映える場所を舞台にしていることもあるが、特にテリーが関与するシーンでは隅々まで計算されたカラースキームが適用されており、その色調を通してもストーリーでは描かれないテリーの心象がうまく演出されている。

そして音楽の使い方もいい。ひたすら悪事を働く警察官が主人公の作品では、トーンの作り方を間違えれば観客は不安や不快感を覚えるだけに終始する危険性もあるが、本作はそういった生理反応が呑気なカントリー・ミュージックや、爽快なエンディングによって上手く回避されている。

悪党警官も悪党なり背負っているものがあって、倫理的には許されなくても美学を持って悪事を働く。本作は歪ながらもこの社会のどこかにいてもおかしくはない存在を、大げさかつ壮大なスケールで描いた作品だった。銃撃シーンのヌルさや、大物悪党がどう見ても小物しか見えないなど問題もあるが、ここまで「悪い警察官」という設定を最後まで徹底させたことは評価したい。

そして日本を弄るプロットや、過激な三島由紀夫なシーンもあるが、主演の二人の乾いたパーソナリティのおかげで後味は悪くない。

「いい警察官」に飽き飽きしている人にはお勧めできるが、やっぱり警察官はいい人であってほしいものです。

『バッドガイズ!!』:

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Bad guys

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